『星を掬う』町田そのこ

最高だった。

 

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『星を掬う』町田そのこ

町田そのこ 2021年本屋大賞受賞後第1作目は、すれ違う母と娘の物語。
小学1年の時の夏休み、母と二人で旅をした。
その後、私は、母に捨てられた――。
ラジオ番組の賞金ほしさに、ある夏の思い出を投稿した千鶴。
それを聞いて連絡してきたのは、自分を捨てた母の「娘」だと名乗る恵真だった。
この後、母・聖子と再会し同居することになった千鶴だが、記憶と全く違う母の姿を見ることになって――。

(版元ドットコムより)

 

小説って、自分との共通点や共感できる部分を見つけるから面白さがグッと増す部分があると思う。

この作品については、その共感性みたいなものを感じることが少なかった。でもそれは悲しい別れや暴力なことを経験してたことがないってことで幸せなことだと思うし、その要素が少なかったとしても余りありすぎる面白さと魅力が詰まっている。

親の、子の、家族の犠牲になるのか、捧げるのか、投影するのか、束縛するのか、数限りない関係性があり、なにが正解でどれが不正解かなんて簡単に外側から判断できものであるはずがないし、当人たちにもわからないんだろう。

でもこの親子の関係性にはものすごく強いメッセージというか指針になるものが込められている。

「自分の手でやることを美徳だと思うな。寄り添いあうのを当然だと思うな。ひとにはそれぞれ人生がある。母だろうが親だろうが、子どもだろうが、侵しちゃいけないところがあるんだ」

「家族や親って言葉を鎖にしちゃだめだよ」

家族と適切な距離感を保ち、自分自身の尊厳を守り抜くこと。程度は低いけれど自分自身の戒めになるような言葉だった。

また、20年ぶりの再会という遠い距離感を徐々に埋めていく様子や、認知症という病気を介して唐突に本年で伝え合う描写が素晴らしかったし、悲喜どちらの意味でも揺さぶられるものがあった。

昨年の作品では個人的に『正欲』と『夜が明ける』が断トツだったけど、これも最高の物語だった。

 

 

 

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