『万事快調(オール・グリーンズ)』波木銅

若さゆえの青臭さと勢いを凝縮した最高のエンタメ。

 

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『万事快調(オール・グリーンズ)』波木銅

満場一致で第28回松本清張賞を受賞
時代の閉塞感も、小説のセオリーも、すべて蹴散らす、弱冠21歳の現役大学生による破格のデビュー作
このクソ田舎とおさらばするには金! とにかく金がいる! だったら大麻、育てちゃえ(学校の屋上で)。(Amazonより)

 

 

カンヅメだった研修中のつくばのキレイなTSUTAYAで、なんかいいのないかなと思ったら、異様に緑に輝くペーパーブックが。

 


茨城のどん詰まり。クソ田舎の底辺工業高校には噂がある。表向きは園芸同好会だが、その実態は犯罪クラブ。メンバーは3人の女子高生。彼女たちが育てるのは、植物は植物でも大麻だった!

 


帯のあらすじからしてメチャクチャで、でも権威ある賞の受賞と錚々たる人物たちからのコメントのアンバランスさも相まって即購入。

 


田舎の寂れた高校生たちの現状に対する不満とここから逃れたいという渇望と、それでも無視できないしがらみ。そしてそれらを一瞬にして置いてけぼりにしてしまうような狂った疾走感と黒いユーモア。

イタいところもダサいところもあるし、整合性がとれてなさそうなところもあるけど、それらを含め全て「若さ」という免罪符を縦にして押し切ってラストのゴールまで突っ走ってしまう怪作。

大好きな樋口毅宏の『さらば雑司ヶ谷』に通じる刹那性と生々しさとエゴに夢中になった。

 


もう一度ゆっくり読んでみたいけど、どうせまた勢いに任せて読んで、とてつもない最大瞬間風速の面白さしか残らないんだろう。