2017年読書ベスト
クリスマスなんてもちろんやることないので、今年読んだ133冊の中から年間読んだ本ベストです。作者1冊のみ。去年より色んな作者読んだからか絞りきれなく今年はベスト12+番外編。
①『奇跡の人』原田マハ
ヘレンケラーとアンサリヴァンをモデル・オマージュした明治時代の青森での話。
『キネマの神様』は最後にまとめて感動押し寄せたけど、これは先生の生徒をひたする信じ抜く姿勢と生徒の原始的?人間的?なかわいさに度々感動してしまった。
元ネタはあまり知らないけどうまく当時の日本の閉鎖的な文化と、キリスト教的価値観・考え方をうまく混ぜていると思う。
読んでる途中では先生と生徒どっちが「奇跡の人」なのかなと考えてたけど、どっちもそうなんだなと読み終わった時の爽快感。
終わり方も綺麗だし、元ネタしっかり調べたくなった。
②『神様の裏の顔』藤崎翔
作者が元芸人で話題だったやつ。
葬儀を発端にして起こる、神様と呼ばれていた故人の裏の顔について、各参列者の疑念を基にしたストーリー。
これは面白い…。話の展開を匂わせてやっぱそういうことかーという風に確信づけられて行ってからの残りページ数考えると、あれ?って思わせてからの更なる展開来たと思ってからのラストのもう1ウネリ。最高した。
他にも『私情対談』もめっちゃオススメ。
小説なんだけど、すごく良くできたコントの台本読んでるような感覚にさせてくれる人。
自分史上第一次読書ブームを作ってくれた恩田陸の直木賞受賞作。
国際的なピアノコンクールを舞台にした天衣無縫な無名の若者と天才と秀才と挫折から復活した元天才と努力家とかの話。
鬼ボリュームだったけどめっちゃ良かった。慣れないジャンル(クラシック音楽)だから予想以上に時間かかった。
でもページが進むたびに登場人物が自然と削られていって物語の集中度というか密度というか純度がどんどん高まっていく感じでした。 『四月は君の嘘』が好きな人は好きだと思う。
才能の有無っていう次元を超えて、超自然的というか変な言い方だけどスピリチュアルな感覚まで昇っていく。
この時期に後述の『岬洋介シリーズ』を読んでたからこの世界に没頭できた。
④『雪の鉄樹』遠田潤子
TSUTAYAが当時めちゃくちゃ推しててずっと気になってたやつ。
トラウマと過去をずっと引きずり背負いながら寡黙に生きている庭師の話。
物語の密度が半端なかった。登場人物の疲弊感がモロに伝わってくる。こんな不幸な状況続く!?ってぐらい。
家庭環境も仕事内容も周りの人物も全てが寒々しく感じる。
9割9分どん底でラスト1分で救いがあります。
物語の様々な要素のバランスがかなり良いと思う。
主人公は村上淳で脳内再生余裕。
⑤『本を守ろうとする猫の話』夏川草介
マイマスター夏川草介。
この人の『神様のカルテ』は人生ベストに入るくらい好きだけど良くも悪くもそのシリーズだけなのかなと思ってたら思いっきり覆された。
タイトルからわかる通りのファンタジー。
神様のカルテで書かれてた『本を読む意味』を更に丁寧に深く書かれてて、各章が読書する人にとっては他人事ではないテーマで、そしてその理想に対して最後に現実突きつけて、でもその現実に屈しない理想を表明する的なめちゃくちゃいい展開だった。ただあの本の擬人化が女性ってのが意外だった。
これもずっと本棚に入れてまた読み返したい。
読書好きな人にはかなり読んで欲しい作品。
「本には大きな力がある。けれどもそれは、あくまで本の力であって、お前の力ではない。」って言葉がぶっ刺さった。
⑥『屋上のテロリスト』知念実希人
病院テロリストシリーズでハマった作者。相変わらずの面白さ。
ポツダム宣言を受託しなかった世界での東西日本を股にかけた少女のぶっ飛んだテロ計画。
サブ主人公の少年もこじらせた性癖を持ってて、でも綺麗な言い方をすればボーイミーツガールストーリー。
設定も面白いし、登場人物の役職や背景も現実とはちょっと違うから、世界観に没頭できる。
この人はいつもそうなんだけど、途中まで本当に最後の展開が読めないんだけど、途中から加速してどんどん仕込んでおいたタネを明かしていく感じがが最高。
シリーズものも単発も本当にハズレがない人です。
⑦『光』三浦しをん
前に途中で読むの断念したけど実写化するってことでリベンジ。結果ハマった。
子供の頃に住んでいた島で震災に遭い、ある秘密を抱えた・知ってしまった3人の話。
『舟を編む』を書いた人とは思えない話。というかこの作者の他の作品から言っても、もしかしたらこういう影があるというか、陰鬱した話の方がこの人の醍醐味なのかも。
終始暗くて、救いもないし、全く気分は晴れないんだけど、緊張感がある状況にどんどんのめり込める。
実写版も瑛太と井浦新ってのも血通ってなさそうで楽しみだったのに観に行けてない。
⑧『ツバキ文具店』小川糸
先輩から貸してもらったやつ面白くて一気読みした。
亡き祖母との確執を引きずりながらも代筆業を引き継いだ、鎌倉に住む女性の話。
淡々とひとつひとつのエピソードをあまり長引かせずに終わらせるのはなんとなく『深夜食堂』ぽいなと。
筆や紙の表現が多いからか、めくるページも『舟を編む』で言ってたような『ぬめり感』があるように感じた。文章を書くところとか、料理を作るところとか、道具の準備も含め、一つ一つの所作の描写が綺麗すぎてこんな生活送りたいって思わせてくれる。
祖母の文通に書かれている真実に感動する。
続編の『キラキラ共和国』も大満足なのでオススメです。
思ってた3倍面白かったし読み易かった。今まで読んでなかったの後悔するレベル。
自衛隊に対する印象が変わった。業種というよりも職種で、どんな組織でも色んな考え方・感覚で仕事しているんだなと、当たり前のことを考えさせてくれる。
主人公の男泣きのシーンがめちゃくちゃいい。
あと番外編の、『あの日の松島』は被災者や傍観者の物語しか読んでなかったから新鮮だった。
自分みたいになんとなく避けてた人は絶対読むべき。
かなり久々に東野圭吾読んだけど、こんなにファンタジー要素強かったっけ?ていうのが第一印象。もちろんいい意味でなんだけど。
途中までは良くも悪くも最近(発表された時はもちろん違うんだろうけど)流行ってるタイムリープものみたいな話で、店主が主人公なんだろうなーと思ってたら、そこに止まらずどんどん人が絡んでくる。若干モブだと思ってた登場人物も後から効いてくる。
伏線回収の上手さやストーリー展開も流石なんだけど途中で全てを理解することをやめてしまった。もう一回読み直したらまた楽しそう。
そういう話の作り込みを楽しむのも良いんだけど、最後の回答が素晴らしすぎて思わず感動する。もちろん作者もそこが主題だったんだろうけど。
めちゃくちゃ満足して楽しかったけど、公開された映画を観るのは少し怖い。
11『イノセント・デイズ』早見和真
本屋で平積み展開されてて作者知らなかったけど購入。
ある女性死刑囚についての物語。
読み始め20ページで「あっ、これ絶対面白いやつだ」と確信。
読み応えめちゃくちゃあって、どんどん文章が頭に入ってくる感じ。
構成も好きで、判決文をひとつひとつ反論というか覆すようなエピソードが並んでる。前半だけでも十分面白くてそれで完結しててもあんまり文句ない。
基本的に主人公主観にならないんだけど、各登場人物に関しても、主観と他の登場人物からの客観にズレがあるところが、物語の主題にも近いような感じで印象的だった。
こういう話だと、最後に改心したり、何かを悟ったりする系が多いイメージだけど、最後まで主人公が自分を貫き通すのが魅力的だし悲しい。一回読んだだけだと、細部まで感情を理解しきれない物足りなさというか満足しきれない読後感も後を引いて良い。
唯一の理解者が真実に辿り着いた日付を見て、冒頭読み返した時の絶望感。
久しぶりに初めて読む作者でのめり込んだ。タイトルが秀逸すぎる。
12『砂漠』伊坂幸太郎
順位はつけないけど、今年読んだ本の中でNo.1と言っていいくらい好き。
今年まで伊坂幸太郎を読まず嫌いしてたけど、読み始めたらどんどんハマっていって、その中でもぶっちぎりで良かった。
基本的には各々少しずつ突出している大学生たちの日常・キャンパスライフを描いた話。この時点で個人的にツボ。
作者の特徴であるひねくれた考え方や、ずっと引っかかるようなセリフが随所にあって、憎めない愛すべき登場人物がいて、一番作者らしさを感じれるんじゃないかと個人的には思います。
穏やかな日常が続いていくのかなと思わせてからの、「えっ!?」と思わせるいきなりな展開。これどうやってまとめるんだろう、シリアスな方向に向かうのかなと疑わせておいて、最後の伏線回収というか錯覚の種明かしの見事さ。是非これは事前情報仕入れずに素直に勘違いしてほしい。
最後の終わり方もどこか少し刹那的で、本当に大学生時代に読みたかった本。
図書館で借りたけど一生本棚に置いておいて読み直したい。
※番外編
「岬洋介シリーズ」中山七里
どれが一番か選べなくてむしろシリーズでオススメです。大雑把に言うと、音楽ミステリー。
『さよならドビュッシー』
中山七里は、どっちかっていうとグロとかエグいのが多いのかと思ったら、途中まで絶望の中から希望を掴む、的な話でめっちゃいいなあと思ってたら、最後の最後に全く望んでなかった結末。でも望んでないのに最高のラストだった。途中途中の些細な描写が全て最後に綺麗に回収されて爽快感がすごい。テンションの上がり方が尋常じゃなかった。
『おやすみラフマニノフ』
読み終わってからの題名の意味にも寒気。
前作のよりはこの作者に対する危険察知能力が高くなってて、衝撃は少なかったけど、演奏部分の何重もの音の表現と、心象風景を読んでいる最中にも最後の推理部分でどんなどんでん返しがあるのかという期待感が半端なかった。
前作と違い天才があまり登場してこなくてもオトーケストラ形式なので、周囲への疑心暗鬼さが加わっててまた別の面白さが。
下諏訪が前作でかなり傲岸不遜で書かれてたけど、今作で彼女が救われた感じも。
『いつまでもショパン』
間違いなく面白いんだけど、感動や衝撃は他の二作より薄いかなと感じさせておいて、ラスト2ページで全部持ってかれた。
『どこかでベートーヴェン』
シリーズの中でも特に胸糞悪い。
ラスト一行で楽しい疑惑を持たされる。
学校の先生の、「正しい血と汗を流す戦場を探す」って言葉が、努力をすることは大前提で、正しい方向に努力するってことが大事なんだなと思わせてくれる。
シリーズを通して、最初は冷徹なまでの音楽家だと思った岬洋介が、彼自身も足掻いてる姿を見せてくれて、人間らしさを感じさせてくれるから、ずっとこのシリーズのファンでいられる。
どこかでベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 中山七里
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2017/05/09
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
文章散らかりすぎだけど、今年も面白い本いっぱいあった。さすがに来年は冊数は越せないので、今まで敬遠してたような本もじっくり読んでみたい。一生楽しめる。