『そして、星の輝く夜がくる』真山仁
また忘れちゃいけない物語が増えた。
『そして、星の輝く夜がくる』真山仁
東日本大震災から三年の月日をかけ紡ぎ出された希望と祈りの物語。著者自らが体験した阪神・淡路大震災。そして2011年3月11日。被災地の小学校を舞台に描かれる「六つの願い」。(Amazonより)
あくまでフィクションだけども、食らわされる回数と衝撃がすごい。
自分は被災県出身で今も住んでいるけど、当時は東京に住んでいて渋谷ドトールで地震感じて鷺宮まで歩いて帰った。被災者でもないし今住んでいる地域もそこまで影響なかったように思える。
そういう実際に苦しさを味わっていない人たちにできることは実際の行動以外ではその立場で想像することだと思っていた。しかし、どれだけ考え抜いたとしても本当の気持ちは遥か斜め上にあったり、結局は他者の思考でしかなく実際の苦しさはわかり切ることはないってことを主人公と小学生たちから教わった。
特に、「東電=悪」みたいなイメージが蔓延していて、実際自分もそう思っていたけど、そのある意味安易な考え方を根底から揺さぶってくれた2章目はカルチャーショック?に近い衝撃だった。しっかり考え抜くことを放棄して安直なイメージを持つことは危険だなって痛感した。先の先や奥の奥までの関係性を想像しなければいけないなと。ボランティアのエピソードも難しい問題だった。
そして物語全体を通して、素直な子供の眩しさや聡明さが表れていて、世間や大人の事情でそれらを奪ってしまってはいけないと感じた。
「子どもは弱い、守ってあげなきゃいけない。大人はすぐそう言う。だが弱いのは大人の方だ。自分たちが教えられるのは、知識や浅はかな経験しかない。だが、こいつらは、命の輝きを惜しげもなく教えてくれる。」
元気や明るさで影響を与え好転させていくという英雄譚なんかではなく、苦しみを経験したことを前提として一緒に悩んで、それでも簡単に善悪の二つの判断基準で解決できないこともたくさんある中で、小学生たちがその経験踏まえて未来をどう生きていくかというきっかけを与えてくれる素晴らしい物語だった。