『シン・サークルクラッシャー麻紀』佐川恭一

なんて本を読んでしまったんだ。

 

『シン・サークルクラッシャー麻紀』佐川恭一

クラッシャられるべきか、クラッシャられないべきか、それが問題だ――あのサークルクラッシャーが帰ってきた! 佐川恭一の名を世に知らしめた伝説の作品が長編小説として生まれ変わる。奇跡の童貞文学、ここに誕生。

破滅派から出た電子書籍としてもっとも読まれた『サークルクラッシャー麻紀』(2022年4月時点で累計1500部!)と佐々木敦が選ぶ今年の10冊(東京新聞・2019年)にランクインした『受賞第一作』をマッシュアップ! アンドレ・ジィド『贋金つかい』を思わせる「意外にも文学的な構造」と「下品スレスレ外角低めの文体」が織りなす佐川ワールドの新境地が誕生。

麻紀はなぜサークルをクラッシュをしたのか? 崩壊した文芸サークル「ともしび」出身で「受賞第一作」にてデビューした覆面作家の正体は? 青春の蹉跌を抱えながらサラリーマンとして生きる部長は「文学」を取り戻せるのか?

今年作家デビュー10周年を迎える佐川恭一の新しいマイルストーンがいま打ち立てられる。(Amazonより)

 

 

 

自分の読書経験だと、樋口毅宏森見登美彦のような要素は感じるんだけど、なんて括ったらいいのかわからない。

 

ものすごい情報量がとてつもないスピードで過ぎ去っていく。物語の中の物語に句点がなく、主人公の頭の中で連想ゲームのように話や思考がどんどん原型を忘れるくらいに飛んでいくので、どこで一区切りついて休めば良いかわからなくなり、手が止められなくなる。そして物語の中の現実なのか、物語の中の物語なの境界線がボヤけてきて同一化することにより、さらに頭の中が心地いい混乱を覚えてくる。中毒性が高すぎる。

 

その特殊な構造と欲望溢れる文章に夢中になり、どんな壮絶な、破滅的な結末を迎えるのかと期待が高まっていたら。いい意味ですっかり裏切られた。

冒頭で切って捨て去られたと思い込んでいた馬鹿みたいな純粋さに帰結していく。愚直なまでにひとつのことを愛する気持ちと挫折だと思い込んでいた日々を糧にして、再び主人公がペンを取るところは、作品の中でずっと軽んじられていたように見えていた熱量を感じた。

そして、サークルクラッシャー麻紀の存在が全く別のものになり物語は始まりに戻っていく。

 

読んでいる間圧倒されるし疲れるけど、必ずまた読んでみたくなる傑作。