『芸人交換日記〜イエローハーツの物語〜』鈴木おさむ

どこかでナメてましたホントすいませんでした。

 

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『芸人交換日記〜イエローハーツの物語〜』鈴木おさむ

結成11年目、いまだ鳴かず飛ばずのお笑いコンビ“イエローハーツ"。これまでコンビの今後について真剣に話し合うことを避けてきたふたりも、気がつけば30歳。お笑いに懸ける思いは本気。でももう後がない。何とかして変わりたい。そう思ったふたりは「交換日記」を始めることにした。お互いの本音をぶつけ合うために――。交換日記形式で織りなされる、おかしくも切ない「絆」の物語。(Amazonより)

 

夢を追ってる人も追ってた人も追おうとしてた人も全員に読んでほしい物語。

最初は固定観念で、放送作家が書いたお涙頂戴的なやつかと思ってたら、解説にもあるように描写やエピソードにリアリティがあって、知らない舞台裏を覗いてる感じでどんどんハマっていく。

あと日記形式ってことと、漫才の台本読んでるような感覚になるため、ページがサクサク進んで一気読みできる。

盛り上がるところはしっかりテンション上がるしラストにかけてはがっつり感動する。スパッとカッコよく終わることができないそれぞれの人間臭さも日記という「書き足せる」表現方法を通して表されていてすごくいい。

「夢を諦めることができる才能」って、ホントに夢に勝負した人にしか言い切ることができない特権だよなって感じた。

オードリー若林の解説含めかなり心に残る作品で、これもずっと本棚に置く。

 

さいごの日の日記がカッコよすぎ。

 

芸人交換日記~イエローハーツの物語~
 

 

『決定版 一億総ツッコミ時代』マキタスポーツ

こんなに自分に当てはまりすぎて耳(目)が痛くなったの初めて。

 

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『決定版 一億総ツッコミ時代マキタスポーツ

自分ではなにもしないけれど、他人や世間の出来事には上から目線で批評批難。一般人がプチ評論家、プチマスコミと化している。身近な他人を見下したり、政治家やマスコミにツッコんで、鬱憤を晴らしても、生きづらさ、息苦しさは解消できない。ではどうする?ユニークで実践的な生き方を指南。(Amazonより)

 

ツッコミっぽいことを言っただけで何かやった気になってる。まさに自分のことだ。子供の頃からのコンプレックスを作者に丁寧に丸裸にされているような感覚。作品全体を通して自分を改めて客観視できたし、今後の日々の過ごし方の指針や参考になるようなことが多かったけど、なんか本当に恥ずかしかった。帯や解説でも書かれているけど、他人に対する分析力や分類する能力が飛び抜けている。

「コンプレックスをひた隠しにするのではなく、あえて受け入れる。」

「ツッコミから自分を守るのではなく、ツッコミを受ける側に立つ。」

「自分を隠して他者にツッコミを入れるのではなく、それを自分に向けてみる。」

「誰にでもある『致し方のないこと・しょうもないこと』を認めてしまう」

心にグサグサ刺さりすぎたので抜けないように日々意識しよう。

 

あと偶然にも先週の『グータンヌーボ2』で優香が話していた「自分から人見知りと言わない」と同じようなことが書かれていて、改めて人付き合いで大事なことだなって感じた。

 

 

 

 

一億総ツッコミ時代 (星海社新書)

一億総ツッコミ時代 (星海社新書)

 

 

 

 

 

『ぼくは勉強ができない』山田詠美

一生本棚に置いとく作品。

 

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『ぼくは勉強ができない』山田詠美

ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ―。17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪いのだ。この窮屈さはいったい何なんだ!凛々しい秀美が活躍する元気溌刺な高校生小説。(Amazonより)

 

今年はこれ以上の作品に出会えるか疑問なくらいに面白かった。

30代目前の今だからこそガンガン響いたとも思うし、高校時代に読んでこんな人たちに憧れたかった気もするし、もっと年取ってから媚びないまっすぐさに眩しくなりつつも読んでみたい気もする。

「あれ、これつまらないわけがない。」と確信させてくれる冒頭で、20年以上前に書かれた高校生の物語とは思えないくらいに今の自分にも当てはまったり、変えてみようと思わせてくれたり、見て見ぬ振りしていたダサいところに光当ててくれたり、とにかく折り目つけるページの数が多かった。

高校生が主人公であっても、あくまでひとりの人間として何を大事にして生きるかっていうことを全ての章で教えてくれて、こういう人たちを「カッコイイ」っていうんだろうなって思う。

心に残ることが多すぎて紹介しきれないけど、自分の価値観だけで否定せずに色んな考えを想像すること、多勢に無闇に迎合せずに拠り所を貫くこと、矛盾してるかもしれないけどそういうことが大事だよなって改めて考えさせてくれる。

何度読んでも新たな発見や感じ方ができる気しかしないので常に一生近くに置いておきます。

 

 

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

 

 

『ホワイトラビット』伊坂幸太郎

久しぶりの伊坂幸太郎。やっぱり楽しいな。

 

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『ホワイトラビット』伊坂幸太郎

楽しさを追求したら、こういう小説になりました。最新書き下ろし長編は、予測不能の籠城ミステリーです! 仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく――。「白兎事件」の全貌を知ることができるのはあなただけ! 伊坂作品初心者から上級者まで没頭度MAX! あの泥棒も登場します。(Amazonより)

 

難しいこと考えずに読める感じが楽で良かった。と言ってもバタフライエフェクトではないけど様々な要素がドミノみたく関連づいてるので、時間・空間軸を整理する読み応えはあった。あと途中から何度も騙されてテンション上がる。

お馴染みのキャラも出てきて、伊坂ワールドを十分に楽しめるんだけど、その中でも「罪と罰」ではないけど何をもってして正しい・悪いと捉えるのかみたいな投げかけはある気がする。

あと『レミゼラブル』からの引用や、そこと星の大きさと合わさって増幅される「人間の一生」に関するメッセージが心に残る。「はい、生まれました。はい、いろいろありました。はい、死にました。」

 

レミゼラブル読んでみようかな。

 

 

ホワイトラビット

ホワイトラビット

 

 

『スイート・マイホーム』神津凛子

最悪で最高。

 

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『スイート・マイホーム』神津凛子

長野の冬は長く厳しい。スポーツインストラクターの賢二は、寒がりの妻のため、たった1台のエアコンで家中を暖められる「まほうの家」を購入する。ところが、その家に引っ越した直後から奇妙な現象が起こり始める。我が家を凝視したまま動かない友人の子ども。赤ん坊の瞳に映るおそろしい影。地下室で何かに捕まり泣き叫ぶ娘―。想像を絶する恐怖の連鎖は、賢二の不倫相手など屋外へと波及していき、ついに関係者の一人が怪死を遂げる。ひたひたと迫り来る悪夢が、賢二たち家族の心を蝕んでいく…。第13回小説現代長編新人賞受賞作。(Amazonより)

 

帯の名だたる作家たちからのおぞましさの賞賛でだいぶハードル上がったけど、かなり楽しませてもらった。

地元もそうだけどやっぱり豪雪地帯とか寒冷地って冬は常に曇っているような陰鬱とした印象があって、この物語も常にそんな雰囲気を纏いながら進んでいく。ストーリー自体は読み易いんだけど、ページが進むにつれて不安や焦燥感が増していって、最後の盛り上がりへの期待が高まっていく。

あとホラー的な要素ばかりかと思ってたら、精神疾患に関する考え方など別な意味で心に残るところもあった。「完治がゴールなのではなくて、寛解状態で満足して周囲との調和を図っていく」っていうとこ。

第2章・第3章の盛込み方半端なくて色んな事実がわかって若干消化しきれなくなりそうになるけど、兄や甘利の真の姿に感銘を受けるしこの物語自体が「誰からの視点でモノゴト・ヒトを見るか」っていうところで良い具合に錯覚を起こしてくれる。第2章の最後は切なかったなー。

そして予想以上を打ち込まれた最後。そこまで求めてないよと顔しかめたくなるくらいで後味最悪で最高でした。

 

今年ベストに入るであろうホラーエンターテイメント。

昨日の深夜に読み終えたけど、いつもより照明多めにつけたし物音にビビってしまった。

 

スイート・マイホーム

スイート・マイホーム

 

 

 

『今はちょっと、ついてないだけ。』伊吹有喜

早くも今年ベストに入りそう。

 

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『今はちょっと、ついてないだけ』伊吹有喜

人生に、敗者復活戦はあるのだろうか。
かつて自然写真家として人気を博し、ある時、全てを失った男。
失意の中、彼が一枚の写真を撮影したことで、蘇る想い。
「見たことがない景色を見たい」
一度は人生に敗れた男女が再び歩み出す姿が胸を打つ、感動の物語。(Amazonより)

 

最近目にした意見で、”本には読むタイミングがある”ってのがあって、まさにそれ。この本は今の自分がちょうど読むべき本だった。

希望だけではない、100%の晴れやかな気持ちになるわけではないけど、弱くてもかすかでも少しの光明と一緒に歩く仲間がいれば、とりあえず幸せなんだなって思わせてくれる。

再チャレンジやシェアハウスなど自分の実体験と被る部分もあり、共感と憧れの気持ちが出たし、これからの30〜40代に対して不安もあるけどもっと楽しくなると期待させてくれる。

特に最終章のこの文が心に残る。

「どこへ行くのだろう。行き先はわからないけれど、今、ここにいる。そして願えばきっと、どこにでも行ける。」

あと本全体を通してリフレインされるタイトルに込められた力がものすごい。

 

この本を読んで実感したけど、年取れば取るだけ嫌でも失敗・成功どちらも経験が増えるから、物語を読んだ時の染み込み方がどんどん良くなってきてる気がして、そこも死ぬまで楽しみたい。

 

 

今はちょっと、ついてないだけ (光文社文庫)

今はちょっと、ついてないだけ (光文社文庫)

 

 

 

『この世にたやすい仕事はない』津村記久子

この人芥川賞作家なのか。

 

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『この世にたやすい仕事はない』津村記久子

「一日コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますかね?」ストレスに耐えかね前職を去った私のふざけた質問に、職安の相談員は、ありますとメガネをキラリと光らせる。隠しカメラを使った小説家の監視、巡回バスのニッチなアナウンス原稿づくり、そして ……。社会という宇宙で心震わすマニアックな仕事を巡りつつ自分の居場所を探す、共感と感動のお仕事小説。芸術選奨新人賞受賞。

 

ブクログで気になって購入。

どちらかというと、仕事人としてのアドバイス的なモノが随所に盛り込まれてる感じなのかと思ったら、奇妙な世界観(職場観)が癖になるシュールな物語だった。

個人的には共感とか投影はほとんどしなかったけどラストの話は残るモノがあった。結局どんな仕事も大変だし貴賎はないし全力を注ぐだけってこと。

帯に書いてあった伊坂幸太郎の「現代版ガリバー旅行記」ってコメントがマジで偽りなし。

次の出勤のモチベーションが多少は上がると思う。

 

 

この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)

この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)