『medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼

噂というかもはや面白いという評判しか届かなかったので遅ればせながら。

 

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『medium 霊媒探偵城塚翡翠相沢沙呼

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなくてはならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた―。(Amazonより)

 

まず冒頭の、終わりの始まりからスタートする感じ、個人的に好き。

霊媒・霊視」という非科学的な事象を科学的に論理的思考に昇華するという、今までに読んだことがない推理小説。読者への表現の仕方で犯人が提示されているというのはあったけど、推理側の人物たちが犯人がわかっていて、そこに向けてどう論理的な仮説を構築していくかという味わったことのない面白さ。

その分、少し多めの理屈っぽさが読み慣れなくて戸惑った部分はあるけれど、カッチリ結果に結びついたときの爽快感と、普段の翡翠のほのぼのした世慣れしていなエピソードが心地良い。香月と出会うまでの翡翠だけが超常的な力で知っていたい事実を科学的に説明できなくて、独りで背負っていた責任や苦しみは計り知れないものだったんだろうなと思わせる。

死者の世界と現実世界を繋ぐ媒介(メディウム)である翡翠と、翡翠と世間を繋ぐ媒介(メディウム)である香月の運命的なバディストーリー。

だが新感覚ではあるけれど、このままラストを迎えるとなるとかなり期待値上がっていたから多少物足りないかもと思っていたら。。最終章の展開の衝撃たるや。

二人が妙にいちゃついている描写が多かったのはそういうことだったのか、真犯人は完全に予想外だった。もしくはこの展開も香月が翡翠を死の運命から遠ざけるための策なのでは?とワクワクしてしまう。

と思ったら、今度は翡翠の反撃。ここから面白さが加速度的に増加する。

ここまで長いことかけて「霊媒」という超常現象を印象づけておきながら、完全な論理・推理に痺れた。そして世代的には「木更津キャッツアイ」のような巻き戻る展開も好き。二人の本当の人格含め、怒涛の騙し合いの暴露は圧巻。

最後には更なる悲しさが残る詐術があったのではという期待を含ませた終わり方も余韻を多分に残してくれる。

気持ちいいぐらいに振り回せてくれるストーリーは、個人的に新たなミステリーの面白さを提示してくれた。

最後見直して気づいたけど、表紙の表情と様子で真相を示していたのか。。

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medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

  • 作者:相沢 沙呼
  • 発売日: 2019/09/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)