『その手をにぎりたい』柚木麻子

なんとはなしに読み始めたらすごく面白かった。

 

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『その手をにぎりたい』柚木麻子

八十年代。都内で働いていた青子は、二十五歳で会社を辞め、栃木の実家へ帰る決意をする。その日、彼女は送別会をかね、上司に連れられて銀座の高級鮨店のカウンターに座っていた。彼女は、そのお店で衝撃を受ける。そこでは、職人が握った鮨を掌から貰い受けて食べるのだ。青子は、その味にのめり込み、決して安くはないお店に自分が稼いだお金で通い続けたい、と一念発起する。そして東京に残ることを決めた。お店の職人・一ノ瀬への秘めた思いも抱きながら、転職先を不動産会社に決めた青子だったが、到来したバブルの時代の波に翻弄されていく。(Amazonより)

 

自分自身が経験していなかったバブル時代の仕事と恋愛と食の物語。この3つの要素が混じり合って溶けて混ざって、出世欲も金欲も性欲も食欲もひとつになって翻弄していく描写は流石だった。時系列が逆になるけど、『BUTTER』に通じるものがある。

ひとつひとつのネタに合わせたストーリーも見事だし、主人公が時代の趨勢とともに変化・成長・挫折していくさまも読み応えがあった。未経験者からすれば、本当にこんな狂乱みたいな時代があったんだなって、少しの羨ましさもある。ただ、かつての輝かしい花火の一瞬を見ているようでありながら、ここ数年の日本・世界の変化を考えると、派手さはないだけで過去以上に混沌とし静かに変化しているのではないかと薄ら寒くもなる。

最初は女性が主人公のラブストーリーくらいの捉え方で読み始めたけど、どんどん刺さる部分が出てきて、現在30代独身で先が見えづらい時代に生きている自身には身につまされる箇所も多い。これからいつ読み返しても感じるところが多い一冊となった。

 

 

 

その手をにぎりたい (小学館文庫)

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