『本屋さんのダイアナ』柚木麻子

子供も大人にも深く残る素晴らしい作品。

 

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本屋さんのダイアナ』柚木麻子

私の呪いを解けるのは、私だけ。「大穴」という名前、金色に染められたパサパサの髪、行方知れずの父親。自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と同級生の彩子だけが光を与えてくれた。正反対の二人は、一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に―。少女から大人への輝ける瞬間。強さと切なさを紡ぐ長編小説。(Amazonより)

 

正反対に見られるし見ている鏡のような二人が、近づき離れてまた繋がるまでの物語。

出会いの頃も、距離が遠くなったときも、二人は常に惹かれ合っていて、それは光であるとともに時には影となって自身を覆ってくる。自分には持ち合わせていないものを羨む劣等感や僻み、そういう清濁併せた感情を持ち続けて十年間疎遠でもお互いが心から居なくなることはなかった。

互いの語りが交互にあり、対照的な話のトーンが、その時のそれぞれの足りていないものを表し補完しあっているようにも感じられ、早く二人の再会が読みたくなり、もどかしい気持ちになる。

また、明るくないけど様々な児童文学・少女文学や作家名が出てきて、ストーリーにもリンクしてくるので、読書をする上での教養の素地みたいなものの大切さも実感する。こういうのがわかったほうが更に面白さ増すんだろうな。

十年間ぶりの再会という劇的さはあるものの、それまでの二人が経験する中高大学時代の経験は、良くも悪くも思春期ならではの純粋さや刹那さや幼稚さ、その当時でしかわからない感情の揺れ動き方や他人からの影響のされ方が表現されていて、読み手の現実ともしっかり繋がってくる。

友情の尊さも、自立の本質も、本の素晴らしさも、この本を読むだけでたくさんのことを気づき感じられる。

一生本棚に置いておこう。

 

 

 

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

 

 

 

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