三浦しをんで初めての感覚。
『あの家に暮らす四人の女』三浦しをん
謎の老人の活躍としくじり。ストーカー男の闖入。いつしか重なりあう、生者と死者の声―古びた洋館に住む女四人の日常は、今日も豊かでかしましい。谷崎潤一郎メモリアル特別小説作品。ざんねんな女たちの、現代版『細雪』。(Amazonより)
文章の主体がどんどん変わっていき、視点が目まぐるしく切り替えられる。というか、はるか上空からの「神様の視点」だなと。
今まで読んできた、『舟を編む』のような静かながらも情熱がある感じや、『光』のような仄暗く陰鬱とした雰囲気でもなく、陽気だけれども少し影があるような空気感で、文体の洒落感というかクドさが森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』のようだった。
現代が舞台なんだろうけど、大正浪漫的な空気を感じた。
各々の日常を主観を変えながら淡々と描いていて、ここまで登場人物の顔をイメージできないのも個人的には珍しかった。もちろん、イメージできないからつまらないとかではなく、物語の本筋を掴みきれないもどかしさがまた面白かった。
ただし、途中から主人公の親子の繋がりがメインになってくると、冒頭で感じた「神様の視点」についても見当違いではなかったと気づく。
また、血の繋がりではない「四人の家族」についての、文中の『口うるさかったり理解不能だったりする人がいる。こういう空間を「うち」というのではないか。』という表現が、家族ってそういうものだよなと共感。
日々の暮らしで決定的な出来事があるわけではないけど、各々の考え方の分岐点があり、この四人はいずれ別れることはあっても、このままの日常を終わりを迎える時まで過ごしていくんだろうなと感じさせる終わり方だった。
元ネタ?も気になったので、『細雪』も読んでみようと思います。