『SOSの猿』伊坂幸太郎

予想外の内容。

 

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『SOSの猿』伊坂幸太郎

三百億円の損害を出した株の誤発注事件を調べる男と、ひきこもりを悪魔秡いで治そうとする男。奮闘する二人の男のあいだを孫悟空が自在に飛び回り、問いを投げかける。「本当に悪いのは誰?」はてさて、答えを知るのは猿か悪魔か?そもそも答えは存在するの?面白くて考えさせられる、伊坂エンターテインメントの集大成。(Amazonより)

 

最初の2Pで「これめっちゃ読み易い」と思ったのに、読み進めていくうちに「え?」って内容と展開に。

古典?と交錯して時間軸の仕掛けもあり、全部は一読で理解できない感じ。こういうストーリー読むと、「小説家ってすごい」って改めて思う。

伊坂幸太郎特有の『素直に認めたくない愛すべき人』ってわけじゃなくて、単純に登場人物同士が、意思疎通というか共感があまりできていない感じがして、新鮮だしそこがまた面白かった。

 

ずっと霧がかったような感じで進むんだけど、その中でも心に引っかかるセリフは多かった。

『歌ってのはね、くだらないメッセージじゃなくて、もっと漠然とした隕石みたいなものをぶつけるものなんだ。だから、歌の意味とかメッセージを探ろうとする奴はね、だいたい失敗するよ。もやもやした隕石を言葉になんてできない』(P242)

とか、

『どんな親だって、子供の未来は心配なんだよ。たとえば、わたしが漫才しないで、あなたの心配ばかりしてたらどう思う?鬱陶しくない?』(P275-276)

とか。

 

なかなか内容は簡単に没頭できるわけではないんだけど、徐々に理解できていく感じも読んでて楽しいし、最後の締めのセリフが爽やかというか子供っぽくて好きでした。

 

 

 

SOSの猿 (中公文庫)

SOSの猿 (中公文庫)