『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』中村淳彦
”生きているだけで死にそうです”
『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』中村淳彦
奨学金という名の数百万円の借金に苦しむ女子大生風俗嬢、
理不尽なパワハラ・セクハラが日常の職場で耐える派遣OL、
民間企業よりもひどい、まじめな女性ほど罠に陥る官製貧困、
明日の生活が見えない高学歴シングルマザー…。
貧困に喘ぐ彼女たちの心の叫びを「個人の物語」として丹念に聞き続けたノンフィクション。
東洋経済オンライン1億2000万PV突破の人気連載、待望の書籍化!
いま日本で拡大しているアンダークラスの現状が克明に伝わってくる。(Amazonより)
社会の裏側なんかではなく、紛れもない現実。
様々な理由や出来事、環境で貧困に陥る女性たち。その経緯はショッキングなことが多いし、語弊があるけど読み応えがある。
でもそれはフィクションな物語ではなく、あくまでも同じ日本で起きている現実であり、特別な状況だけで起きるのではなく、何かのちょっとしたきっかけによって安全だと思われる立場から読んでいる自分達にも起こりうることだということを忘れてはいけない。
福祉関係にも多少携わっていた身としては、制度や支援側がここに記されているような状況ばかりではないということを言っておきたいけど、「一部だけ」とか「全体としては」なんていう比較では、当事者たちをひとつも救いはしないということも事実。
何がいけないのか、誰が悪いのか、どうすればできる限り多くの人が救われるのか、簡単な解決策なんてないって思ってしまいがちだけど、社会や制度や親や家族というしがらみを一切捨てて考え直す勇気が踏み込みが必要なんだろうと思う。
“妹、または娘や孫の世代にローンを背負わせた挙句、性的奉仕をさせる社会になってしまっている。自分たちが絶望の淵に誘導した娘や孫のような世代を担う女の子たちに、気分に任せて誹謗中傷を浴びせて、自分がさらに気持ちよくなっている。どこまで都合がいいのだろうか、異常としか言いようがない”
“親は誰もが子どもの未来を案じている、といった性善説は現実的ではない。”
“子どもの教育に興味のない親権者を超えて、子どもが相談できる機関や人材は必要で、そこに親の意向は反映させない、子どもの自己決定が尊重される仕組みにしなければならない。”
”いつ誰が転落するかわからない社会である以上、貧困女子たちの声は誰にとっても他人事ではないはずだ”
”スラムと呼ばれる場所で生きる人々のほうが、現在膨大に存在する多くの貧困女性たちより、恵まれている環境で生きていて幸せだということだ。”
社会から断絶しきっていないからこそ、貧困のループにさらに陥ってしまう人たち。
ここに書かれていることはもちろん全てが社会のせいではないし、自身の問題もある。
だけれどもそれらをひとつでも無くすために、選択を間違わないように、情報や場所や支援を少しでも多く提供して享受できる環境を作り、躓く原因となる石を取り除いていくことが大切なことのひとつなんだと思う。