やっぱり台湾てなんか惹かれる。
『流』東山彰良
1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能が、はじめて己の血を解き放つ!友情と初恋。流浪と決断。圧倒的物語。(Amazonより)
個人的に海外が舞台の作品を読むのに苦手意識があって、名前とかの固有名詞を一度変換しなければいけないというか、馴染むまでに時間がかかるというか。
この作品も読み初めはそんな感じだったけど、漢字を聴覚ではなく視覚的に捉えると楽に読み進められるようになった。
自分が生まれる少し前の台湾。行ったこともないし詳しくもないけど、どこか更に一昔前の日本のようなイメージがあって、いい意味でも悪い意味でも体温が高く熱量が多い印象。すべての距離感がぐっと近いような。
分類すればこの作品はミステリーかもしれないけど、言わずもがな、それよりも少年が青年になる過程を描いた、カッコ良さも悪さもひっくるめた、ひりつくような青春時代が面白さの中心にある。
国籍も人種も立場も時代も違うのに、共感してしまう部分が多々あるように思ってしまうのはなぜなのか、その不思議さは最後の一行に凝縮されていた。
読後感としては金城一紀の『GO』と同じ感じかも。
経験したことはないし想像でしかないけれど、第二次世界大戦後の、正義も悪も視点一つで切り替わり、抗えきれない大きな流れの中で、みんながただ生きるのに必死だった時代の焦げ付くような熱さを体感してほしい。
「あのころ、女の子のために駆けずりまわるのは、わたしたちの誇りだった。」