『おまえなんかに会いたくない』乾ルカ

読み終わってもずっと心に残るものがある。

 

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『おまえなんかに会いたくない』乾ルカ

北海道道立白麗高校・第二十七期卒業生3年6組の元クラスメートたちに、校庭に埋めたタイムカプセルの開封を兼ねて同窓会を開催するはがきが届いた。同窓会SNSも立ち上がり、10年前の高校生活を懐かしみながら盛り上がていく彼ら。しかし、ある日、「岸本李矢という子を覚えていますか」という書き込みが……。爆弾ともいえる書き込みに、ある事実が明らかになっていく。それぞれの思いで苦悩する登場人物たち。新型感染症で変わっていく世界の中、同窓会は近づいていた……。高校時代の「いじめ」に対して、関わった人々の心の移ろいと葛藤を描いたリアルな青春群像劇。(Amazonより)

 

この物語は自分に近い世代のいじめの物語であって、かつすべての人に問いかける普遍性を持ち合わせている。

意識したことないとは言わないし、自戒の意味も込めてだけど、『ヒエラルキー』って単語の短絡さというか浅はかさって本当に嫌になる。だからこそ大抵の読者は、三井みたいな『ヒエラルキーエラー』に憧れるんだと思う。

高校生に限った話ではないけど、全く間違いを犯さない人なんていないし、どの視点から見るかで人の行動なんて受け取り方が違ってきて、仲が良かったり嫌いじゃなくても多少の煩わしさは誰にでも存在すると思う。だけれど決して忘れちゃいけないのは、いじめには絶対的な善悪構造があって、当事者がいつまで、どれほどの想いでそれを引きずって生きていくかというのは、本人以外には断定する権利が全くないということ。

「それぞれ大変な思いをした」なんて、丸く収める気はサラサラないんだろうけど、最後の最後まで、むしろ読者のこれからの生活を通しても、モヤモヤとした逃れてはいけない問題を投げかけてくる傑作だった。