2019年読書ベスト
毎年恒例のやつです。
今年は現時点で96冊。
あまり感想を書き留めてなかったから文章は少なめです。感想の文章量はオススメ度とは関係ありません。
作者につき一作で、16作品プラス番外編2作品。
『Iの悲劇』 米澤穂信
これぞ米澤穂信って感じの奇妙さ。
1章目から自分の意識の視覚外にある謎の真実に常にワクワクするし、主要人物3人のキャラクターも立っている。
ラストに向けて増していく悲劇感と、伏線を全て回収して真実が明かされる最終章のタイトルの「喜劇」っていう対比がなんとも面白い。
どこかおとぎ話めいた不可思議さはあるが、地方に住む共通点のある仕事をしている身からすれば、通ずる部分もありフィクションとは言い切れない薄気味悪さがクセになる。
『いけない』 道尾秀介
今年一番話題になった気がする作品。
噂には聞いていたので、第1章からソワソワ・ワクワクしながら読み始めて、第1章読み終えた時から衝撃と薄ら寒さがあって、「こういう感じで進んでいくのか…」っていう期待感とちゃんと理解したいっていう欲が高まっていく。
でも、各章ごとに明快なわかりやすい物語ではなくて、「あれ、こういうことでいいんだよな…?」「もしかして読みこぼした…?」っていう不安も募り始めてくる。その間も言いようのないおぞましさはどんどん積み重なっていくんだけども。
そして第3章途中からラストにかけての物語の収束の仕方が見事で、それだけでも満足感あるんだけど、「結局あれはどういうことだったの…?」「あそこで死んだのはあの人だと思ってたけど、違かったんだ…。結局誰だったの?」っていう疑問がどんどん湧いてきて。いい意味での消化不良感が残ってすぐ読み返したくなる。
その後、我慢できずにネタバレをネットで探したけどもそれでも掴みきれない部分もあって。読み終えたばかりのラストのやり取りもよくよく考えたらとんでもないこと言ってんじゃないか、読み取り方次第だったらまったく逆の意味では?と、どんどん不安か増すばかりで、言いようのない怖さが募ってく。
読み終えてからもこんなに怖さが増幅される作品に出会ったのが初めてだし、こんなに自問自答しながら読む経験も初めてで、結構いろんな意味でトラウマになる作品だった。
『99の羊と20000の殺人』 植田文博
マイマスター知念実希人が絶賛していたので。なんでこんな最高な作品が文庫化されるまであまり知られていなかったんだろう。
どんどん増える情報量と場面、相まって加速していく展開、脳をフル回転して
夢中に楽しませてくれた。たくさんの文化背景や知識が絡み合っていて全く飽きがこない。
読む前には予想していなかった中々ハードな軸で、「うっ!」てなる部分もあったけど、それ含め最後まで息をつかせてくれなかった。
そのハードさにほぼスポットが当たってしまうけど、終盤では犯人の、そして主人公2人の、「他者への想い」を味わうことができる
ストーリー以外の主人公2人の背景がもっと知りたいので、この2人の物語を是非シリーズ化してほしい。
個人的には貴志祐介の『黒い家』と並ぶ背筋寒くなる系のオススメ作品です。
『明るい夜に出かけて』 佐藤多佳子
Creepy Nutsをきっかけに、ここ1年で中学生ぶりに深夜ラジオにハマってきた身としては、共感というか近くに感じる人たちの話だった。
アルコアンドピースのオールナイトニッポンなど現実世界とリンクする要素が織り込まれているから、主人公の生活のリアルさや孤独さに説得力がある。
偏見かもしれないけど深夜ラジオをタイムラグ少なく聴く人ってのは、なんらかたりなかったり、一種の救いや逃げ場を求めていたり、昼間の朗らかさとは違う多少の影を持っている人が多い気がする。少なからず傷を抱えて悩みを持ちつつ、その中でマジョリティではないけど共感できる仲間を見つけて徐々に繋がっていく様子は、一種の希望を見せてくれる。
深夜ラジオだけでなく、「歌い手」など少し前の時代の要素が入っていて、老若男女誰でも楽しめる作品に仕上がっている。
そしてこの作者の陸上や落語、ラジオといった自身が好きであるものを物語に昇華できる力はものすごいと思う。
また何より青春小説としてタイトルがいいし、違うかもしれないけど『夜のピクニック』と通ずる部分があると思う。
『スイート・マイホーム』 神津凛子
帯の名だたる作家たちからのおぞましさの賞賛でだいぶハードル上がったけど、かなり楽しませてもらった。
地元もそうだけどやっぱり豪雪地帯とか寒冷地って冬は常に曇っているような陰鬱とした印象があって、この物語も常にそんな雰囲気を纏いながら進んでいく。ストーリー自体は読み易いんだけど、ページが進むにつれて不安や焦燥感が増していって、最後の盛り上がりへの期待が高まっていく。
あとホラー的な要素ばかりかと思ってたら、精神疾患に関する考え方など別な意味で心に残るところもあった。「完治がゴールなのではなくて、寛解状態で満足して周囲との調和を図っていく」っていうとこ。
第2章・第3章の盛込み方半端なくて色んな事実がわかって若干消化しきれなくなりそうになるけど、兄や甘利の真の姿に感銘を受けるしこの物語自体が「誰からの視点でモノゴト・ヒトを見るか」っていうところで良い具合に錯覚を起こしてくれる。第2章の最後は切なかったなー。
そして予想以上を打ち込まれた最後。そこまで求めてないよと顔しかめたくなるくらいで後味最悪で最高でした。
『ぼくは勉強ができない』 山田詠美
今年初めに読んだけど、年内にこれ以上の作品に出会えるか疑問なくらいに面白かった。
30代目前だからこそガンガン響いたとも思うし、高校時代に読んでこんな人たちに憧れたかった気もするし、もっと年取ってから媚びないまっすぐさに眩しくなりつつも読んでみたい気もする。
「あれ、これつまらないわけがない。」と確信させてくれる冒頭で、20年以上前に書かれた高校生の物語とは思えないくらいに今の自分にも当てはまったり、変えてみようと思わせてくれたり、見て見ぬ振りしていたダサいところに光当ててくれたり、とにかく折り目つけるページの数が多かった。
高校生が主人公であっても、あくまでひとりの人間として何を大事にして生きるかっていうことを全ての章で教えてくれて、こういう人たちを「カッコイイ」っていうんだろうなって思う。
心に残ることが多すぎて紹介しきれないけど、自分の価値観だけで否定せずに色んな考えを想像すること、多勢に無闇に迎合せずに拠り所を貫くこと、矛盾してるかもしれないけどそういうことが大事だよなって改めて考えさせてくれる。
何度読んでも新たな発見や感じ方ができる気しかしないので常に一生近くに置いておきます。
『みかづき』 森絵都
ちょうどドラマ化もしてたけど、大河か朝ドラレベルでじっくり映像見たい作品。
600Pと最近読んだ中ではボリュームあったけど、そんなこと気にならないくらい、むしろ途中からもっと読みたくなるくらい、終わり来ないで欲しくなるくらい楽しめた。
名言や名シーンがあるというよりは、作品全体を通して戦後から現代に到るまで、学校社会とは違う現場で日本の教育に真剣に向き合ってきた人たちの世界が丁寧に描かれていて、どっぷり浸かることができる。
そして本当に大切な必要な教育とは何かということを、何度も何度も立ち返りながら反芻しながら考える機会を与えてくれる。少数の支配者と多数の最低限度の能力を持った駒を作る教育という考え方が、今の日本の状況と乖離していない気がして空恐ろしくなる。
激動の中を生き抜いてるけど、登場人物ひとりひとりは心優しく、こども・家族のことを真摯に想い抜いている姿も魅力的。
中高生から大人まで様々な時代の教育の現場の当事者としていろんな人が楽しめる作品だと思う。
ラスト前の一文を読んだ時、風呂場で歓声をあげてしまった。
『わたしたち、何者にもなれなかった』 瀬那和章
タイトルのまんまだけど、朝井リョウの『何者』の10年後という感じ。
青春時代にひとつのことに没頭しようとし夢や憧れを持っていた人たちが、あることをきっかけに夢は終わり、夢敗れた悲壮さをかつての友人の所為にしてなんとか折り合いをつけ、現実に立ち向かっていく中で、その友人との思わぬ邂逅の機会を機にどう自分自身らと決着をつけていくか。
自身の人生や生活の一因を他者のせいにするのは楽だけど、やっぱり拭いきれない澱みたいなものもあって。許せるわけはないし、でも憧れや畏怖を感じていたのは消えない事実だし、登場人物らが高校・大学時代を回顧しながら少しずつ正直に恥と感じている部分を見せ合い始めるところが印象的。
でも他者に影響を与えすぎる強烈な個性を持ったかつての友人は信念がブレておらず、それぞれの想いが交錯するシーンは読み応えがある。
ラストも少し意外で、大団円ではなくほろ苦くも想いが伝わって終わる感じがすごい好き。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ
当時、噂になってたので購入。そしてノンフィクション本大賞取ってた。
もっと作者と息子のパーソナルな問題かなと思ってたけど、その2人を介して周囲や果ては世界まで繋がる現代の社会問題に広がっていく物語だった。
率直に、こんなに気づきのきっかけがある親子関係・周囲との人間関係・住環境っていろんな意味で貴重だし素晴らしいなと。
年を経ていくと、改めて問われたら意識するような倫理や問題について、日常生活の煩雑さなどで理由で意識が希薄になっていく気がする。けど作者は息子や日本とは異なる地での暮らしというきっかけによって、いつもリマインドされているような感じ。
個人的にもこういう気づきや意識を改める機会を日常生活に持つことって大切だと思う。
また大きな世界ではなく、基本はあくまで作者が暮らすリアルな小さな世界で出会う問題として表出しているから、現実感を持って考えやすい。
当たり前だけど忘れやすい・見落としがちな大切なことを考えるきっかけがたくさんこの本には散りばめられている。
淡々としながらも豊かな感受性を持って成長していく姿が、フィクションではあるけれども、『東京バンドワゴン』(小路幸也)の「研人」に重なる部分があった。
ひとにおすすめ聞かれた時に推薦したい一冊。
『どうしても生きてる』 朝井リョウ
朝井リョウはどんどん進化している。
ほとんどの作品を読んでいるけど、生々しさがどんどん増している。
5つの編からなる短編集で、第2章は言わずもがな Creepy Nutsとの関わりが影響しているだろうし、彼らの名曲『未来予想図』とリンクしているようにも感じる。
各編それぞれで現実や生活に悩みを抱えている人たちの葛藤や絶望が描かれていて、その苦しさの中でもなんとかかんとか踏ん張って生き抜いていくしかない姿が心に残る。
『桐島、部活やめるってよ』や『何者』のような青春時代のほろ苦さを経て、作者とともに作品の中身が大人の悩みや苦悩に変化し、モラトリアムにはもう戻れないけど絶望ばかりでもない、現実に対峙する生活者の物語がこの作者の真骨頂なんだなって思う。
「不安で不安でたまらないまま、大丈夫になるまでどうせ生きるしかない。」
『ライオンのおやつ』 小川糸
小川糸は裏切らない。
個人的に近年はターミナルケアや看取りの医療の物語を多く読んでいるけど、これも素晴らしかった。
瀬戸内の島のホスピスでのストーリー。穏やかで丁寧な暮らしの中で、人生の最後に食べたい「おやつ」を通してそれぞれの人生や死と直面している恐怖が浮かび上がってくる。
全てに区切りや見切りをつけたと思っていても、本人も周りもやはり断ち切りきれない絆や繋がりや心残りがあって、残された季節を通して最期の瞬間までに人生を清算していく。
真骨頂である丁寧な暮らしの様子や食事の描写、装丁含めずっと手元に置いておきたいあたたかさなど、やはりこの作者は最高です。
『今はちょっと、ついてないだけ』 伊吹有喜
昔目にした意見で、”本には読むタイミングがある”ってのがあって、まさにそれ。この本は当時の自分がちょうど読むべき本だった。
希望だけではない、100%の晴れやかな気持ちになるわけではないけど、弱くてもかすかでも少しの光明と一緒に歩く仲間がいれば、とりあえず幸せなんだなって思わせてくれる。
再チャレンジやシェアハウスなど自分の実体験と被る部分もあり、共感と憧れの気持ちが出たし、これからの30〜40代に対して不安もあるけどもっと楽しくなると期待させてくれる。
特に最終章のこの文が心に残る。
「どこへ行くのだろう。行き先はわからないけれど、今、ここにいる。そして願えばきっと、どこにでも行ける。」
あと本全体を通してリフレインされるタイトルに込められた力がものすごい。
この本を読んで実感したけど、年取れば取るだけ嫌でも失敗・成功どちらも経験が増えるから、物語を読んだ時の染み込み方がどんどん良くなってきてる気がして、そこも死ぬまで楽しみたい。
『今夜、すべてのバーで』 中島らも
名前しか知らなかった人。
あらすじを読んでるとエッセイ要素が強いのかなと思ったら、しっかり読ませてくれる物語で、起承転結がわかりやすかった。
膨大な調査に基づいているんだろうけど、作者の実体験も入っているだろう症状やフラッシュバックや酒に対する溺れ方の描写がリアルで、ブラックアウトしょっちゅう起こす身としてはしっかり恐怖感もらった。
1994年発行だけど文章も今読んでも全然違和感なく、文や会話のリズムが良くてスラスラ入ってくるし、心に残る部分や感心する部分が多い。
「時代や国が変われば、依存するモノが変わってくる」的な部分がタイムリーだなと文章の普遍性ってすごいと思った。『”依存”ってのは人間そのもの』。
あと「年寄りは若者のためにあえて無知なふりをしている」という部分も、若者半分卒業した年齢だから共感するし、老害にならないように必要なことなんだよなと感じた。
他にも本筋とは関係ないけど、3Dプリンタの概念が出てきてて、科学の進歩すごい。
最後に福祉・医療分野の専門的なアプローチが描かれていて、こういう文章って割と冷めることが多いんだけど、担当分野でもあるからってのもあるけどしっかり読んで楽しめた。
自分も何割かはアルコール依存症予備軍だと思うし、親父はアル中からの10年ぐらい断酒中なので身に滲みまくりだった。アルコールに限らず依存症ってのは綺麗に終結を迎えることはなくて、何回も何回も反復しながら戻りながら、個人ではなく家族やチームで取り組んでいかなければならないことなんだなって学べたし、もう少し年取ってからまた読み返したら受け取り方も恐怖感も違いそう。
タイトルの意味がラストにわかるんだけど、オシャレすぎる。
『きみの鳥はうたえる』 佐藤泰志
映画が好きだったので。
郊外の街で少し廃れた生活を日々繰り返す若者の、希望や未来とはかけ離れているけど、毎日を自分たちの理論で生きていく姿が印象的な青春小説。
何か感動的な出来事や大きな事件が起きるわけじゃない。淡々と暮らしているようだけど何か引っかかるものや痛みを抱えていて、若者特有の、若者にしか許されない長くは続けられない貴重な人生の一瞬が描かれている。
決して肌触りは良くないザラついた空気感みたいなものが残る。
さくっと読めるので、青春を過ぎてしまった人たちにこそオススメです。
『男ともだち』 千早茜
初めて読む作家だったし、直木賞候補作品だったことも知らなかった。その前に読み始めた本があまりノッてこなくて、書店でオススメされてたので購入。
冒頭から文章が頭に入って来やすい。わかりやすい平易な文章だからというよりは、舞台年齢がドンズバで、感情や状況に理解しやすかったんだと思う。
自分には圧倒的に不足している経験・感情ではあるけれども、誰かと一緒にいること・いながらも他者を求めてしまうことなど、他者からの理解の範疇かではなく、極主観的な視点で味わうことができた。
解説曰く屑な人間性ではあるけれども、青年・壮年期の男は誰しもが「ハセオ」に憧れを持ってしまうのではないか。
また、こんなはずではなかった、もっと違う「何者」への憧れと劣等感や苛立ちなど、負の側面含めて自身に染み込んでいく部分があった。
『勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~』 夏川草介
マイマスター夏川草介の新作。
舞台は『神様のカルテ』と同じ長野県松本。でもこちらは更に郊外であり、高齢者医療の現実を描いている。
そして今回は視点が主人公の医師・桂だけでなく、ヒロインの看護師・美琴の目線で紡がれているエピソードもあり、医師と患者という対極的な関係性だけではなく、看護師という半歩横からの、ある種第三者的な考え方で「医療」について訴えている場面もあり新鮮だった。
『神様のカルテ』では地域医療が主題だった気がするけど、今作は更に食い込んだ「高齢者医療」という、これから少子高齢化が加速していく日本が必ず避けて通れない問題について、悩みながらも真摯に向き合う主人公たちが読んでいて心に残る。
「奇跡も感動も起きない」死、「溢れかえった高齢者を支えきれなくなっている」、「山のような高齢者の重みに耐えかねて悲鳴を上げている」など、決して特別に過疎化しているか起きている問題ではなく、大都市以外では日本中どこでも起こり得る問題で、そこにどう立ち向かっていくかということを丁寧に描写している。
そこには単に「できる限り治療を行う」か「看取る」という選択肢だけではなく、「駆けつけてくれる家族につなぐため」という、どういった形で本人や家族に最期を迎えさせるかを優先した、どう「死」と向き合わせるかということを重視した答えも投げかけている。
一番大切なことは、患者が、家族が、医療側が、ひとりの生と死に対してとことん「悩むこと」だって気づかせてくれた。その結果が「たとえ命を延ばせなくても、人間にはまだできることがある。」ってことに繋がるんじゃないかと。
絶大なスキルや感動的な最期ではなく、変わらずに命と医療に真正面から真摯に向き合う丁寧な物語に心が打たれた。
あとやっぱり「九兵衛」が出てきて彼の影を感じると嬉しいものがあるし、早く2人が出会ってくれないか、出会ってからのストーリーを読ませてくれないかとワクワクしてしまう。
※番外編(シリーズものと海外作品)
『高校事変I〜IV』 松岡圭祐
今年のエンタメ性ナンバーワン。
何も考えずにこの世界観に没頭してほしい。最高のスピード感と爽快感が待っている。
一言で言えば、「悪魔の遺伝子を受け継いた女子高生が敵を殺しまくる」。
それだけなんだけど、舞台を生かした戦い方や日常生活での工夫など嫌が応にも読んでてテンションが上がる要素が満載。
そしてシリーズを経るごとに、良くも悪くもフラットだった主人公の人間らしさのブレみたいなのが大きくなっていって、人としての成長も感じることができる。
そして事件の内容や敵が現実世界とリンクしている部分もあって面白い。
発行ペースが二ヶ月に一度くらいとめちゃくちゃ早いので、常に楽しみに待っている。
『エレベーター』 ジェイソン・レナルズ
海外の作品はほとんど読まないんだけど、話題だったことと表紙がかっこよすぎて購入。
大筋としては、兄を殺されて復讐を誓う主人公っていうよくある感じではあるんだけどど、アパートの部屋の玄関を飛び出し、エレベーターに乗ったら、死んだはずのかつての知り合いたちが乗ってきて、殺人や死、恨みに対して悩み始める。Based on a true story.って感じなのかな?
エレベーターが下るたび、会えるはずがない人たちが乗ってくるたびに、思考は複雑化し、復讐の螺旋が終わらないことに気づき始めるってところがスピード感がよくてのめり込む。
また、詩のような文章と字の配置のリズムが良くて、スイスイ頭に入ってくる。
最後のページの問いかけは、何らかの負の感情を持っている時には突き刺さる。
時間も空間も超えたエレベーターという精神と時の部屋で主人公は成長しきっと真理に気付くんだと思う。
って感じでした。
来年はもっと冊数絞って小説以外でも読みたい本をじっくり深読していきます。