『デートクレンジング』柚木麻子
アイドル小説って無条件に惹かれるよね。
『デートクレンジング』柚木麻子
「私にはもう時間がないの」
女を焦らせる見えない時計を壊してしまえたらいいのに。
喫茶店で働く佐知子には、アイドルグループ「デートクレンジング」のマネージャーをする実花という親友がいる。
実花は自身もかつてアイドルを目指していた根っからのアイドルオタク。
何度も二人でライブを観に行ったけれど、佐知子は隣で踊る実花よりも眩しく輝く女の子を見つけることは出来なかった。
ある事件がきっかけで十年間、人生を捧げてきたグループが解散に追い込まれ、実花は突然何かに追い立てられるように“婚活"を始める。
初めて親友が曝け出した脆さを前に、佐知子は大切なことを告げられずにいて……。
自分らしく生きたいと願うあなたに最高のエールを贈る書下ろし長編小説。(Amazonより)
個人的にも30半ばで結婚予定も相手もいないから、身につまされる部分もあった。でもそれよりも「かつて追いかけて熱中していたものとどうやって、どのくらいの距離感で向き合っていくか」というところが響いてきた。
感情に従って何かに心ゆくまでのめりこむことが、理不尽な世の中に対抗する唯一の手段なのだ
特にこの文章は、年甲斐もなくというふうに周りから見られている人にはグッとくるものがあるし、好きなものは捨てなくていいんだと肯定してくれているように感じた。終盤にもあるように「オタクのパワー」は一生持っているべき自分の人生をかけて磨いてきた武器なんだなと。
朝井リョウの『武道館』といい、アイドルがテーマに入っている小説には刹那性が増幅されていて惹きつける力が強いけど、その後の人生について訴えかけている今作はまた一味違うパワーを与えてくれる。