『スモールワールズ』一穂ミチ

新たな世界と出会えた気がする。

 

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『スモールワールズ』一穂ミチ

夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。(Amazonより)

 

読み始めたときは、せつなさとあたたかさが混ざった感じの短編集かなと思ってたけど、「ピクニック」の最後3ページを読んだ時瞬間に印象がガラリと変わる。それまでのジンワリ感も相まって背筋凍るような寒気を感じた。この本はそんな生易しいものじゃないなと。

そのあとの「花うた」や「愛を適量」もわかりやすさや、大多数が期待しているような結末ではなく、幸でも不幸でも、しっかりそこの登場人物たちの人生を描ききっている印象だった。

人の生活や人生なんてのは喜劇や悲劇に割り切れるものではないし、色々な清濁併せた経験や感情の層を積み重ねて、最終的に誰がどこから観るかで変わっていくんだなってって思わせてくれる、今まであまり経験したことのない面白さがクセになる。