読み応え満パン。
『熱源』川越宗一
故郷を奪われ、生き方を変えられた。それでもアイヌがアイヌとして生きているうちに、やりとげなければならないことがある。北海道のさらに北に浮かぶ島、樺太(サハリン)。人を拒むような極寒の地で、時代に翻弄されながら、それでも生きていくための「熱」を追い求める人々がいた。明治維新後、樺太のアイヌに何が起こっていたのか。見たことのない感情に心を揺り動かされる、圧巻の歴史小説。(Amazonより)
ずっと気になってたけど読めてなかったやつ。
そこに根付く人たちの誇りと歴史に翻弄されていく苦悩。儚さを感じつつも何度挫折しても心に灯る熱を種火に生き続けていく強さ。もちろんフィクションであることは前提だけど、日本人として知っておくべき史実と物語だと思う。そしてそれは単に日本という国だけではなく、ロシアやポーランドという物語の舞台としては馴染みが薄かった東欧諸国が関わっていて、世界の複雑な関係も知ることができる。
滅びゆく運命があったとしても、他国に翻弄されたとしても、その土地には進行系で生きている「人」がただそこにはいるという揺るぎない事実が存在しており、その関係性や時代を縦断した繋がり方が熱源を生んでいく。
各人物の登場の仕方が同時多発的であったり、気づいたら舞台から居なくなっていたりして、時代のうねりは感じるけど、読み終わった後には約百年間のひとつの時代の熱量に心が満たされる。
台湾を舞台にした『流』『路』『魯肉飯のさえずり』といい、最近は知らなかった土地の変遷や歴史に惹かれる傾向が出てきて、海外の小説もいろいろ読んでいきたい。