『東京ロンダリング』原田ひ香

別に原作ではなかったけど面白かった。

 

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『東京ロンダリング』原田ひ香

変死などの起こった物件に一ヶ月だけ住み、また次に移るという奇妙な仕事をするりさ子。心に傷を持ち身一つで東京を転々とする彼女は、人の温かさに触れて少しずつ変わっていく。(Amazonより)

 

ルームロンダリング』という映画とドラマが面白くて、そういえば原作みたいなあらすじの作品あったなと思い。でもテーマ?が同じだけでそうじゃなかった。

物件のロンダリングっていう手法どうこうじゃなくて、ひとりの大人が東京で生きていくひとつの生き方というか、弾けた後にどうやって平穏を取り戻すかというところをロンダリングや交感神経のエピソードを交えながら楽しく読ませてもらった。

できればもっと色んなロンダリングのエピソードも読みたかったなー。と思ったら続編あるのか読んでみよう。

 

 

東京ロンダリング (集英社文庫)

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失踪.Com 東京ロンダリング

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ドラマ ルームロンダリング ディレクターズカット版 DVD-BOX
 
ルームロンダリング [DVD]

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『ミッドナイト・バス』伊吹有喜

この人の作品を30歳前後で読み始めて本当によかった。

 

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ミッドナイト・バス伊吹有喜

東京での過酷な仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている利一。
ある夜、彼が運転するバスに乗ってきたのは、十六年前に別れた妻だった――。

父親と同じく、東京での仕事を辞めて実家に戻ってきた長男の怜司。
実現しそうな夢と、結婚の間で揺れる長女の彩菜。
そして、再婚した夫の浮気と身体の不調に悩む元妻、美雪。

突然の離婚で一度ばらばらになった家族は、
今、それぞれが問題を抱えて故郷に集まってくる。
全員がもう一度前に進むために、利一はどうすればいいのか。

家族の再生と再出発をおだやかな筆致で描く、伊吹有喜の新たな代表作!(Amazonより)

 

この作者の話は人生数回失敗味わった中年くらいから読み始めた方が面白いと個人的に思う。

この物語も特に劇的なことはないんだけど、バスが何度も新潟と東京を往復するように、時間をかけて徐々に少しずつ家族が修復して新たな形に変容していく様子をじっくり味わう楽しさがある。

そして間接的に関わるいろんな境遇の搭乗者のサブエピソードも、新幹線ではなく長距離バスを使うそれぞれの理由含め良い。

高速バスヘビーユーザーだが深夜便は普通より長いから使ってなかったけど、朝になって起きたら別世界っていいもんだな。

今作も読み終わった後にまだまだここから頑張んなきゃなと思わせてもらった。

 

 

ミッドナイト・バス

ミッドナイト・バス

 
ミッドナイト・バス (文春文庫)

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『昨夜のカレー、明日のパン』木皿泉

不思議な読み心地だ。

 

 

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『昨夜のカレー、明日のパン』木皿泉

7年前、25歳で死んでしまった一樹。遺された嫁・テツコと今も一緒に暮らす一樹の父・ギフが、テツコの恋人・岩井さんや一樹の幼馴染みなど、周囲の人物と関わりながらゆるゆるとその死を受け入れていく感動作。本屋大賞第二位&山本周五郎賞にもノミネートされた、人気夫婦脚本家による初の小説。(Amazonより)

 

各章を通じて徐々に徐々に、登場人物たちとともに周りのひとたちに対する理解を深め、それぞれが変わっていく勇気を見つける様を見届けているような気分になる。

こういうわかりやすい起伏があるわけでもなく、心情の些細な変化を楽しむような物語についてうまく表現できるようになりたい。。

そしてその些細な積み重ねと少しずつの成長を感じたからこそ、最終章の印象が大きくなる。

ギフが言った「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」と、

夕子が言った「動くことは生きること。生きることは動くこと」

そして一樹が鼓動に感じた「自分は、今、間違いなく生きている」という思いは全て繋がっているんだなと思った。

 

 

 

 

 

『レヴォリューションNo.3』金城一紀

高校生の時に読みたかった。。

 

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レヴォリューションNo.3』金城一紀

OK、とりあえずやってみますか。
オチコボレ男子高3年生の僕たち。
武器はMoney、Penis、頭脳、上腕二頭筋、そして努力――。(Amazonより)

 

『GO』は人生で一番大事な本だし、『フライ、ダディ、フライ』も好きだけどなぜか読んでなかったやつ。

文句なしの面白さ。高校生の時にこんな風にくだらないことに真剣に熱中したかったな。

またただ面白いだけではなくて、全編を通して「親友の死」という影を感じるから青春の刹那的な側面が色濃く出ている。作者の醍醐味でもある人種・国籍についての投げかけもさらっと含まれていて残りやすい。

そして「異教徒の踊り」のエピソードがメチャクチャいい。「何があっても、踊り続けるんだ」

 

 

レヴォリューション No.3 (角川文庫)

レヴォリューション No.3 (角川文庫)

 

 

『ココ・シャネルという生き方』山口路子

いつ買ってあったんだろう。

 

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『ココ・シャネルという生き方』山口路子

孤児院で育ち、自力で富と名声を手にした世界的ファッションデザイナー、ココ・シャネル。「働く女の先駆者」シャネルのゴージャスな恋愛、仕事への情熱を、「嫌悪の精神」に富んだ「シャネルの言葉」とともにコンパクトかつ濃密に描き出す。シャネルからのメッセージがつまった、熱くてスパイシーな一冊。(Amazonより)

 

ブランド自体も恥ずかしながらぼんやりとしか知らないし、人物も「プラダを着た悪魔」的なイメージしかなかったけど、この本を通してどういう気性なのか、何を信条としているのか、何を許せないのかをわかりやすく学ぶことができた。

実用性を重視していたってところが意外だったし、「醜さは許せるけど、だらしなさは絶対許さない」って言葉も彼女の高貴さを表していると思う。

男性デザイナーが表現する「女性らしさ」や「華美さ」に断固として反抗していたところが今まで持っていたステレオタイプなイメージを覆してくれて新鮮だった。

「欠点は魅力のひとつになるのに、みんな隠すことばかり考える。欠点をうまく使いこなせばいい。これさえうまくゆけば、なんだって可能になる。」

この言葉通りの信念を持ち続けたから革命を起こせたんだと思う。

ウェディングドレスでショーのラストを飾らなかった理由で、「仕事と結婚した彼女のウェディングドレスはシャネルスーツだったから」という作者の解釈が素敵だった。

 

 

新装版 ココ・シャネルという生き方 (中経の文庫)

新装版 ココ・シャネルという生き方 (中経の文庫)

 

 

 

 

『高円寺純情商店街』ねじめ正一

ルーツを学ぶ。

 

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高円寺純情商店街ねじめ正一

高円寺駅北口「純情商店街」。魚屋や呉服屋、金物店などが軒を並べる賑やかな通りである。正一少年は商店街の中でも「削りがつをと言えば江州屋」と評判をとる乾物屋の一人息子だった――感受性豊かな一人の少年の瞳に映った父や母、商店街に暮らす人々のあり様を丹念に描き「かつてあったかもしれない東京」の佇まいを浮かび上がらせたハートウォーミングな物語。直木賞受賞作。(Amazonより)

 

かつて住んでいた大好きな街。

高円寺っていうと夢追い人や社会不適合者(いい意味で)の街ってイメージだけど、これは高円寺の『家族』の物語。家族が住んでいるなんて当然のことなんだけど、意識から薄れる土地だと思う。

古き良き時代の所作が読んでいて心地いいし、変に格好がついていない高円寺の日常が新鮮で面白い。

この作品によって「純情商店街」って名前に変わったってすごい。

すらすら読みやすい文章だったので他の作品も読んでみようかな。

 

 

高円寺純情商店街 (新潮文庫)

高円寺純情商店街 (新潮文庫)

 

 

『みかづき』森絵都

これも今年ベスト入りそう。

 

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みかづき森絵都

昭和36年。放課後の用務員室で子供たちに勉強を教えていた大島吾郎は、ある少女の母・千明に見込まれ、学習塾を開くことに。この決断が、何代にもわたる大島家の波瀾万丈の人生の幕開けとなる。二人は結婚し、娘も誕生。戦後のベビーブームや高度経済成長の時流に乗り、急速に塾は成長していくが…。第14回本屋大賞で2位となり、中央公論文芸賞を受賞した心揺さぶる大河小説、ついに文庫化。(Amazonにより)

 

説明にも書いてあるし、ちょうどドラマ化もしてるけど、大河か朝ドラレベルでじっくり映像見たい作品。

600Pと最近読んだ中ではボリュームあったけど、そんなこと気にならないくらい、むしろ途中からもっと読みたくなるくらい、終わり来ないで欲しくなるくらい楽しめた。

名言や名シーンがあるというよりは、作品全体を通して戦後から現代に到るまで、学校社会とは違う現場で日本の教育に真剣に向き合ってきた人たちの世界が丁寧に描かれていて、どっぷり浸かることができる。

そして本当に大切な必要な教育とは何かということを、何度も何度も立ち返りながら反芻しながら考える機会を与えてくれる。少数の支配者と多数の最低限度の能力を持った駒を作る教育という考え方が、今の日本の状況と乖離していない気がして空恐ろしくなる。

激動の中を生き抜いてるけど、登場人物ひとりひとりは心優しく、こども・家族のことを真摯に想い抜いている姿も魅力的。

中高生から大人まで様々な時代の教育の現場の当事者としていろんな人が楽しめる作品だと思う。

ラスト前の一文を読んだ時、風呂場で歓声をあげてしまった。

 

 

みかづき (集英社文庫)

みかづき (集英社文庫)