やはり至極の読みやすさ。
『マイ・ディア・ポリスマン』小路幸也
奈々川市坂見町は東京にほど近い古い町並みが残る町。元捜査一課の刑事だった宇田巡は、理由あって“東楽観寺前交番”勤務を命じられて戻ってきたばかり。寺の副住職で、幼なじみの大村行成と話していると、セーラー服姿のかわいい女子高生・楢島あおいがおずおずと近づいてきた。マンガ家志望の彼女は警官を主人公にした作品を描くために、巡の写真を撮らせてほしいという。快くOKした巡だったが、彼女が去ったあと、交番前のベンチにさっきまでなかったはずの財布が。誰も近づいていないのに誰が、なぜ、どうやって?疑問に包まれたまま財布の持ち主を捜し始めた巡は、やがて意外な事実を知ることに…。(Amazonより)
最近、読み慣れていない作者や、自分としては重めの話を割と多く読んでたから、この軽やかさはめちゃくちゃ楽。
でも、話全てが軽いのではなくて、街の人々の繋がりや、それぞれの影となる部分を入れつつも、全体としては明るく気張らずに読めるという良い塩梅。
そして、作者の得意とする縦横に広がる家族の結びつきも楽しめる。
少し現実離れした特殊な能力も大仰にならずに表現してあって読んでて楽しいし、読み終わってしまってから、良い意味での物足りなさも残してくれる。
やっぱりこの文章の読みやすさは自分史上随一。
「仏様に手を合わせて祈る、というのは宗教というのを通り越して日本人の原風景みたいなものとして根付いている」
「超一流の掏摸は一秒の間には0.1秒が十回もあるって数えられる」
って部分がハッとさせてくれて印象的。