遠出

ひっさしぶりに遠出した話。

 

 

 

いつもの友達と一服のために集合したコンビニAM11時。

 

「今日、めっちゃ空いてるから」

「え?」

「どっか行くっしょ」

「え?」

「仙台か那須か新潟、ジャンケンで決めよう」

「おけ」

 

てことでノリで行ってきました久しぶりの新潟。

 

この友人とは毎週2時間くらいジュースジャンケンして一服しながら喋るというおかしい関係性をUターン後7年間続けているけど、飲み屋とか喫煙所以外で2人でいるとそんなに楽しくなくて、ほかのパターンの遊び方をお互い避けていた。なので二人で遠出してみて楽しかったらこれからの遊び方変わるんじゃね?ってことで、期待と怖さ半々でやってみました。

 

高速で約2時間、行きの車内は『Still D .R.E』の無限リピート。スーパーボウルのハーフタイムショーから続くイントロ中毒。

Dr. Dre, Snoop Dogg, Eminem, Mary J. Blige & Kendrick Lamar FULL Pepsi Super Bowl LVI Halftime Show - YouTube

 

途中のPAで一服休憩してる時も二人とも変にハイになってて、この時点で成功は半分くらい確信してた。

 

「ばあちゃんからの相続で50万くらい入った。なんか意味ある形あるものに変えたい」

「時計とか?」

「いいね。首から提げられるクソでかいやつとか?」

「パブリックエネミーじゃん」

 

 

新潟市内に入り、アホみたいに渋滞してたけどビルボードプレイスに到着。

店入ってそれぞれ物色して、もういいなと思ったら目合わせて無言で頷いて出ていくスタイル、クソ楽。

 

フリークスストアで今回のメイン、NAUTICAを試着しようとしたら、若い店員さんに

 

「お二人とも洋服関係のお仕事されてるんですか?」

 

二人ともガチガチの事務職としては絶妙なラインでニヤけてしまうお世辞です、ありがとう。

 

その後、ほかの色も試着しようとしたら同じ店員さんに

 

「お二人とも長谷川昭雄さん(NAUTICAのディレクター)好きなんですか?じゃないとそこまでネイビー尽くしにならないですもんね^ ^!」

 

もうそれはミーハーへの悪口にしか聴こえなかった、ごめんなさい。。

 

 

結局何も買わなかったけど、古着屋あるあたりも行ってみようということで古町へ。

土地勘ないからなんとなくパーキングに停めて通りを歩いてみると、バットを持った銅像が…。

 

 

 

 

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あぶさんだ!!!」

 

水島新司まんがストリート(通称ドカベンロード)』ってところでした。

俺たちは不知火の「ハエが止まる遅球」についてしょっちゅう話すくらいにはドカベンが好きなので、この日一番のブチ上がり。恥ずかしさ忘れて写真撮りまくった。俺たちと同じリアクションと動きしてるのおじさんとおばさんしかいなかった。

 

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里中智

 

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殿馬一人

 

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山田太郎

バットのしなり具合。

 

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岩鬼正美

ハッパの茎はゴリゴリの金属。

 

 

岩鬼とツーショット撮ったりひとしきりはしゃぎ終えてやっと古町散策。

想像以上に古着屋が至る所にあって驚いた。系統も様々だし、古着屋以外にもレディスの店も多かった。もっと早い時間に来て時間かけて歩き通すのも楽しそう。

 

二人とも朝から何も食べてなかったので、17時過ぎに見るからにうまそうな外観のハンバーガーショップ『KEN's BURGER』へ。

シンプルなハンバーガーとポテトを頼んだけど、バンズもソースも美味くて満足。

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ケンズバーガー (KEN's BURGER 【旧店名】ふるまち謙sバーガー) - 白山/ハンバーガー | 食べログ

 

 

て感じで散策終了し、またくだらないことばかり話して帰宅。

特に買い物したわけじゃないけど、期待以上の楽しさがあったので大成功。

ここ数年一人での生活スタイルはかなり充実してきたと思うけど、誰かと一緒に過ごすと一人では得られない経験や共有ができると今更再認識。

今年はもっと人と交わって楽しいことたくさんしていく。

 

『パラソルでパラシュート』一穂ミチ

これこそ現代の物語。

 

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『パラソルでパラシュート』一穂ミチ

第165回直木賞ノミネートで話題をさらった『スモールワールズ』著者、感動の長編小説!「できること、やりたいこと」何もない――。大阪の一流企業の受付で契約社員として働く柳生美雨は、29歳になると同時に「退職まであと1年」のタイムリミットを迎えた。その記念すべき誕生日、雨の夜に出会ったのは売れないお笑い芸人の矢沢亨。掴みどころのない亨、その相方の弓彦、そして仲間の芸人たちとの交流を通して、退屈だった美雨の人生は、雨上がりの世界のように輝きはじめる。美雨と亨と弓彦の3人は、変てこな恋と友情を育てながら季節は巡り、やがてひとつの嵐が訪れ……。(Amazonより)

 

本屋大賞にノミネートされている『スモールワールズ』も面白かったけど、個人的にこれはその上を行っていた。

大阪が舞台でお笑いが大事な要素になってるからってこともあるけど、会話劇がめちゃくちゃ面白い。しかも無理してそう見せようとしてるのではなくて、亨の雰囲気のようにあくまで自然体で。カフェで何度も笑ってしまい、マスク着用のご時世でよかった。また、舞台のネタも素人目線だけど本当に面白かったと思う。誰かプロの協力入ってるのかな?と思うレベルで。

街の描写も共感性が高くて好き。「ドラッグストアの軒先にはみ出した山積みの雪肌精」とか誰もがクスッと来るんじゃないかな。

そういう、さまざまな笑いのエッセンスが嫌味じゃない塩梅で随所に散りばめられていて読むのが楽しくなっていくんだけど、この物語の本質はあくまで(安っぽく聞こえそうで嫌だけど)多様性であるとか、凝り固まった価値観へ一石を投じていることなんじゃないかと思う。しかもそれは蔓延している男尊女卑とかだけではなく、「お笑い」というそういう世間一般の考え方の外側にあるような世界においてもで、弓彦がUSJで先輩に説教されて自分の意見を吐き出すところなんて特に。うまく説明できないけど、わかりやすい対立構造や考え方とは違う次元で目が覚めるような気づきや心持ちが軽くなるヒントをたくさん与えてくれる。

”大人になって友達ができること、たまたま同じ会社で知り合った子とあてのない約束をすること、そこにはかたちになる安全や安心は何もない。でも、セーフティネットってこういうものだと思った。社会保障とか福祉とか、お金ありきで回っていく仕組みだけが人を支えるんじゃない。か細い蜘蛛の糸だって、編めば網になる。崖の底から這い上がるためじゃなく、笑って落ちていくために”

”わたしは、わたしを救ってくれるものを守れたらほかはどうでもいい。”

”魔法はかけられるんじゃなくて自分がかかるもの”

ほかにもたくさん、現実と向き合うってことは世間一般に合わせるんじゃなくてそこで自分の武器で自分の生き残り方をするっていうことなんだと気づかせてくれた。

常に温度感は一定で起伏は少なく穏やかなんだけど、読み終わった後の満足感は想像以上のものがある傑作だった。

 

 

 

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思い出Tシャツ

大学時代のTシャツはほとんどがmontage®︎かバンドT。

 

自分含め周りは中学時代から服に興味持ち始めて、高校時代を通してSamurai magazinewarpなんかを読み漁って「自分はこれ」っていうストリート系のブランドを見つけようとしてた。そんな時に出会ったのがmontage®︎で、パンク感とコラージュテイストな服が好きだった。

高校を卒業して上京し、バイトで自分で使えるお金が増えて、原宿の本店にも頻繁に行けるようになり、大学4年間ほとんどmontage®︎を着ていた。

特に上京して最初の頃に買ったキューピーモチーフとハンバーガーモチーフ、そしてマイケルジャクソンオマージュの三着はデザインも大好きだったし、ファッションを本格的に好きになったキッカケのように思えて、汚れて褪せて着なくなっても捨てられなかった。今でもケータイの待ち受けはキューピーのそれ。

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バンドTもずっと捨てられなかった。大学に入ってからライブハウスに通うようになって、チケット大魔王みたいな大学の同級生に手配してもらって一緒に行って、物販買って近くのコインロッカーですぐそれに着替えて、ダイブしてモッシュして、気に入ったTシャツはその後も普段使いして、俺の大学生活は服とライブとバイトの三つで構成されていた。

自分で買ったやつも、社会人時代のバンドマン同居人を通じてもらったやつも思い出も繋がりも感じてずっと実家のクローゼットにしまってある。

特にDragon Ashlocofrankと並ぶライブハウス通いの中心で、一生好きでいる自信がある。

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どのTシャツもデザイン好きだし、壁に飾ろうかなとかも考えたけどなかなかピンと来なかった時に思いついたのが、「なんかの袋にリメイクしてもらおう」。

さっそく、今までブックカバーと名刺入れを作ってもらっていたお直し屋さん「Hovel(ハベル)」に持っていき、経緯と雑なイメージだけを伝え、あとは全幅の信頼を置いてお任せ。

 

そしてついに出来上がったのがこちら。

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想像以上でぶち上がり。

伝えなくてもデザインの好きな部分をしっかり使って、タグとかも細かく移植してアクセントにしてくれてる。裏地には着なくなったGANT GOLFのシャツを使用してもらい、それもポケットの部分とか手が込んでる。

俺が本をよく読むの知ってたから持ち運びに使えるようにと、ナイロン素材の取っ手をつけてトートバックにしてくれたとのこと。生活スタイルも考えて作ってくれたことが嬉しい。

奇しくもmontage®︎のブランドテーマでもある「the 1,000 faces」にふさわしい最高なブツになったので、形が変わってもこれからもずっと愛用していく。

 

 

 

 

 



 

 

『緑陰深きところ』遠田潤子

書けることなんてなにもないんだけども。

 

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『緑陰深きところ』遠田潤子

業を背負う男たち、奇蹟のロードノベル

兄さん、今からあんたを殺しに行くよ――。
大阪ミナミでカレー屋を営む三宅紘二郎のもとに、ある日一通の絵葉書が届いた。葉書に書かれた漢詩に、紘二郎の記憶の蓋が開く。50年前、紘二郎の住む廃病院で起きた心中事件。愛した女、その娘、彼女たちを斬殺した兄……人生の終盤を迎えた紘二郎は、決意を固めた。兄を殺す、と。
思い出の旧車を手に入れ、兄の住む大分日田へ向かおうとする紘二郎の前に現れたのは、中古車店の元店長を名乗る金髪の若者・リュウだった。紘二郎の買ったコンテッサはニコイチの不良車で危険だと言う。必死に止めようとする様子にほだされ、紘二郎は大分への交代運転手としてリュウを雇うことに。孫ほど年の離れた男との不思議な旅が始まった。
かつて女と暮らした町、リュウと因縁のある男との邂逅、コンテッサの故障……道中のさまざま出来事から、明らかになってゆく二人の昏い過去。あまりにも陰惨な心中事件の真相とは。リュウの身体に隠された秘密とは――? 旅の果て、辿りついた先で二人の前に広がる光景に、心揺さぶられる感動作。2020年直木賞候補となり、いま最も注目を集める作家が贈る、渾身の一冊。(Amazonより)

 

『雪の鉄樹』、『オブリヴィオン』と、陰鬱でとことんどん底だけど微かに光を見せてくれる著者の作品が大好きなんだけど、これも一生残しておきたい作品になった。

設定や仕掛け、気づきとか良い作品にはいろんな要素があると思うけど、そういう細かい要素抜きにして、物語としてただ単純に圧倒的に面白かった。

いつもの期待がグッと高まる暗い幕開けから、不思議な相棒と一緒のロードムービーを見ているような展開、そして最後の救いまで、予測できない流れに終始魅了された。

主人公とリュウ、どちらが救い、救われたのか、そのどちらもなのか、目まぐるしく翻弄される終盤には思わず昂って泣きそうになってしまった。

そして何度も出てくる詩が持つメッセージを、最後にとても綺麗に描写するオーラスは完璧。

たくさんの魅力が詰まっている作品でうまくまとめることができないけど、この読書体験ができたことが只々幸せだった。

 

 

 

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Dragon Ash LIVE 『THE SILVER LILIES』

二度と観れないセットリスト。

 

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www.dragonash.co.jp

 

デビュー25周年の記念ライブを一日遅れで配信で観ました。

前提として、ポップ感少なめのロックバンドがメジャーで25年も第一線を張立続けていることが驚異。

 

ライブ後にセトリは公開済み。

 

dragonash.lnk.to

 

01. The Day dragged on
02. 天使ノロック
03. Public Garden
04. Fever
05. Under Age's song
06. Just I’ll say
07. 運命共同体
08. Los Lobos
09. Let yourself go, Let myself go
10. Beautiful
11. 花言葉
12. Hot cake
13. Iceman
14. Life goes on
15. Snowscape
16. Revolater
17. Episode 4
18. ダイアログ
19. Jump
20. Canvas
21. 百合の咲く場所で
22. Deep Impact
23. Lily
24. ROCK BAND
25. New Era

 

奇跡みたいな文字面。

楽しみすぎていつもより酒を多く買い込み、万全の状態で視聴開始。

 

一曲目の「The Day dragged on」の入りからぶち上がった。ギター、ドラム、DJ、ベースと順番に現れたと思ったら、生演奏でのDJプレイというか、なんて表現すればいいのかわからないけど、ロックバンドにおけるDJの20年以上の存在理由をまざまざと見せつけるような始まり方。

33歳の僕がDragon Ashを認識し出したのが20年前の中学生時代、ハマり出したのが高校生くらいからだから、正直冒頭の三曲とかはど真ん中でクラッてた訳ではないけど、シンプルで青臭くて疾走感に溢れていて、そしてそこから馴染み深くて大好きだけど、今じゃなかなかセトリで見かけないような曲たちの連続。どんどんテンションが上がってきて画面越しながら頭を振ってしまし、アンコール一曲目で流れた時のような喜びの連続で、もう本当に多幸感しか存在しなかった。

また、この日のKjはいつものライブの正装のような格好ではなく、トレーナーにダメージジーンズというアメリカの若物のようなラフさだったからかもしれないけど、一時代の定番だったガットギターを持つ姿にどこか違和感を覚えて、このバンドの進化の変遷の凄さを改めて感じた。

どの曲も思い出や生で聴いた時の情景を思い出してアツくなったけど、スケボーキングとの「Episode4」は格別だったし、何よりも演奏している本人たちがめちゃくちゃ楽しそうで嬉しそうで最高だった。最近発売されたスケボーキングのニューアルバムでの「EPISODE7」もそうだけど、もう一度Episodeシリーズを聴ける世界線が存在していたことに感謝。

そして何よりも圧巻だったのはラストの「NEW ERA」。今の布陣、スタイルでの歴戦の名曲たちにも大満足だけど、その上で現在の最高到達地点を見せつけてきて最高だった。

祝われて、祝って、今までの歴史を振り返って、そしてこれからの姿を表明したライブは、まさに銀婚式にふさわしい一日だった。

これからも一生一番好きな音楽だろうな。

 

www.youtube.com

 

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『縁』小野寺史宜

この人の作品は全てツボに入ってしまう。

 

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『縁』小野寺史宜

人と人はつながっている。
たとえ、どこの誰だか知らなくても。
2019年本屋大賞第2位『ひと』の俊英、会心作!(Amazonより)

 

去年から著者の本を片っ端から読んでるけど、今作もドンピシャで好みだった。

第一章の主人公の透明度が高くて、素朴で心が広い感じは、著者の作品の大事な要素である「川」と「河川敷」のイメージにピッタリ。

また、人物の嫌な感じが絶妙すぎて読んででイラッとするけど、次の章でその人の反対側からの面も見せられて、どこからどんなふうに捉えるかでひとの印象って変わるよなってつくづく思わせてくれた。誤解だったとまでは言わないけど、分かり合えるというか多少は納得できる余地もあるというか。特に「塵」と「針」の春日真波。

各短編の緩い繋がり方も面白く、タイトルの意味もしっかり感じさせてくれる終わり方で大満足。「縁」が「へり」と「ゆかり」、どちらの意味もあるってところもグッとくるポイントだった。

 

 

 

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『犬猿』

クリーンヒットしまくった。

 

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犬猿

「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔が4年ぶりにオリジナル脚本でメガホンをとり、見た目も性格も正反対な兄弟と姉妹を主人公に描いた人間ドラマ。印刷会社の営業マンとして働く真面目な青年・金山和成は、乱暴でトラブルばかり起こす兄・卓司の存在を恐れていた。そんな和成に思いを寄せる幾野由利亜は、容姿は悪いが仕事ができ、家業の印刷工場をテキパキと切り盛りしている。一方、由利亜の妹・真子は美人だけど要領が悪く、印刷工場を手伝いながら芸能活動に励んでいる。そんな相性の悪い2組の兄弟姉妹が、それまで互いに対して抱えてきた複雑な感情をついに爆発させ……。和成役を「東京喰種 トーキョーグール」の窪田正孝、卓司役を「百円の恋」の新井浩文、由利亜役をお笑いコンビ「ニッチェ」の江上敬子、真子役を「闇金ウシジマくん Part3」の筧美和子がそれぞれ演じる。(映画.comより)

 

同じ監督の『空白』を観て面白かったことを友人に話したら、こっちも薦められて。

新井浩文好きだから、昔ちょっとだけ観てたんだけど、その時は冒頭のどんどん破滅に向かっていきそうな流れがなんとなく気分に合わなくて、15分ぐらいでやめてしまっていた。

改めて観てみたら喰らいすぎた。途中で「これはダメだわ…」って思うくらい。

この感情は同性の兄弟や姉妹がいる人は特に抱くはず。疎ましかったり見下している部分もあるんだけど、それと同じくらい憧れや尊敬している部分が普段は認めたくないけど存在する。身内として自虐的に面白おかしく話す分にはいいんだけど、他人から言われるとちょっとイラッとして思わず否定してしまう非合理性も含んでいて。

そして四人の演技が素晴らしかった。新井浩文とニッチェ江上が疎まれる感じになるんだろうなと思ったら、それぞれに光と闇の部分があって、それがコロコロ変化していく感じがずっと飽きさせずにのめり込ませてくれる。初めてニッチェ江上の演技見たけど良かったし、「新井浩文はいいけど、窪田正孝か〜」って思っていたけど、闇落ちした時の目に光がなくてイヤーな感じもハマっていた。死んだ目兄弟として完璧。

暴力も暴言もふるうけど見捨てきれない部分の移り変わりが終盤までしっかり味わえて感動もするのに、最後の最後にあの睨み合いで終わる感じが「兄弟」をめちゃくちゃ表していて最高だった。

観る前にあらすじ調べたら「コメディ」って書いてあって違和感あったけど、理屈じゃない関係性を含めまさにその通りだった。

すごく心に残る作品になったし、願わくば新井浩文の作品をこれからも観たい。