『本のエンドロール』安藤祐介

心底この本に出会えてよかった。

 

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『本のエンドロール』安藤祐介

印刷会社の営業・浦本学は就職説明会で言った。「印刷会社はメーカーです」。営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナー、電子書籍製作チーム…奥付に載らない本造りの裏方たちを描く感動長編。(Amazonより)

 

発売当時から気になっていたけど、読んだことない作家で躊躇していた作品をやっと図書館で。

『書店ガール』などで、書店や出版社など本を取り巻く環境の話を読んできたけど、今回は更に半径が広がったというか、狭まったというか、今まであまりスポットを浴びてこなかったであろう印刷会社の話。

純粋にどのような工程で本が造られていくのか勉強になった部分がたくさんあるし、なによりも斜陽産業と言われている出版・印刷業界でなぜ敢えて望んで働いてるのか、どんな意識で日々の仕事に取り組んでいるのか、なぜ本を造りたいのか、各部署の矜持と意地と覚悟を感じることができた。

活字離れ・電子書籍など取り巻く問題は山積しているし、簡単に好転するような話は転がってないけど、廃れゆく本を造る仕事を選んだ結局は「自分のため」に働くというシンプルかつブレない大きな決意があった。

また、本の物語としてだけではなく、働くことについて考えさせる部分が多かった。思いを仕事に変換するためのフィルターだったり、結局は日々の仕事を手違いなく終わらせることが一番難しいことだったり、どの世代の人が読んでも響く部分があるのではないか。

あと個人的には、P301の野末と辞める決意をした高野との話し合いがグッと来た。今居る場所で全力を尽くせない人間は他でも同じだから最後まで手を抜かないと宣言する高野と、次の場所を見つけたら構わず進んだほうが良いと思う野末。お互いに理解・信頼している関係だからこそのやり取りだった。

決して希望が多く書かれているわけではなく、先細りしているであろう未来を覚悟してそれでも自分が関わっている現状を変えようと戦う人たちの姿は、これから何度も思い出したくなると思う。

一生本棚に置いておこう。

 

 

本のエンドロール

本のエンドロール

  • 作者:安藤 祐介
  • 発売日: 2018/03/08
  • メディア: 単行本
 

 

 

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