『キネマの神様 ディレクターズカット』原田マハ

作り手たちの素敵な往復書簡。

 

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『キネマの神様 ディレクターズカット』 原田マハ

『キネマの神様』映画化に際し山田洋次監督は自身の若き日を重ねて脚色。そのシナリオから著者が新たに生み出すもうひとつの物語。(Amazonより)

 

俺の初原田マハ作品は『キネマの神様』で、その素晴らしさに衝撃を受けたしめちゃくちゃ感動して、好きなものを好きでい続けることの大切さを教えてくれた。あと『ニューシネマパラダイス』を観るキッカケも。

その実写化が行われるとは知っていたけれど、どうやら原作と違ったストーリーになるっぽくて、自分にとって大事な作品が故に少し敬遠していた。

そうしてる間に、コロナが流行し、志村けんが亡くなり、どんどん状況は変化していった。

そしてついこの間、この作品の存在を知った。「キネマの神様の新装版かな?」と思ったら、

 

小説〈キネマの神様〉を原作とした映画〈キネマの神様〉を原作とした小説〈キネマの神様〉

 

と。ワケがわからなかった。

でもまえがきを読んでいくと、そこには作り手同士の心のこもったやりとりがあり、どんな経緯で実写化されたか、さらにノベライズされたか、理解することができたし変な誤解や偏見を持っていたなと気付かされた。

まだ映画を観ていないからあくまでノベライズを読んで上での感想になるけど(ややこしい)、共通する個性的なキャラクターを介して、別の角度から映画人に踏み込んだ新たな物語。そして家族への愛は薄まることなくしっかり伝えていて、授賞式のスピーチは感動が押し寄せてくる。

さらに映画版の物語を表現するだけではなく、コロナ禍や主役交代という類を見ない状況の中で、しっかり作品を作り上げた現実の映画関係者への尊敬と感謝に溢れている。

現実と虚構を行き来するような不思議な読書体験。まさにゴウが描いた〈キネマの神様〉の世界観のようだった。

 

 

 

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