『アノニム』原田マハ
久しぶりの原田マハ。
『アノニム』原田マハ
ジャクソン・ポロック幻の傑作「ナンバー・ゼロ」のオークション開催が迫る香港。建築家である真矢美里は七人の仲間とともにオークション会場へ潜入していた。一方、アーティストを夢見る高校生・張英才に“アノニム”と名乗る謎の窃盗団からメッセージが届く。「本物のポロック、見てみたくないか?」という言葉に誘われ、英才はある取引に応じるが…!?ポロックと英才、ふたつの才能の出会いが“世界を変える”一枚の絵を生み出した。痛快華麗なアート・エンタテインメント開幕!!(Amazonより)
読む前はもっとかっちりしてるいい意味でいつものアート系の作品かなと思ってたけど、どこか近未来的なワクワク感強めでした。
自分にはあまり馴染みがなかった香港という東洋的でもあり西洋的でもある街が世界中最高峰の芸術のオークション会場にピッタリな感じがした。
また今まで知らなかった「オークショニア」という職業も知れた。特に作中終盤の一億ドル以降の競り合いを煽る姿は想像し応えがあった。
「アートに世界を変える力はないかもしれない。けれど、ひょっとするとアートで世界を変えられるかもしれないと思うことが大切なんだ」
という言葉が印象的で、東日本大震災時にハイスタの横山健が伝えていた
「音楽で世界は変わらない。音楽にケツを蹴り上げられて、熱い気持ちになった人が行動して、そうして世界は変わっていくんだ」
みたいな言葉に通じる部分があるなと勝手に感じた。そう信じることが大事なんだと。
作中のキーマンである英才のような今では厨二病とみなされてしまうような思い込みや根拠のない自信を持ち続けることが、何かを成し遂げる時には大きな原動力になるんだなと初心というか素直な考え方に戻らせてくれた。
作者のアートを大切にする心は今まで通り伝わってくるんだけど、エンターテイメントとしての読み易さも、今までの作品より感じて新鮮だし、作者の魅力の新たな側面を知れた気がした。