『アルキメデスは手を汚さない』小峰元

今更すぎるがいい小説に出会えた。

 

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アルキメデスは手を汚さない』小峰元

アルキメデス」という不可解な言葉だけを残して、女子高生・美雪は絶命。さらにクラスメートが教室で毒殺未遂に倒れ、行方不明者も出て、学内は騒然!大人たちも巻き込んだミステリアスな事件の真相は?’70年代の学園を舞台に、若者の友情と反抗を描く伝説の青春ミステリー。江戸川乱歩賞受賞作。(Amazonより)

 

地元の本屋でお勧めしていたので購入。

買ってから驚いたけど、45年前に発売された小説だった。

読み始めて思ったのが、何か意図があってなのか、そういう風潮だったのか、登場人物の名前が割と難しいのに、フリガナが振ってないことに違和感を感じたけど最後まで分からず。

ストーリーとしては、学園モノの青春ミステリーを、コロンボみたいなイメージの老年に近い刑事が子供たちに翻弄されながらも核心に迫っていく。

自分が生まれるより昔の話なのに、刑事の苦悩している描写を読むと、いつの時代も「若者・思春期の子供」というのは大人の理解の範疇の外にいるんだなと感じる。個人的に「最近の若いもんは」的なセリフは大嫌いなんだけど、むしろいつの時代も世代間での隔りってのはあるんだなと。読んでても全く違和感なくそこらへんのズレはスッと入ってくる。

ずっと、その隔りを感じている刑事だけど、最終的には自分の子供ほど年齢の離れた容疑者に「かっこいい」と感じるところが個人的に好きだった。子供だからこそ、滑稽なほど純粋だからこその無垢な格好良さがそこにはあった。

また、容疑者・被害者となる柳生家は、どこかドライな関係かと冒頭では思ったけど、悲しいほどの家族愛をそれぞれ持っていた。

トリックの巧妙さや伏線回収のうまさとかよりも、人物・世代描写を楽しむ作品。

 

ばあちゃんの家に、作者の他の作品もあるとのことなので、読み漁ります。

 

 

 

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)