久しぶりの中山七里面白くて一気読み。
『ワルツを踊ろう』中山七里
20年ぶりに帰郷した了衛を迎えたのは、閉鎖的な村人たちの好奇の目だった。愛するワルツの名曲“美しく青きドナウ”を通じ、荒廃した村を立て直そうとするが、了衛の身辺で、不審な出来事が起こりはじめ…。(Amazonより)
中山七里作品の主な要素である医療・法律・音楽ではなく、猟奇さや陰鬱した人格、狭い閉鎖的な世界観を純粋に楽しめる小説でした。舞台としてはずっと天候は曇り。
読み始めから感じる、現実の世界の話だし自分も田舎に住んでいるのに、異世界の話と錯覚するような鬱屈した空気感。
田舎生活のネガティブな側面がこれでもかと強調されて表されているけど決して間違いではないんだと思う。
常に油断や慢心を抱いている浅はかな主人公が世紀の発明のように自分の思いつきに過信し、見事にそれが失敗することの繰り返し。ただしそれも全て能見が心配しているように見せかけて煽ってるのが読み取れて薄気味悪い。
そして中盤以降の主人公がどんどん崩壊していく小気味良さ。これぞ中山七里。
終盤の殺害シーンでも、細かくクラシック曲の説明描写を入れるから、ヒートアップせずにある種冷静になりつつ読めて、更に残虐性や冷酷さを感じられる。
主人公が全てを完遂したあとに「捕まりたくない」という感情を持っていたことが意外だった。そこも既にぶっ壊れてるものだと。
ラストのオチで作者の別作『ヒートアップ』の要素も関わっていたことがファンとしてはテンション上がった。
知識や教養部分だけではない作者の魅力をこれでもかと味わえるのでオススメです。