『スイート・マイホーム』神津凛子

最悪で最高。

 

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『スイート・マイホーム』神津凛子

長野の冬は長く厳しい。スポーツインストラクターの賢二は、寒がりの妻のため、たった1台のエアコンで家中を暖められる「まほうの家」を購入する。ところが、その家に引っ越した直後から奇妙な現象が起こり始める。我が家を凝視したまま動かない友人の子ども。赤ん坊の瞳に映るおそろしい影。地下室で何かに捕まり泣き叫ぶ娘―。想像を絶する恐怖の連鎖は、賢二の不倫相手など屋外へと波及していき、ついに関係者の一人が怪死を遂げる。ひたひたと迫り来る悪夢が、賢二たち家族の心を蝕んでいく…。第13回小説現代長編新人賞受賞作。(Amazonより)

 

帯の名だたる作家たちからのおぞましさの賞賛でだいぶハードル上がったけど、かなり楽しませてもらった。

地元もそうだけどやっぱり豪雪地帯とか寒冷地って冬は常に曇っているような陰鬱とした印象があって、この物語も常にそんな雰囲気を纏いながら進んでいく。ストーリー自体は読み易いんだけど、ページが進むにつれて不安や焦燥感が増していって、最後の盛り上がりへの期待が高まっていく。

あとホラー的な要素ばかりかと思ってたら、精神疾患に関する考え方など別な意味で心に残るところもあった。「完治がゴールなのではなくて、寛解状態で満足して周囲との調和を図っていく」っていうとこ。

第2章・第3章の盛込み方半端なくて色んな事実がわかって若干消化しきれなくなりそうになるけど、兄や甘利の真の姿に感銘を受けるしこの物語自体が「誰からの視点でモノゴト・ヒトを見るか」っていうところで良い具合に錯覚を起こしてくれる。第2章の最後は切なかったなー。

そして予想以上を打ち込まれた最後。そこまで求めてないよと顔しかめたくなるくらいで後味最悪で最高でした。

 

今年ベストに入るであろうホラーエンターテイメント。

昨日の深夜に読み終えたけど、いつもより照明多めにつけたし物音にビビってしまった。

 

スイート・マイホーム

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