『妄想銀行』星新一

遅ればせまして。

 

f:id:sunmontoc:20210727070627j:plain

『妄想銀行』星新一

人間のさまざまな妄想を取り扱うエフ博士の銀行は大繁盛。男子学生が抱く艶めかしい願望を預かり、反省のない被告に悩む弁護士に罪悪感を販売する。博士は順調に業務を遂行していたが――。
現代社会への皮肉が効いた表題作のほか、道で拾った風変りな鍵に合う鍵穴を探し続ける男を描く「鍵」、自殺の名所に佇む青年を雇ったエヌ氏の顛末を追う「半人前」など、傑作ショートショート32編を収録。(Amazonより)

 

はじめましての星新一。そしてショートショート

小気味良いブラックユーモアは、子供の頃に観た『笑ゥせぇるすまん』を思い出した。

昔のSFは、現代との答え合わせみたいで楽しいし預言みたい。特に「住宅問題」はYouTubeやサブスクの広告とどこか通じる部分を感じた。

あと、ラスト前の「とんでもないやつ」はそれまでの大小悲喜様々な30偏を回収するような壮大さと怖さがあって見事だった。

ほかの色んなも作品読んでいこう。

 

 

 

 

 

『NEW ERA』Dragon Ash

一年半ぶりにCDを買った。

 

f:id:sunmontoc:20210715192820j:plain

『NEW ERA』Dragon Ash

 

当初、「エンデヴァー」と「NEW ERA」をそれぞれ聴いたときには、『THE FACES』の頃のような高揚感はあまり感じなかった。

だけど、配信開始になり作品として3曲を聴き、地上波や配信イベントでの演奏風景を観ていたら、どんどん歌詞の内容や激しさが染み込んでいき、「これはものすごい名盤なんだ」と感じてきた。そして「手元に置いておかなきゃいけない」と思ってひっさしぶりにCDを購入。

KenKen、ATSUSHI、DRI-Vとの別れやコロナによる制限を経て生まれたからこそ、勝手に何層もいろんな考えや憶測を重ねてしまう。

三つ折り?になっている歌詞カードを広げて改めて聴いてみると、曲を跨いで使われている言葉があったりして、3曲で一つの物語として捉えられる。

ラウドロックの代表格としての責任感やこんな世の中でのファンへの鼓舞という側面を持ちながら、自身たちを奮い立たせているようにも感じるし、「ダイアログ」の経緯含め特定のだれかに伝えているようにも感じる。

決して本人たちに自覚の意識が完全にあるとは言えないけど、明日のことすら靄がかかっているような時代だからこその、すべてを包み込んで、背負って、歌い上げるDragon Ashはやっぱり一生ずっとかっこいいし美しい。

 

 

 


www.youtube.com


www.youtube.com

『合唱 岬洋介の帰還』中山七里

こんなてんこ盛りズルすぎる。

 

f:id:sunmontoc:20210715191249j:plain

『合唱 岬洋介の帰還』中山七里

幼稚園で幼児らを惨殺した直後、自らに覚醒剤を注射した“平成最悪の凶悪犯"仙街不比等。彼の担当検事になった天生は、刑法第39条によって仙街に無罪判決が下ることを恐れ、検事調べで仙街の殺意が立証できないかと苦慮する。しかし、取り調べ中に突如意識を失ってしまい、目を覚ましたとき、目の前には仙街の銃殺死体があった。指紋や硝煙反応が検出され、身に覚えのない殺害容疑で逮捕されてしまう天生。そんな彼を救うため、旧友・岬洋介が地球の裏側から急遽駆けつける。そして悪徳弁護士や熱血刑事、死体好きな法医学者たちと相まみえ……。中山作品の主要人気キャラクターたちが集結する“アベンジャーズ"回! さらに完全保存版の「全中山作品相関 図」付き。(Amazonより)

 

大好きな「岬洋介」シリーズ。だけど今回の展開は期待以上のボリュームと豪華さだった。オールスター感謝祭

見事なまでのおなじみのキャラクターのリレー・集結具合なんだけど、全員がその道の専門家としての確固たる技術を情熱を持っており、かつ各々の価値観のみを信じている愚か者。そして、エッセイを読むとよく分かるけど、小説を書くことの純然たる専門家である筆者がしっかり無理破綻なくまとめ上げている。

あと、岬洋介と御子柴のやり込め方は読んでいてニヤケが止まらない。やっぱり両極端のようで同じ要素を持ち合わしている二人だからこそ、出処は違えど結果として他人をぐうの音も出ないほどやりこめる同じ爽快感を感じるんだと思う。

記念的な豪華さはあるけど、最後の終わり方に次回作に期待せずにはいられない。

 

 

 

 

sunmontoc.hatenablog.com

sunmontoc.hatenablog.com

 

 

『普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる』佐久間宣行

開始数ヶ月聴いてなかったことが本当に悔しい。

 

f:id:sunmontoc:20210704213910j:plain

『普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる~佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)2019-2021~』佐久間宣行

2019年3月、テレビ東京のプロデューサー・佐久間宣行が、
深夜のラジオ番組『オールナイトニッポンの0(ZERO)』の
パーソナリティになることが発表された。
今年、番組は3年目に突入し、
満を持して書籍化することが決定!
厳選フリートークをはじめ、ゲストトーク
語りおろしエッセイ、ショート漫画など、
コンテンツも盛りだくさん。
ドリームエンタメトークを活字でも堪能できる!(Amazonより)

 

俺は『ゴッドタン』ガッツリ見ていたわけじゃないから、開始当初はこの人の凄さや面白さを知らなくて、聴いてなかった。でも、段々と面白いとの噂や聴いたほうが良いと薦められて聴いてみたら、見事にハマって約二年。今ではマイラジオヒーローでありエンタメ導師であり、憧れる働くおじさん。

聴いたことあったエピソードトークも活字にすると、更に面白さが湧いてくるし、そもそも純粋に話のクオリティが恐ろしく高いと思う。若林にも作中で指摘されてるけど構成も無駄がないし、あとやっぱりあの笑い方で思わずこっちも笑ってしまう。ああやって自分で自分の話に笑っていても違和感だったりドヤ感ないのは、あくまで芸人ではないってことも関係してるのかな。あと人柄か。

カフェで読んでるとき終始ニヤけてしまって明らかに様子おかしかったけど(マスクしてる時期で助かった)、とりわけヤバかったのが聴いたことなかった『ラジオな寿司屋』と、知っていても面白い『浜松町のカフェ』。なんかの作品なの?ってぐらい完成されているし、会話とそれに対するツッコミもツボだし、人間観察力がエグい。

また仕事論的なことも魅力のひとつだけど、『石岡瑛子展』での「かっこよすぎるものは、その人以外には似合わないぐらいだから、かっこいいんだ」てのは、俯瞰では理解できるけど、主観では自身がそこまで突き抜けて何かに取り組んだことあるわけではないから、わかりきらないところもありそこもまたグッと印象に残っているし、改めて只者ではないんだなってことを感じさせる。

魅力上げだしたらキリがないし野暮だけど、本当に10年でも20年でもずっと聴いていたくなるラジオの魅力のほんの一部が凝縮されている一冊。

最後に、裏表紙の折り返し部分見て失礼ながら「この人ほんとに何やってんの?」って呆れた。いい意味で。

 

 

 

働くおじさん

働くおじさん

  • RHYMESTER
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

『発注いただきました!』朝井リョウ

力見せつけられた。

 

f:id:sunmontoc:20210703080430j:plain

『発注いただきました!』朝井リョウ

桐島、部活やめるってよ』でのデビューから十年。森永製菓、ディオールJTJRAアサヒビールサッポロビール資生堂JA共済など、様々な企業からの原稿依頼があった。原稿枚数や登場人物、物語のシチュエーションなど、小説誌ではあまり例を見ないような制約、お題が与えられるなか、著者はどのように応えてきたのか!?
「キャラメルが登場する小説」「人生の相棒をテーマにする短編」「ウイスキーにまつわる小説」「20を題材にした小説」など、短編小説十四本、エッセイ六本。
普段は明かされることのない原稿依頼内容と、書き終えての自作解説も収録された一冊。十周年に合わせて依頼された新作小説も収録。(Amazonより)

 

『正欲』みたいな作品も『チア男子』のような作品もどっちも好きだし、エッセイなんか腹抱えて声出しながら読むぐらい好きだけど、今作はその中間をサクサク読める感覚だった。

短い物語で、事前に意図や趣旨やキーワードを提示するからこそ、メッセージや与える読後感のようなものが明確で、そして必ずグッとニヤッとするポイントもあって、著者の力のようなものを見せつけられた感じだった。長さ関係なく引っかかる文章がいくつもあった。

 

「社会が失っているものを、俺たちも一緒に失ってちゃ、意味がないんだ」

 

”その中でどうにかして生き延びるために手を伸ばしたものが、教室内にいる自由にいたぶることができる格下の存在ではなくて、映画の中で繰り広げられていたしりとりだった穴とのことを、私はバカだなんて思わない。”

 

”現在の自分を愛することはもちろん大切だ。だけど、現在の自分よりももっと愛することができる人やものに出会い、それらに今手にしている自由や選択肢を差し出すその瞬間が、私はとても楽しみだ。”

 

そして、それだけで終わらず、自虐の茶々を入れて腐らすあたりも信頼度が上がってしまう要素だった。読んでて楽しい。

更には、最後にはしっかり苦さを多分に含んだ、その時点での進行形である作者の世界観も堪能できる物語もあって大満足。短編だからこそ切られた傷を認識する前に読み終えてしまった感じ。

なんとなく読むの敬遠してたけど、作者の色んな角度の魅力を楽しめる作品だった。

 

 

 

 

sunmontoc.hatenablog.com

sunmontoc.hatenablog.com

sunmontoc.hatenablog.com

 

 

『ひと』小野寺史宜

確信に変わった一冊。

 

f:id:sunmontoc:20210624065140j:plain

『ひと』小野寺史

たった一人になった。でも、ひとりきりじゃなかった。

両親を亡くし、大学をやめた二十歳の秋。
見えなくなった未来に光が射したのは、
コロッケを一個、譲った時だった――。

激しく胸を打つ、青さ弾ける傑作青春小説!(Amazonより)

 

順番逆になっちゃうけど、『まち』を読んで惹かれ始めた作者。これも間違いない面白さだった。

 

確かに『まち』に比べると、「ひと」そのものに焦点がより絞られている。

でも愛憎・怨嗟・悲喜渦巻く人間関係だったりするのではなく、いやできごとと関係自体は決して軽いものではないんだけど、その重さではなくそれを通過点とした流れを表現することに軸がある気がする。

経験をもとにどう生きていくか、関係が徐々に太くなりながら、でもそこに縛られるのではなく、どういう網みたいなものを築いていくか、印象的な出来事にとらわれずにあくまで滑らかに進んでいく物語に夢中になっていく。

 

また、主人公と関わっていくひとたちも、良くも悪くも人間臭くて純粋で好き。

特に督次さんが言うこのセリフがこの世界観の魅力をすごく表している。

「まずな、ウチのだからうまいわけじゃない。コロッケってもんがうまいんだ。そのコロッケをつくる。それだけだな」

 

横道世之介』シリーズにも似た、この淡々と滑らかに進んでいくけれども、自然と主人公に惹かれていくこの感じ、「この作者好きかも?」が確信に変わった一冊。

流れ行く経験や時間の中で、主人公がどう生活していくか、続編を読みたくなること間違いなし。

「大切なのはものじゃない。形がない何かでもない。人だ。人材に代わりはいても、人に代わりはいない。」

 

 

 

 

 

『52ヘルツのクジラたち』町田その子

遅ればせながらももちろんこれも良かった。

 

f:id:sunmontoc:20210622065108j:plain

『52ヘルツのクジラたち』町田その子

「わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ」
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。
孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会う時、新たな魂の物語が生まれる。(Amazonより)

 

ほんとうになんとなく、題名から受ける印象から読まずにいた作品。

作者のデビュー作で衝撃を受けていざ読んでみると、読んでいなかったことを後悔するほど面白かった。

 

周囲の人の存在は間違いなく感じるんだけど、あくまで主役2人の感情や世界を、奥の奥まで突き詰めた息苦しさと面白さは格別だった。

かつて感じたかすかな温かさをかき消すほどの絶望を経験し、現在も曇天を彷徨うような状況から、未来にかすかな希望を見出し、良いい意味でもたれあいながらも二人でふたたび立ち上がる姿がすごく良かった。

物語のトーン的に好きな遠田潤子作品に近いものを感じる。あと作品にLGBTの軸が当たり前にメインエピソードではなく溶け込んでいるところも、「今」の作品な気がする。

 

 

 

 

sunmontoc.hatenablog.com