結局はこういう話が一番好きなのかも。
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
幼い頃に母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ優子。その後も大人の都合に振り回され、高校生の今は二十歳しか離れていない“父”と暮らす。血の繋がらない親の間をリレーされながらも出逢う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきた彼女自身が伴侶を持つとき―。大絶賛の本屋大賞受賞作。(Amazonより)
本屋大賞を受賞したときからずっと気になっていたけど、文庫本発売されたタイミングでやっと。
基本的に家族の物語が大好きで、『東京バンドワゴン』のようなひたすらに日なたみたな話か、重松清が描くような悩みや葛藤を経て徐々に心を通じ合わせたりする話が読書経験上は多かった。
だけれど今作は主人公の性格からか、ハードに見える環境に身をおいてるにもかかわらず冒頭から非常に「平温」な物語。そしてその理由を訥々と丁寧に読者に説明していく展開。
それはどの親からも間違いなく愛されていたという実感と、別れを経験していくことで無自覚に培った主人公の心の強さがもたらす温度だった。
必要以上に悲劇的に描くのでもなく、過剰に幸せを強調するのでもなく、毎日の食事のメニューへの些細な感想のような、平凡な生活を何度も繰り返し繰り返し描くことによって伝わるあたたかさである。
初めて読む作家さんだったけど、文章がスイスイ入ってきて、いい意味であまり引っかからずに最後まで読めた。最初と最後以外主観が変わらないから一つの視点で入り込めた。
だけれども最後の、
『本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない大きな未来へとバトンを渡す時だ。』
という文章がこの物語の一番核となる部分を明確に表していて心に残った。すべての親が、主人公の未来のためを思って決断してくれていた。
どハマリしたので他の作品も読み漁る。