またもやTSUTAYAで推されていたので。
『君を一人にしないための歌』佐藤青南
中三の夏、全国出場をかけた吹奏楽コンクールで大失敗を犯したことをきっかけに、ドラム演奏をやめた僕―高校入学から一カ月が過ぎたある日。七海という見知らぬ女子生徒に強引に誘われ、バンドを組むことになってしまう。豊富な音楽知識をもつ凛も加入してバンド活動が始まるかと思いきや、ギタリストだけが見つからない!メンバー募集をかけるが、やってくる人は問題児ばかりで…なぜかバンドをすぐにやめてしまう!?いつになったら演奏できるのか?往年のロックの名曲も謎にからむ日常ミステリーの新定番、爆誕!(Amazonより)
以前も作者の『たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に』もTSUTAYAで推されていたが、今作は正直途中まではゴリ推ししすぎじゃないかと、ハズれだったかなと思いつつ読み進めていった。
主人公たちの身の回りで起きる小さな謎を解き明かしていくんだけれども、種明かしが少し期待外れで、これだったら米澤穂信の『古典部シリーズ』の方が全然良かったなと感じていた。
だけれども、徐々に謎の質や、各エピソードのテーマ曲への理解というか見解が深まっていき、スロースターター的に面白くなってきた。
そして、途中で単純すぎないかと思った主人公の七海への評価の変わりっぷりも、最後まで読むと七海の背景がわかって納得できる。
文中で印象に残ったところは、
『他人の夢を壊す権利は、誰にもないのです。そんなことを許されません。』とか、
『いじめた連中のことなんて、放っておけよ。相手の不誠実を理由にこっちが不誠実を働いたら相手と同じになる』
って部分が、忘れていた忘れちゃいけない青臭いけど大事な感覚を思い出させてくれた。
そして最後にすべて繋がる些細な描写の回収の仕方が見事すぎて、作品への評価が一転した。理由を理解して思い直して読み返すと切ない。
ラスト面白さは格別なので、3人の中学のエピソードも含めてもっとがっつり読みたかった。