人生のバイブルをもう一度。
『ナナメの夕暮れ』若林正恭
オードリー若林の6年間の集大成エッセイ
「おじさん」になって世界を肯定できるようになるまで
書き下ろし17,000字!「明日のナナメの夕暮れ」収録
恥ずかしくてスタバで「グランデ」を頼めない。ゴルフに興じるおっさんはクソだ!――そんな風に世の中を常に”ナナメ”に見てきた著者にも、四十を前にしてついに変化が。体力の衰えを自覚し、没頭できる趣味や気の合う仲間との出会いを経て、いかにして世界を肯定できるようになったか。「人見知り芸人」の集大成エッセイ。解説・朝井リョウ(Amazonより)
単行本で読んだ3年前から、ラジオでエッセイでテレビでずっと追いかけて、もはや自分の中ではDragon AshのKjと同じほど10コ上のヒーローになった著者の文庫版。
「明日のたりないふたり」後のあとがきも読みたくて改めて購入。思えば同じ作品を読み返すことって自分はほぼなくて、これと『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』と金城一紀の『GO』ぐらいかも。
その時代の著者に至るまでを切り取ったエッセイだから、もちろん今の著者自身とは違っていて、でもその分自身の年齢も進んでいて、昔読んだ時とは別のエピソードや言葉が響いてきた。
自分の意見は殺さなくてもいいということだ。
自分の正直な意見は、使う当ての無いコンドームのように財布にそっと忍ばせておけばいい。それは、いつかここぞという時に、行動を大胆にしてくれる。
エネルギーを"上"に向けられなくなったら終わりではない。
"正面"に向ける方が、全然奥が深いかもしれないと思えた。
ほかにも「まえけんさん」や「おっさんはホスト」など、おっさんになったからこそ気付いたりグッとくるものがあった。前読んだ時にも衝撃を受けた「キューバへ」の鮮明な素晴らしさは言わずもがなだけど。
そして新たに加えられたあとがき。
やっぱり著者はこの当時からは間違いなく変化中であり、全てが今の自身に当てはまるものでもないし、過去の言動や行動、思考が全て今に活きているとはいえないのかもしれない。
でもそれでも過去の積み重ねや崩壊があったからこその今があり、そのことに著者が昔の自分自身に感謝していることが伝わってくる。
傷つき過ぎて、黒い部分が擦り減って両面が白になった石は君が俺に手渡してくれたものだよ。だから、ありがとう。
これまでの著者の道程をしっかり感じながら、今夜は一人でゆっくり「明日のたりないふたり特別版」を観ながら酒を飲もう。