『全部ゆるせたらいいのに』一木けい

身に刺さる物語だった。

 

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『全部ゆるせたらいいのに』一木けい

不安で叫びそう。安心が欲しい。過剰に安心させて欲しい。
なのに、願いはいつも叶わない――。
家族って、幸せって一体何だろう。
痛みを直視して人間を描き、強く心に突き刺さる、圧倒的引力の傑作!(Amazonより)

 

アルコールに縛られてきた親子・家族の物語。

フィクションといえども突拍子のないことではなく、アルコール依存症の悲惨さはリアルさがあると感じた。常に症状が出るわけではなく、理性が働き他者に優しい時があったかと思うと、嵐のような激しさを見せたり、平気で嘘(自身の中では真実と思っているかもしれないけど)や暴力を奮ったり。

アルコール依存症患者の父を持つ主人公の一生を通しての苦しさが暴力性を伴って伝わってくる。なかなか断ち切ることができない「家族」という繋がり故に、自身に非があるのではないかと責めてしまったり、怒りと罪悪感が交互にやってくる辛さに苛まれている。

それでも初めて孫を初めて会わせた時からの二人の関係性には僅かな救いがあって安心した。父の最期には、やっぱり依存からは簡単に抜け出せるものではないという難しさと人間はあっけなく死んでしまうという侘しさがこみ上げてくる。

それらを踏ん張った後の主人公の生活に幸せを感じるラストがあって良かった。

俺はれっきとしたアル中の家系なので多少は家族の苦しみがわかるし、最近酔っ払って記憶を失くした後の振る舞いがあれだけ嫌いだった父の醜態に似てきた気がしてきて不安に思っていたところなので、リアルな焦りや怖さを持って読めた。

 

 

 

全部ゆるせたらいいのに

全部ゆるせたらいいのに

  • 作者:一木 けい
  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

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