『フライ,ダディ,フライ』金城一紀

羨ましさと興奮。

 

f:id:sunmontoc:20210116112210j:plain

フライ,ダディ,フライ金城一紀

私の夢―。娘の幸せ。何よりも。私の命よりも。自分には殊更なことは望んではいない。定年退職後に釣りでもおぼえ、可愛い孫たちに囲まれながら安穏な余生を過ごせれば、それでいい。あとは、妻とのんびりイタリア旅行にでも行ければ。妻に、ローマを見せてやりたいのだ。私は妻と娘を愛している。可もなく不可もない人生の道程で、妻と娘の存在だけが私の誇りであり、守るべき宝なのだ。人事の家族調査欄に妻と娘のことを記す時の至福。その至福を乱し、汚す者は許さない。そう、私は家族を守るためなら生命の危険も厭わない四十七歳のサラリーマン、のはずだった。そう信じていた。あの日が訪れるまでは―。いまから私が話そうと思っているのは、私のひと夏の冒険譚だ。(Amazonより)

 

 

最近ゾンビーズシリーズばっか読んでたら、改めて読み返したくなり久しぶりに。

 

冒頭の語り口調からの幕開けが『GO』と同じでワクワクさせる。

 

このシリーズの醍醐味である、『日常→自分への絶望→鍛錬→現実離れした解決』の流れが最高すぎて、もはや暴れん坊将軍とか水戸黄門のような黄金パターンを体験しているようだった。

 

そして何が魅力かと言うと、ラストの解決はめちゃくちゃ派手で、アホだなーと笑わせてくれるような展開なのに、そこに至るまでの鍛錬の部分は、えらく地味で地に足が付いているところ。

 

そのギャップがいいし、言い方悪いけど中年サラリーマンという弱者が少しずつ若者に感化され心身ともに生まれ変わっていくのは高揚するし、昔読んだ時には感じなかった中年の立場としての共感が増していて、同じ作品でも読む年齢によって捉え方は変わってくるなと実感。

 

池袋ウエストゲートパーク』とはまた違う、高校生だからこそできるトラブルシューター(メーカー)感は爽快で、限られた時間である思春期にこんなことしてみたかったなという憧れと良い悔しさを感じさせてくれる。

 

映画も久しぶりに観てみようかな。

 

 

フライ,ダディ,フライ (角川文庫)

フライ,ダディ,フライ (角川文庫)

  • 作者:金城 一紀
  • 発売日: 2009/04/25
  • メディア: 文庫
 
フライ,ダディ,フライ

フライ,ダディ,フライ

  • 発売日: 2020/09/01
  • メディア: Prime Video
 

 

 

sunmontoc.hatenablog.com

sunmontoc.hatenablog.com