『陽気なギャングは3つ数えろ』伊坂幸太郎
このシリーズにもはや劇的なものは求めてない。
『陽気なギャングは3つ数えろ』伊坂幸太郎
陽気なギャング一味の天才スリ久遠は、消えたアイドル宝島沙耶を追う火尻を、暴漢から救う。だが彼は、事件被害者のプライバシーをもネタにするハイエナ記者だった。正体に気づかれたギャングたちの身辺で、当たり屋、痴漢冤罪などのトラブルが頻発。蛇蝎のごとき強敵の不気味な連続攻撃で、人間嘘発見器成瀬ら面々は断崖に追いつめられた! 必死に火尻の急所を探る四人組に、やがて絶体絶命のカウントダウンが! 人気シリーズ、九年ぶりの最新作! (Amazonより)
新鮮味は三作目となるとやはり薄れてくるんだけど、相変わらずのテンポの良い会話劇は健在。人間味あるのかないのかよくわからない四人の、ビジネスライクでもないし絶妙な関係性がクセになる。
読み終わってから気づいたんだけど、今回成瀬の子供の暗示がなかったな。
悪役が胸糞悪さの塊でラスト清々する。
第二作目の時も書いたけど、このシリーズは長編より短編集の方が面白さがわかりやすい。
でもさらなる面白さとかは求めてないから、「こいつら今はどんな感じかな?」って知り合いの近況確認する感じで、ずっとシリーズを読んでいたい。
『イノセント・デイズ』早見和真
仕事と欅坂を理由に読書スピード落ちてた。
『イノセント・デイズ』早見和真
田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は…筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。日本推理作家協会賞受賞。(Amazonより)
本屋で平積み展開されてて作者知らなかったけど購入。
読み始め20ページで「あっ、これ絶対面白いやつだ」と確信。
読み応えめちゃくちゃあって、どんどん文章が頭に入ってくる感じ。
構成も好きで、判決文をひとつひとつ反論というか覆すようなエピソードが並んでる。前半だけでも十分面白くてそれで完結しててもあんまり文句ない。
基本的に主人公主観にならないんだけど、各登場人物に関しても、主観と他の登場人物からの客観にズレがあるところが、物語の主題にも近いような感じで印象的だった。
こういう話だと、最後に改心したり、何かを悟ったりする系が多いイメージだけど、最後まで主人公が自分を貫き通すのが魅力的だし悲しい。一回読んだだけだと、細部まで感情を理解しきれない物足りなさというか満足しきれない読後感も後を引いて良い。
唯一の理解者が真実に辿り着いた日付を見て、冒頭読み返した時の絶望感。
久しぶりに初めて読む作者でのめり込んだ。オススメです。
『いのちの車窓から』星野源
今初めてレベルで曲聞いてるけどめっちゃ声良い。
『いのちの車窓から』星野源
星野源の魅力、そのすべてがわかる、誠意あふれるエッセイ集。ドラマ「逃げ恥」「真田丸」、大ヒット曲「恋」「SUN」、「紅白」出演。怒濤の毎日を送るなかで、著者が丁寧に描写してきたのは、周囲の人々、日常の景色、ある日のできごと…。その一編一編に鏡のように映し出されるのは、星野源の哲学、そして真意。
職場の先輩に借りて。
今まで星野源について、『恋』と『地獄でなぜ悪い』と『コウノドリ』ぐらいしか知らなかったけど文章良かった。めっちゃ良かったというよりは普通に良かった。エピソードは興味深いんだけど、自然体というか書くっていうことや伝えることに誠実だからこそ、引っかかりなくスッと入ってくるのかと。(性格はいい意味でめっちゃふざけているんだろうけど)
曲に関してももちろんだとは思うけど、バックグランドやルーツがしっかりあるからポップなもの作れるのかなとも。『YELLOW DANCER』というアルバム名に込められた意味がめっちゃ良かった。
大スターというよりも、自然体な生活を送っているからこそ書ける文章かなと。他のエッセイも読んでみたいし、あと挿しイラストがすごく良い。ノスタルジックな感じがする。
『東京ホタル』原田マハほか
このタイトルは、SOFFetを思い出す。
『東京ホタル』中村航/小路幸也/穂高明/小松エメル/原田マハ
川が青く光る夜、ぼくらは奇跡を願う。学生時代の恋人と再会した夜に、音信不通だった母と出会った日に、それぞれの想いが響き合う、5つのやさしい物語。人気作家5名が、東京の新たな原風景を描く、珠玉の作品集。(Amazonより)
軽そうだし、好きな作者も入ってるし、読書速度加速させようかなと思って読んだら、予想以上に良かった。
特に小松エメルを初めて読んだけど、わずか60Pの中に濃い展開が凝縮されてて面白かった。設定も読んでそうで読んでなかった種類でのめり込めた。この人も色々読んでみようかな。
原田マハに関しては、さすがというような展開で、テーマである「いのり星」のがなかなか出てこないなと思ってたら、最後のわずかなシーンなんだけど、一番効果的に感情的に使われてて、めちゃくちゃ上手だなと。
軽い気持ちでサクッと読みたい時にオススメです。
『サブマリン』伊坂幸太郎
伊坂幸太郎でも特に好きな作品の続編。
『サブマリン』伊坂幸太郎
『チルドレン』から、12年。家裁調査官・陣内と武藤が出会う、新たな「少年」たちと、罪と罰の物語。(Amazonより)
『チルドレン』が好きで、かなり期待値高めで読み始めた。こっちは長編だから単純に比べられないんだけど、読んでて楽しさが連発するのは、短編が集まってた前作の方かなと。ただ、決してつまらないわけではなく、考えること、「許すべきなのか許されざるべきなのか」、「罪は償えたことになるのか」とか色々葛藤している登場人物と同じ感情になれるからだと。
相変わらず永瀬のキャラクターが良いし、作者特有の「認めたくないけど愛すべき尊敬すべき人」である陣内の魅力が詰まってます。
ストーリーとしては本流ではないけど、「何をもってして平等なのか」というところも痛快。
割とずっと暗い雰囲気を帯びながら進んできた後のクライマックスが、少しだけでも救われる感じがして良かったし、最後の陣内が若林に向けていうセリフがカッコよすぎる。
これもずっとシリーズにして読んでいたい物語。
『螺旋の手術室』知念実希人
乃木坂と欅坂の動画見まくってて今月は読書スピード遅い。
(画像ちっちゃ)
『螺旋の手術室』知念実希人
純正会医科大学附属病院の教授選の候補だった冴木真也准教授が、手術中に不可解な死を遂げた。彼と教授の座を争っていた医師もまた、暴漢に襲われ殺害される。二つの死の繋がりとは。大学を探っていた探偵が遺した謎の言葉の意味は。父・真也の死に疑問を感じた裕也は、同じ医師として調査を始めるが…。「完全犯罪」に潜む医師の苦悩を描く、慟哭の医療ミステリー。
メッチャ長いわけではないんだけどかなり読み応えある。
現役医師だけあって、病気への知識・院内関係のリアリティが深い。しかもただの知識だけではなく、病気の扱われ方や差別のされ方など他の作品ではあまり書ききれないところまで表されてる。
全体を通して起伏が多くて、読んでて飽きないし先が読めないんだけど、クライマックスの衝撃は凄い。ハンチントン病って初めて知ったし、タイトルの意味がそこでやっと知れた。
あと凄いなーと思ったのが、ラストの謎解き部分で「あれ?これって辻褄あんまり合わなくない?」と思い始めるところに全部腑に落ちる説明があって、納得できない部分がない。
そして最後のけじめの取り方が悲しくて重い。でも最後の最期に救われる。
脇役も個性的で、妹の婚約者の母も胸糞悪さ満点だし、研修医がちょいちょい出てくるからこいつが黒幕なんじゃないかと誤誘導される。
作者特有のハラハラする展開だけじゃなく、一つの物語としてかなり完成度高いです。
『ピエロがいる街』横関大
マイマスター。
『ピエロがいる街』横関大
比南子はスローガン「会いに行ける市長」を掲げる宍戸市長の秘書だ。しかし兜市は財政難で、市民の小さな願いごとを叶える余裕はない。そんな兜市では、夜になると市民の悩みを解決するピエロが現れる。大学生の稜が「就職、したいです」とピエロに相談すると、稜はピエロの助手に採用された。迷子の犬捜しから、台風、汚職、財政難まで、次々と襲いくる危機に市長とピエロは立ち向かう!
俺の大好きだった横関大はどこに行ってしまったのか。
ラスト20ページくらいまではそう思ってて、読みながら悲しくなってた。
つまらなくはないけど作者特有のワクワク感あまりないし、多分最後こんな展開なんだろうなと勝手に冷め始めてた。
それが。ラストのあるシーンで全てが覆された。『スマイルメーカー』と同じ騙され方した。騙されたというか勝手に錯覚してた。もう一回読んだら、印象全く違うと思う。やっぱり横関大すごい。
そのシーンを読んでから、だからあの人は越えたいと思ってたのか、あの登場人物は出てきたのか、とか色々ガッテンし始めた。
不思議な感覚になるのは、語り部はいるけど、一人が主役になるのではなく、お互いに欠点というか足りないところを補っている感じが新鮮だった。あの人はピエロが誰だったのか知らなかったのかな。
途中でストーリー予想できた気にさせてからのサプライズ、本当に楽しかった。寂れた地元に住む身として共感できる部分が色々ある。