太陽の棘

見た目以上に読み易かった。

 

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『太陽の棘』原田マハ

 

結婚を直前に控え、太平洋戦争終結直後の沖縄へ軍医として派遣された若き医師エドワード(エド)・ウィルソン。幼いころから美術を愛し、自らも絵筆をとる、心優しき男だ。心ならずも軍医として厳しい研修ののち沖縄に派遣されたエドは、父にねだって送ってもらったポンティアックを操って、同僚の友人たちと荒廃した沖縄の地をドライブすることだけが楽しみとなっていた。
だがある日、彼らは美術の桃源郷とでも言うべき、不思議な場所へと行き着く。そこで出会ったのは、目を輝かせた画家たち。セザンヌや、ゴーギャンのごとき、誇り高い芸術家たちであった。
その出会いは、エドと画家たちの運命を大きく変えていく――。(amazonより)

 

「絵画」と「沖縄」っていう原田マハ要素満載なんだけど、「絵画」の学術的というか専門性のある描写はいつもより少ないし、「沖縄」の美しさとかポジティブな要素ばかりというわけでもないし、今までとは違うバランスかと。

 

「戦争はまだ終わってないんじゃないかと僕は思うよ」(p42)

戦後も沖縄では戦争の苦しみは続いていて、「ヤマト」と「アメリカ」、どちらが憎むべき対象なのかなとか、わかってるようで表面しか理解していないことにハッと気づかされた。

 

「自らの意思で描き続ける芸術家であること」(p119)

いくら日々の生活のために万人受け(ある意味カタキ受け)が良いものを描いて、いくら貧しくても逆境に立たされ続けても、ど真ん中の芯だけは貫き通すという熱量というか意地が静かに伝わってきた。

 

元キュレーターということもあり、原田マハが書く物語は「芸術家(求道者)の支持者・サポーターの視点」なんだと再認識した。

この作品を書くにあたっていろんな葛藤があったこともインタビューで話してました。

books.bunshun.jp

 

実在した玉那覇清吉についても知りたくなったし、もっと長く読みたいと思った。

相変わらず装丁やカバーがイイ。

 

 

太陽の棘 (文春文庫)

太陽の棘 (文春文庫)

 

 

 

首折り男のための協奏曲

これもさくさく読めた。

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『首折り男のための協奏曲』伊坂幸太郎

 

首折り男は首を折り、黒澤は物を盗み、小説家は物語を紡ぎ、あなたはこの本を貪り読む。胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。(amazonより)

 

作者がバラバラに作った作品を修正して一つの流れを作ったと言っているだけに、それぞれのギミックというか仕掛けがめっちゃ面白い。特に逆再生の話と水兵リーベの話。時空の歪み的な話もワクワク半端ない。

強い繋がりやテーマがない分、ストーリーがどこで誰で起伏を迎えて収束するのか、なかなか予想がつかないので、どんどんページめくるスピードが加速する。

「首折り男」の善悪についての追求がないのも良い。

ただこの人が書く登場人物って、その話自体では個性強いんだけど、どの話でも同じような思考というか屁理屈言う人がいてダブる。面白いからいいんだけど。

 

今年になって読まず嫌いだった伊坂幸太郎読み始めたけど、かなり好きだ。

 

 

首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)

首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)

 

 

タンジェリン

TSUTAYAでパッと見で惹かれてレンタル。

 

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『タンジェリン』

 

ロサンゼルスの街で暮らすマイノリティの人々の日常を、iPhone5Sにアナモレンズを装着して撮影した映像でリアルに切り取ったコメディドラマ。クリスマスイブのロサンゼルス。トランスジェンダーの娼婦シン・ディは恋人が浮気していることを知って怒り狂い、浮気相手を見つけ出して懲らしめるべく奔走する。シン・ディの親友で歌手志望のアレクサンドラは、カフェでのライブを目前に控えていた。一方、アルメニア移民のタクシー運転手ラズミックは、自らの変態的な欲望を満たそうとしていて……。監督・脚本は「チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密」のショーン・ベイカー。2015年・第28回東京国際映画祭のワールド・フォーカス部門で上映された。(映画.comより)

 

「こんな世界あるんだ!」っていう感じで新しいこと知れた感じ。なんとなく『かさみ様なんかくそくらえ』に空気感似てた。

「ゲイ」っていうのは外国でもイメージがついてたけど、日本で言うところの語弊があると思うけど女装をしている人たちがいるってことが意識してなくて新鮮だった。

タクシードライバーが買っといて自分から咥えるってのがいろんな人がいるなと。洗車のシーンは革新的すぎた。

iPhoneのみで撮影ってところに無限の可能性を感じた。

最後はもうちょいドタバタの収束を見たかった。

 

 

タンジェリン [DVD]

タンジェリン [DVD]

 

 

ポイズンドーター・ホーリーマザー

久しぶりの湊かなえ

 

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『ポイズンドーター・ホーリーマザー』湊かなえ

 

湊かなえ原点回帰! 人の心の裏の裏まで描き出す極上のイヤミス6編!!
私はあなたの奴隷じゃない! 母と娘。姉と妹。男と女--。ままならない関係、鮮やかな反転、そしてまさかの結末。あなたのまわりにもきっといる、愛しい愚か者たちが織りなすミステリー。さまざまに感情を揺さぶられる圧巻の傑作集!!(amazonより)

 

あらすじにあるように、とにかく針でじわじわ背中刺されるような関係の短編集。

湊かなえ好きだし、「イヤミス」の読後感も好きだけど、今作はあからさまにそこを表現しすぎているような気も。それか売り文句や帯が、どの本でもそこを推すから食傷気味になってるかも。

 

特に「毒親(娘)」の二編は本当にこんな関係存在するの?っても思ったけど周りの世界にいないだけでいるんだろうなーと。「どこまで注意・強制すると毒親となってしまうのか」っていう線引きの話は興味深かった。

 

ポイズンドーター・ホーリーマザー

ポイズンドーター・ホーリーマザー

 

 

 

 

アイネクライネナハトムジーク

最近文庫版発売されたやつ図書館で借りてきた。

 

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アイネクライネナハトムジーク伊坂幸太郎

 

 

 ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。
奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、
他力本願で恋をしようとする青年、
元いじめっこへの復讐を企てるOL……。
情けないけど、愛おしい。
そんな登場人物たちが紡ぎ出す、数々のサプライズ! !
伊坂作品ならではの、伏線と驚きに満ちたエンタテイメント小説!(amazonより)

 

伊坂幸太郎の連作短編集のいいところは繋がりや登場人物の相関関係を全て覚えなくてもゆるく楽しめるところだと思う。

気づかない時に忘れた頃に「あいつ出てきた!」ってなってテンションが上がる。

特に最終章のラウンドボーイのシーンは胸が熱くなった。

 

あと独り身の身としてはp21の出会いについてのドラえもんの比喩が響きすぎて辛い。。

 

織田みたいなこの作者の屁理屈のような理論を貫き通す憎めないキャラが好き。

 

 

アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)
 

 

 

本を守ろうとする猫の話

マイマスター夏川草介の新作。

 

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『本を守ろうとする猫の話』夏川草介

 

お前は、ただの物知りになりたいのか?」
夏木林太郎は、一介の高校生である。夏木書店を営む祖父と二人暮らしをしてきた。生活が一変したのは、祖父が突然亡くなってからだ。面識のなかった伯母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るため林太郎の力を借りたいのだという。
痛烈痛快! センス・オブ・ワンダーに満ちた夏川版『銀河鉄道の夜』!(amazonより)

 

この人の『神様のカルテ』は人生ベストに入るくらい好きだけど良くも悪くもそのシリーズだけなのかなと思ってたら思いっきり覆された。


神様のカルテで書かれてた『本を読む意味』を更に丁寧に深く書かれてて各章が読書する人にとっては他人事ではないテーマで、そしてその理想に対して最後に現実突きつけて、でもその現実に屈しない理想を表明する的なめちゃくちゃいい展開だった。ただあの本の擬人化が女性ってのが意外だった。

これもずっと本棚に入れてまた読み返したい。

読書好きな人にはかなり読んで欲しい作品。 「本には大きな力がある。けれどもそれは、あくまで本の力であって、お前の力ではない。」 

 

 

本を守ろうとする猫の話

本を守ろうとする猫の話

 

 

銀魂

原作大好き。

 

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銀魂』(実写版)

 

漫画実写化に付き物の原作との乖離については、原作者と監督・出演者の執拗な自虐やPRによりあまり怖がらず。

 

小栗旬が歌ってる「パッション」が噂になってたけど、くだらなすぎて冒頭から笑った。

 

原作の再現度・原作への忠実度については、

 

かなり高い…と言うか近年に稀に見るレベルだと。

 

小栗旬?とも思ってたけど話し方や目つきも近かったし、てか黒目がかった感じが書紀のタッチにそっくりだった。

菜々緒また子もいい感じにセクシー感半減されてて、場末のお水感的がよく出てた。

その他のキャストもマジで合ってた安田顕半端ない。

 

内容も原作のギャグシーン・シリアスシーン、オリジナルなギャグシーンとかなり楽しめた。ただ登場人物もストーリーもてんこ盛りなので、シリアスシーンが続くと展開知ってるだけに個人的に中だるみした。(原作も常に張ってるというよりあんな感じだし)

オリジナルの笑いに関しては、佐藤二朗が尊敬するレベルで良かった。菜々緒が「使わないって言ったのに使われた!」と言ってた場面もあれは納得。

 

二時間ではもったいないクオリティなので、というか視野に入れてるんだろうけど、続編見たくなる。

 

夏休みのくだらないアニメとしてオススメです。橋本神楽の振り切れっぷりはこれでしか観れない。

 


映画『銀魂』予告2【HD】2017年7月14日(金)公開