『路(ルウ)』吉田修一

どんどん台湾の魅力が高まっていく。

 

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『路(ルウ)』吉田修一

ホテルの前でエリックからメモを渡された。彼の電話番号だった。「国番号も書いてあるから」とエリックは言った。すぐに春香も自分の電話番号を渡そうと思った。しかしエリックが、「電話、待ってる」と言う。「電話を待っている」と言われたはずなのに、春香の耳には「信じてる」と聞こえた。春香は自分の番号を渡さなかった。信じている、あなたを、運命を、思いを、力を―。商社員、湾生の老人、建築家、車輛工場員…台湾新幹線をめぐる日台の人々のあたたかな絆を描いた渾身の感動長篇。(Amazonより)

 

この前、台湾を舞台にした東山彰良の『流』を読んだばかりで、そこで知った台湾の雰囲気や日本との関係について、次の世代の感覚を知ったような気分。

 

最初は年齢も国も状況も異なるように思えた人たちが、「鉄道」という軸に遠ざかったり近づいたりしながら各々の人生を過ごしていき、台湾新幹線の開業が近づくとともにそれぞれの通ってきた道が交差していく。

その交ざり方がわざとらしかったり仰々しいものではなく、あくまで人と人との縁によって繋がっていき、それぞれの成長や変化の様子もじんわりと心温まる物語となっている。

 

俺は台湾に行ったことないし、例えば千と千尋のイメージだったり、親日国とかってことしか知らないけど、なぜ親日国なのか、どのような歴史や背景となって、台湾という国が生まれたのかを知ると、もっとこの作品の面白さが増すし、知ろうとするきっかけになった。

 

またそのような国の変遷だけではなく、街の様子、食、建物やそこで暮らす人々の人柄についてもグッと惹きつけられる描写がたくさんあり、実際に行ってみたいという気持ちが読んでいてどんどん高まっていく。

 

それぞれが周囲を思いやり、現在や過去の清算をしながら、各々の幸せのかたちを見つけていく最後に喜びを感じるとともに、最後の車内のシーンの人生は知らぬところで影響しあい繋がっていくんだなってことを実感するラストだった。

 

激しめで起伏が多い作者の物語も好きだけど、今作や『横道世之介』のような日常のあたたかさを描いた作品も大好きです。

 

 

 

路 (文春文庫)

路 (文春文庫)

 

 

 

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