『学問』山田詠美

新感覚でした。

 

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『学問』山田詠美

東京から引っ越してきた仁美、リーダー格で人気者の心太、食いしん坊な無量、眠るのが生き甲斐の千穂。4人は友情とも恋愛ともつかない、特別な絆で結ばれていた。一歩一歩、大人の世界に近づく彼らの毎日を彩る生と性の輝き。そして訪れる、それぞれの人生の終わり。高度成長期の海辺の街を舞台に4人が過ごしたかけがえのない時間を、この上なく官能的な言葉で紡ぐ、渾身の長編。

 

今まで読んできた思春期の性に関する物語といえば、男子が主人公だったことが多いけど、今作は女子からの視点。

しかも、思春期の一瞬を切り取るんではなくて、誰しもが思い当たる節があるような、恥ずかしくなるような、幼少期の無意識の性への目覚め・興味から描かれており、純粋なる欲望と他人への恋愛感情がどのように区別・交錯していくかということが、少女の学び・成長とともに味わうことができる。

それだけではなく、随所に「死」を連想させるエピソード・表現が盛り込まれており、生と死・性と死との密接な関係が表されている。

あと個人的には、「一見は百聞にしかず」と言う先生の言葉から心太が「自分がみじめだと思うことから抜け出せた」っていうエピソードが、本を読むことが好きな側からしたら、なんとも救いがある話だなと感じた。

 

 

学問 (新潮文庫)

学問 (新潮文庫)