『本を読んだら散歩に行こう』村井理子

不思議な温度感の作品だった。 『本を読んだら散歩に行こう』村井理子 実兄の突然死をめぐる『兄の終い』、認知症の義母を描く『全員悪人』、壊れてしまった実家の家族について触れた『家族』。大反響のエッセイを連発する、人気翻訳家の村井理子さん。認知…

『スクラッチ』歌代朔

久しぶりに読書して泣いた。 日本全国全ての中学校に置くべき傑作。 『スクラッチ』歌代朔 コロナ禍で「総体」が中止になったバレー部キャプテンの鈴音。美術部部長の千暁は出展する予定の「市郡展」も審査が中止。「平常心」と自分に言い聞かせ「カラフルな…

『ノーマル・ピープル』サリー・ルーニー

『ノーマル・ピープル』サリー・ルーニー 山崎まどか訳 マリアンとコネルは幼馴染だった。マリアンは一匹狼だがコネルは学校の人気者。コネルの母親はマリアンの家でお手伝いとして働いていたが、二人は高校では素知らぬふりをする。だがお互いに惹かれ合い…

『ビューティフルからビューティフルへ』日比野コレコ

『ビューティフルからビューティフルへ』日比野コレコ 絶望をドレスコードに生きる高3の静とナナは、「ことばぁ」という老婆の家に毎週通っていて――。たたみかけるパンチラインで語られる高校生たちのモノローグ。第59回文藝賞受賞作。18歳の新星が放つ、一…

『N/A』年森瑛

面白さで痺れた。 『N/A』年森瑛 選考会で異例の満場一致! 第127回文學界新人賞受賞作松井まどか、高校2年生。うみちゃんと付き合って3か月。体重計の目盛りはしばらく、40を超えていない。――「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。優しさと気遣いの…

『しょぼい喫茶店の本』池田達也

『しょぼい喫茶店の本』池田達也 就職できなくても生きる! ! 東京・新井薬師に実在する「しょぼい喫茶店」(という名前の喫茶店)が出来るまで、と出来てからのエモすぎる実話。(Amazonより) 色々挫折はしてるけどなんかトントン拍子に進んでいくなって思っ…

『幾千年の声を聞く』青羽悠

『幾千年の声を聞く』青羽悠 世界の中心に聳える巨大な〈木〉。人々は枝の上に家を建て、各地から人が集まり、やがて国ができ、文明ができた。だが、他国から〈木〉のもとを訪れた学者は気がつく。「こんなものは本来、地球に存在しえない」。この〈木〉はい…

『優莉結衣 高校事変 劃篇』松岡圭祐

”バイオレンス×アオハル”という最高のマッドサイエンス。 『優莉結衣 高校事変 劃篇』松岡圭祐 「高校事変」、最後のピース。史上最強の女子高生、優莉結衣。ホンジュラスでメキシコの過激派組織ゼッディウムと死闘を繰り広げた後、日本への帰国の道筋が不明…

『一汁一菜でよいという提案』土井善晴

『一汁一菜でよいという提案』土井善晴 日常の食事は、ご飯と具だくさんの味噌汁で充分。あれば漬物を添えましょう。無理のない生活のリズムを作り、心身ともに健康であるために「一汁一菜」という生き方をはじめてみませんか――。料理研究家・土井善晴による…

『妻はサバイバー』永田豊隆

壮絶な闘いの記録に圧倒された。 『妻はサバイバー』永田豊隆 妻に異変が起きたのは、結婚4年目、彼女が29歳の時だった。摂食障害、アルコール依存症……。介護と仕事、その両立に悩み続けた20年近くにわたる自らの体験を、貧困ジャーナリズム賞受賞歴もある朝…

『新!店長がバカすぎて』早見和真

帯通り、続編でこれほどまでの期待以上の面白さがあるとは。 『新!店長がバカすぎて』早見和真 宮崎の山奥に異動になっていた山本猛元店長が、 三年ぶりに、吉祥寺本店に店長として復帰した。張り切る店長だが、相変わらず、人を苛立たせる天才だ。しかし京…

『ニューヨークの魔法の約束』岡田光世

シリーズ7作目。 『ニューヨークの魔法の約束』岡田光世 あの日、守れなかった約束。口にすら出せなかった約束。やっと果たせた、涙の約束。後悔や叶わなかったこともある。そのすべてが大切な宝物。お節介で厚かましくて、憎めないニューヨーカーたちが、大…

『レジデンス』小野寺史宜

『レジデンス』小野寺史宜湾岸に住む4人の主人公たちの交錯するある夏の3日間。 学校では成績優秀な反面、夜な夜なひったくりを行っている中学生・望。望の小学生の時の同級生で夜は自転車泥棒に暴行を働いている弓矢とその異母兄・充也。就職活動前に事故に…

『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2 』宮口幸治

”頑張れないからこそ支援しないといけない” 支援したくないような人こそ実は支援の対象である。 『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2 』宮口幸治 「頑張る人を応援します」。世間ではそんなメッセージがよく流されるが、実は「どう…

『ミーツ・ザ・ワールド』金原ひとみ

著者の作品の中でも特に好きだった。というか読むタイミングが良かった。 『ミーツ・ザ・ワールド』金原ひとみ 死にたいキャバ嬢×推したい腐女子焼肉擬人化漫画をこよなく愛する腐女子の由嘉里。人生二度目の合コン帰り、酔い潰れていた夜の新宿歌舞伎町で、…

『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子

読んでよかったと心底思えた。 『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子 第167回芥川賞受賞!「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守…

『ぼくらは、まだ少し期待している』木地雅映子

新感覚な読み心地だった。 『ぼくらは、まだ少し期待している』木地雅映子 町田そのこ氏、おすすめ!「自分を誰かに明け渡さない。それが、誰かを救うことにもなるのだ」札幌の進学校に通う土橋輝明は、数学と生物が得意な高校3年生。同学年の特進クラス国…

『夜のかくれんぼ』星新一

2023年読書初め。 『夜のかくれんぼ』星新一 宇宙からきた意味ありげな電波、壁からはえた人間の手、神からテレポートの能力をさずけられた男etc。信じられないほど、異常な出来事が、次から次へと起るこの世の中。科学もふきとび、理屈も引っこむ摩訶不思議…

2022年読書ベスト

毎年恒例のやつです。 去年はこんな感じ。 sunmontoc.hatenablog.com 今のところ読み終わったのは110冊。その中の16作品。1〜11は小説、12〜16はエッセイやノンフィクション。 作家ごとに一冊、ランキングでもないし感想の長さは気まぐれなので満足度に比例…

『腹を割ったら血が出るだけさ』住野よる

新しい視点をもらえた。 『腹を割ったら血が出るだけさ』住野よる 高校生の茜寧は、友達や恋人に囲まれ充実した日々を送っている。しかしそれは、「愛されたい」という感情に縛られ、偽りの自分を演じ続けるという苦しい毎日だった。ある日、茜寧は愛読する…

『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成

評判通りの面白さ。 『六人の嘘つきな大学生』 浅倉秋成 成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内…

『両手にトカレフ』ブレイディみかこ

小説も間違いなかった。 『両手にトカレフ』 ブレイディみかこ 西加奈子氏、推薦! 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者が14歳の少女の「世界」を描く、心揺さぶる長編小説。 この物語は、かき消されてきた小さな声に力を与えている。 そ…

800超えたくてTOEIC挑戦

今年前半戦の備忘録。 数年前に初めて受けた時のスコアが785だったので、せっかくなら800超えたいなと思い久しぶりにTOEIC受験した。 年明けから勉強始めて5月末に受験っていう割とのんびりしたスケジュールで計画。 今までだとなんかしらの試験を受ける時に…

『宙ごはん』町田そのこ

めちゃくちゃ久しぶりになってしまった更新。 資格試験が今日で終わったので読書感想再開します。(資格試験については合格してれば記念に更新します…) てか6月以降なぜか記事書けなくてnoteにしかアップしてなかったやつもあるんだった。 小説だったら今年…

『流浪の月』凪良ゆう(小説と映画)

圧倒的に面白かった。 『流浪の月』凪良ゆう あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかも…

『常識のない喫茶店』僕のマリ

最高な読書体験だった。 『常識のない喫茶店』僕のマリ 「働いている人が嫌な気持ちになる人はお客様ではない」――そんな理念が、この店を、わたしを守ってくれた。失礼な客は容赦なく「出禁」。女性店員になめた態度をとる客には「塩対応」。セクハラ、モラ…

『佐久間宣行のずるい仕事術』佐久間宣行

いい意味で甘い期待を裏切られた。 『佐久間宣行のずるい仕事術』佐久間宣行 サラリーマンでありながら、「オールナイトニッポン0」のラジオパーソナリティをつとめ、ファンイベントを行えばリアルで5000人が集まってしまう、45歳のフツウのようでフツウじ…

『水を縫う』寺地はるな

めちゃくちゃ好きな話だった。 『水を縫う』寺地はるな 松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな…

『ひとまず上出来』ジェーン・スー

このエッセイも響いた。 『ひとまず上出来』ジェーン・スー 重ねる歳はあるけれど、明けない夜はないはずだ。CREA連載「●●と▲▲と私」に加え、SNSで話題沸騰の推しエッセイ「ラブレター・フロム・ヘル、或いは天国で寝言。」、楽しいお買い物についての書きお…

『いのちの車窓から』星野源

単行本も読んでたけど文庫版も。 『いのちの車窓から』星野源 星野源が、雑誌『ダ・ヴィンチ』で2014年12月号より連載スタートした、エッセイ「いのちの車窓から」。第1巻となる単行本は2017年に刊行し、ベストセラーに。【累計42万部突破】となる大人気エ…