2020年読書ベスト
年末恒例の年間読書ベスト。
去年のはこちら。
今年は現段階で120冊読了。同じ作家は基本一冊のみチョイスで、ランキングではないし、文章量の多少は面白さに比例しません(時期によって書き方変わってるし)。
年末年始の家での暇つぶしの参考にどうぞ(16〜19はエッセイ)。
1.『ひこばえ』重松清
48年前に別れた父親の骨壷と再開し親子を再会する物語
2.『スター』朝井リョウ
才能を持った若者二人が映像、果ては人間の生き方にまで対峙していく
3.『始まりの木』夏川草介
木と神と民俗学の物語
4.『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
血は繋がらないけどしっかり繋げてくれた親とのリレー
5.『本のエンドロール』安藤祐介
印刷会社を通じて、将来性や評価とかとは別次元の仕事の矜恃を感じられる
6.『明け方の若者たち』カツセ・マサヒコ
「何者」かになりたくて20代前半にもがいていた人全員読むべき
7.『凪に溺れる』 青羽悠
若き作家の才能が大化けした瞬間に立ち会えるしクラムボン聴きたくなる
8.『一ミリの後悔もない、はずがない』一木けい
どん底で支えてくれる人の存在を感じられる恋愛装った人生の話
9.『そして、星の輝く夜がくる』真山仁
子どもたちから学ぶ震災以降の在り方
舞台を小学校にしても存分に発揮される著者の世界観とメッセージ性
11.『雲を紡ぐ』伊吹有喜
手仕事に直向きに向き合う家族の物語
12.『線は、僕を描く』砥上裕將
知らない世界に出会えるという本の醍醐味をこれでもかと感じられる
13.『BUTTER』柚木麻子
今年ナンバーワン消化しきれていない面白さと抗えない魅力
14.『かがみの弧城』辻村深月
ファンタジーに思えてしっかり現実世界の厳しさと向き合う子どもたち
15.『ザ・ロイヤルファミリー』早見和真
明後日有馬記念賭ける人にオススメの、人と馬のファミリーヒストリー
16.『まにまに』西加奈子
ライフスタイル含めやっぱりこの人大好きだわと思わせてくれる
旅文学装って存分にぶち撒けられる今一番好きな人の人間性
18.『Big Pants ~スケートボード is 素敵~』柳町唯
くだらないし下品だし泥臭いけど最高のカッコ良さも味わえる
19.『ここは、おしまいの地』こだま
カラッとした明るさではないけど失敗もすべて受け入れておしまいの地で生きていく強さ
※番外編
20.『夢は捨てたと言わないで』安藤祐介
予選や予告動画含め今年のM-1グランプリに夢中になった人は是非
『ひこばえ』重松清
「父」でありこれから「祖父」になる主人公。だが「息子」であった思い出が少なく、48年前に別れた父と、骨壷という形で再会し、新たな出会いを交えながら「親子」をやり直していく。
主人公の家族と、後藤さんの家族が交互に書かれていて、別々のようだった物語が、主人公自身の父に対する想いの変化に伴って徐々に絡み合っていき、下巻に入るとひとつの物語となり厚みが増していく。
出てくる登場人物がみんな人間臭くて好きだし、誰かに疎まれていたとしても誰かにとっては素敵な人って真理を実感する。
RHYMESTERの『POP LIFE』の宇多丸のリリックの
「こちらから見りゃサイテーな人 だがあんなんでも誰かの大切な人」
てところと通じる部分があるかな。
ともに父に迷惑をかけられた小雪さんと母が、「思い出は身勝手なものに決まっているから楽しい思い出だけつくっちゃいなさい」と教えてくれて、「苦労やら気兼ねやら、ぜんぶひっくるめて幸せな人生だった」と言ってくれる。主人公にだけではなく、父を含めこの物語のすべてに救いが訪れた瞬間だと思う。
生まれてから死ぬまで、どういう思いで生きていくか、様々な人物の言葉を通してたくさんのアドバイスや気づきを教えてくれる。読んだ直後よりも、感想を書くためにページを開き直している今のほうがずっと作品の重みが増している。
兄弟で地元に住んでいるのが自分だけで、両親のこれからや「親の死」というものが、遙か未来の全く想像できないものではなく、少し姿が見え始めてきた30代だからこそ感じるものがあったし、10年20年後に読んだらもっと色んな捉え方をするんだろうな。
『スター』朝井リョウ
映画・動画をテーマにしているけど、読み進めれば進むほど、奥が深く、これからの人間の生き方にまで関わってくる内容だった。
YoutuberやTikTokという文化に関しては、悔しいけど自分も考え方が古く、頭が固い側に片脚浸かっていることを認めざるを得ない。でも映像という媒体を中心に、各々の世代の考え方が決して間違いではなく、ただ誰かの正解に必ずしもなりえないってことがわかっていく。
最初はそれぞれの舞台で受け入れられつつ戸惑いながらも進んでいく二人。でもお互いのやっていることが果たして正解なのか迷い始める日が訪れる。そこで、泉や浅沼、大樹、岩角、鐘ヶ江、千紗という媒介を通して、ブレて振り幅が大きくなったり小さくなったりしながら、二人でしかたどり着けなかった答えに近づいていく。
奇しくも送り手と受け手別々の立場から、ものを創って送り出すということは「心の問題」なのだと。
普通だったらそこがハイライトで終わりを迎えても物語としてはアリだと思うけど、そこから更に疑問を投げかけてくる。簡単にはスッキリさせてはくれない。
登場人物それぞれの考え方が論理的に理解できる点もあるし、感情的にわかってしまう点もある。読めば読むほど、考えが二転三転して、たった一つの答えがあるとしたら終着点はどこなのか、二人と一緒に迷いつつもワクワクしてしまう。
あと物語の本筋とは違うけど、相変わらず寒気がするほどの切れ味でぶった切るところはさすが。紘の週4でアップしていた動画とか、尚吾の完全食とか、何気ないけど何度か書かれてるな程度の表現がここぞって時に威力を発揮する。いい意味で性格悪すぎる。
本物にこだわり抜くことが正解なのか、多くの人に受け入れられることが正しいのか、響き合える少数を幸せにすることがこれからの生き方なのか、騙されたい人はきちんと騙してあげることが優しさなのか、とにかく迷いまくる。
それでも尚吾が最後にたどり着く答えは真摯なシンプルなものだった。
「はなから小さな空間に向けて差し出したものだとしても、それがどんな一点から生まれたものだとしても、素晴らしいものは、自然と越境していく。」
「どんな相手に差し出すときでも、想定していた相手じゃない人にまで届いたときに、胸を張ったままでいられるかどうか」
決して正解なんてないし、それぞれにそれぞれのそのときの答えがあるだろうけど、自分がいる小宇宙の外に響いた時に、その答えに自信を持っていられるかどうか、シンプルだけど自分自身に覚悟を決めないと到達できない姿勢だと感じた。
そしてこれだけ読者を振り回しておいて、最後の最後は思わずうれしくなってにやけてしまうささやかなご褒美を用意しているところも憎い。
さらに筆者への信頼度が強固なものになった一作だった。
『始まりの木』夏川草介
『神様のカルテ』シリーズで普遍的な物語の素晴らしさを教えてくれた作者。
今作も決して派手じゃないし、ドンデン返しもないし、ヒリヒリする駆け引きもないし、爽快な勧善懲悪もない。
でもしっかり心に食い込むものがあり、気づいたらどの本よりも折り目つけたり付箋貼る箇所が多くなってる。
ご褒美みたいな奇跡の瞬間も描かれているんだけど、そこよりもその瞬間までの登場人物たちの日々の積み重ねや、それを受けての咀嚼の仕方にこの作品の素晴らしさが詰まっている。
なぜ民俗学を学ぶのか、日本は日本人はどこに向かっていくのか、何を捨てて何を得てきたのか、神仏にどのように向き合うのか、過去から学び現代に根を張り未来を見据えた幹の太い思考がそこら中に散りばめられている。
日本人にとって神とは信じるものではなく感じるもの、ただ土地の人々の傍に寄り添い見守るだけの存在であり、心を照らす灯台だったという考え方が特に響いた。
かつてないほど混迷を極め、科学や技術に重きが置かれ、いい意味でも悪い意味でも自身の成長にとっての損得が重要視されている現代を生きる自分たちはもう一度シンプルに過去や自然から学び直して繋げていかなければいけないものがあるのだと感じた。
柔らかい美しい世界観の中で極めて現実的な目線で問いかけてくる作風はやはり素敵だし何度も立ち返りたくなる。
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
基本的に家族の物語が大好きで、『東京バンドワゴン』のようなひたすらに日なたみたいな話か、重松清が描くような悩みや葛藤を経て徐々に心を通じ合わせたりする話が読書経験上は多かった。
だけれど今作は主人公の性格からか、ハードに見える環境に身をおいてるにもかかわらず、冒頭から非常に「平温」な物語。そしてその理由を訥々と丁寧に読者に説明していく展開。
それはどの親からも間違いなく愛されていたという実感と、別れを経験していくことで無自覚に培った主人公の心の強さがもたらす温度だった。
必要以上に悲劇的に描くのでもなく、過剰に幸せを強調するのでもなく、毎日の食事のメニューへの些細な感想のような、平凡な生活を何度も繰り返し繰り返し描くことによって伝わるあたたかさである。
初めて読む作家さんだったけど、文章がスイスイ入ってきて、いい意味であまり引っかからずに最後まで読めた。最初と最後以外主観が変わらないから一つの視点で入り込めた。
だけれども最後の、
『本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない大きな未来へとバトンを渡す時だ。』
という文章がこの物語の一番核となる部分を明確に表していて心に残った。
すべての親が、主人公の未来のためを思って決断してくれていた。
『本のエンドロール』安藤祐介
『書店ガール』などで、書店や出版社など本を取り巻く環境の話を読んできたけど、今回は更に半径が広がったというか、狭まったというか、今まであまりスポットを浴びてこなかったであろう印刷会社の話。
純粋にどのような工程で本が造られていくのか勉強になった部分がたくさんあるし、なによりも斜陽産業と言われている出版・印刷業界でなぜ敢えて望んで働いてるのか、どんな意識で日々の仕事に取り組んでいるのか、なぜ本を造りたいのか、各部署の矜持と意地と覚悟を感じることができた。
活字離れ・電子書籍など取り巻く問題は山積しているし、簡単に好転するような話は転がってないけど、廃れゆく本を造る仕事を選んだ、結局は「自分のため」に働くというシンプルかつブレない大きな決意があった。
また、本の物語としてだけではなく、働くことについて考えさせる部分が多かった。思いを仕事に変換するためのフィルターだったり、結局は日々の仕事を手違いなく終わらせることが一番難しいことだったり、どの世代の人が読んでも響く部分があるのではないか。
あと個人的には、P.301の野末と辞める決意をした高野との話し合いがグッと来た。「今居る場所で全力を尽くせない人間は他でも同じだから最後まで手を抜かない」と宣言する高野と、「次の場所を見つけたら構わず進んだほうが良い」と思う野末。お互いに理解・信頼している関係だからこそのやり取りだった。
決して希望が多く書かれているわけではなく、先細りしているであろう未来を覚悟してそれでも自分が関わっている現状を変えようと戦う人たちの姿は、これから何度も思い出したくなると思う。
『明け方の若者たち』カツセ・マサヒコ
作者の年齢や舞台となる年代が近かったので自己投影っぷりがものすごかった。
20代前半で「何者」かに憧れ、現実の壁にぶつかり、挫折し、どこかに自分なりの活路を見痛そうともがく様は東京で過ごしたことがある大人は大抵が経験するのではないか。
その甘くも苦い二番目の青春時代と呼ぶべき時に出会った魅力的な相手。多数とは異なる共通項を見つけたり、シンパシーを感じて高揚していく感じが懐かしかった。
そして舞台は高円寺。この物語の中には、自分が憧れ嵌り消費した高円寺がこれでもかと描かれていた。
また文章もユニークだし、出てくるトピック、特に曲がドンズバ。アルミ缶のぶつかる音を「ベン」と表現するところ、ハイボール派としてはひどく共感する。そして最終章でチョイスする曲が『ハイブリッド・レインボウ』って最高すぎだろ…。
流れ自体も、甘く楽しみが溢れている前半から徐々に陰りを垣間見るようになり、第五章で急転し、そこからの苦しみともがき、とスピード感を持って読める。
他にも伝えたいことはいろいろあるけど、状況は違えど多くの人が「これは自分の物語だ」と思えるのではないだろうか。
引っかかる文章がめっちゃ多いし、またこの空気感を味わいたいので、一生本棚に残しておこう。
『凪に溺れる』 青羽悠
デビュー作である前作も16歳とは思えない達観した心理描写に驚いたけど、今作は間違いなく傑作。人が化ける過程を目撃できた。今年の色んなところの年間ベストランキングに入ってくると思う。
もちろん作品に著者の年齢なんて関係ないっていうのは大前提だけど、シンプルに自身が到達していない年齢の登場人物の心象を描写できるってものすごいことだと思う。経験の数ゆえなのか、積み重ねてきた思考がそうさせるのか。
カツセマサヒコの『明け方の若者たち』でも感じたけど、東京で社会人以前以後を過ごした大抵の人が少なからず経験する苦悩や葛藤、高揚感と絶望を静かに描いている。
個人的には今までの読書体験からはあまり感じ取ってこなかった、『繰り返し』によって増幅する思いや信念ってのを学んだ。思いの強さや折れても立ち向かう粘りとかではなく、ある意味淡々と静かにブレずに繰り返し続けるからこそ、いつか結実する力。
主人公の十太からも、夏佳からも、祈りとも表現されているその行為の、ある種寒気がするような凄みを感じた。そして主題歌である『凪に溺れる』も各章を通してどんどんエネルギーが増していく。
各章の主人公に対して、読んだ人それぞれが親近感を湧く人物を見つけると思う。諦めとの向き合い方に苦悩した正博が個人的には一番感情移入した。
悲しい途上を経たとしても、波は伝わり繋がっていき物語は止まらずに希望を含ませながら続いていくラストも素晴らしかった。
少年時代の瑞々しさ、若者の青臭さ、人生の節目で迎える苦しみ、様々な感情を蘇らせた上に更に丸裸にされたような読後感を味わわせてくれる素晴らしい作品だった。
蛇足だけど、久太、十太、希っていう名前の繋がり方も好き。
『一ミリの後悔もない、はずがない』一木けい
恋愛小説を飛び越えて人生だった。
はじまりの回想の入り方から独特で、とりわけ現在に不満を持ったり絶望しているわけでもなく、かといって思い出を懐かしがりすぎるわけでもなく、主人公の性格も相まって過去のほんの一瞬を振り返る感じがした。
思春期特有の、異性の体の変化を異物的な視点で捉えながらも惹かれていく感情の高まり方と、困窮している家庭事情の中でも淡々と気丈に日々をやり切っていく姿が対照的で、読み手として感情をどっちに置けばいいかわからず振り回される。
そして回想から現実に戻った際に、唐突に過去の幸せな時間の終わりを告げられてしまう。
その後は篇ごとに視点が変わるんだけど、あの主役の女の子はどうなってしまったのか、今は幸せなのかと気になってしまう。
本軸とはそれほど関係はないサブエピソードもあるけど、どん底に見えるような主人公の境遇の中で、数少ない支えてくれる、身を委ねられる人物の存在をしっかり感じ取ることができて、恋愛小説というより人生を感じさせてくれる物語だった。
そして最後は、今更知っても後悔してしまうようなことかもしれないけど、自身の状況ではなく周囲の想いから自分は幸せだったし、そのことだけでこれからも幸せに生きていけると感じさせてくれる完璧な終わり方だった。
刹那的な感情かもしれなかったけど、一生携えていける大切なものに気づかせてくれる素晴らしい作品。
『そして、星の輝く夜がくる』真山仁
あくまでフィクションだけども、食らわされる回数と衝撃がすごい。
当時は東京に住んでいて渋谷のドトールで揺れを感じて鷺宮まで歩いて帰った。被災者でもないし今住んでいる地域もそこまで物理的な影響はなかったように思える。
そういう実際に苦しさを味わっていない人たちにできることは実際の行動以外ではその立場で想像することだと思っていた。しかし、どれだけ考え抜いたとしても本当の気持ちは遥か斜め上にあったり、結局は他者の思考でしかなく実際の苦しさはわかり切ることはないってことを主人公と小学生たちから教わった。
特に、「東電=悪」みたいなイメージが蔓延していて、実際自分もそう思っていたけど、そのある意味安易な考え方を根底から揺さぶってくれた2章目はカルチャーショック?に近い衝撃だった。しっかり考え抜くことを放棄して安直なイメージを持つことは危険だなって痛感した。先の先や奥の奥までの関係性を想像しなければいけないなと。ボランティアのエピソードも難しい問題だった。
そして物語全体を通して、素直な子供の眩しさや聡明さが表れていて、世間や大人の事情でそれらを奪ってしまってはいけないと感じた。
「子どもは弱い、守ってあげなきゃいけない。大人はすぐそう言う。だが弱いのは大人の方だ。自分たちが教えられるのは、知識や浅はかな経験しかない。だが、こいつらは、命の輝きを惜しげもなく教えてくれる。」
元気や明るさで影響を与え好転させていくという英雄譚なんかではなく、苦しみを経験したことを前提として一緒に悩んで、それでも簡単に善悪の二つの判断基準で解決できないこともたくさんある中で、小学生たちがその経験を踏まえて未来をどう生きていくかというきっかけを与えてくれる素晴らしい物語だった。
『逆ソクラテス』伊坂幸太郎
作者の思春期の青少年を題材にした『サブマリン』や『砂漠』は大好きだけど、舞台を小学校に移してもここまで面白さ失わずに新たな魅力を見せつけるなんて脱帽。
第一章から「いいねー!」と思わず声出してしまう展開で終始楽しく読めた。
すべての章を通して、先入観や他人の固定観念に囚われないことを、小学校という同じ舞台を通してじっくり刷り込まれているような感覚だった。そのなかでも、第一章で出てくる「僕はそうは思わない」ってめちゃくちゃ大事な言葉だよなと感じた。成長期だけでなく大人になっても大切な芯のように感じられた。
また、第二章での「もし、高城がいじめられっ子だったとしたら、何か変わるか?」っていう言葉が、章の最後で逆の意味を持つことがわかり、弱い立場のものだけではなく、もっと様々な人の立場で考えることの重要性が出てきて、作品の世界が広がるターニングポイントになったと思う。
さらに、第三章で先生が放つ、「相手によって態度を変えることほど、恰好悪いことはない」、「心の中で、可哀想に、と思っておけばいい」という言葉が、むしろ大人になって中年に片脚突っ込んでる今だからこそ良くも悪くも響く言葉だった。ダサくもなりたくないし、他人にずっと悩まされたくもない。
そして、第四章から最終章にかけて、間違いを何度犯したとしてもよっぽどでない限りやり直す機会は誰にでも巡ってきて、その時にどんな手を差し伸べられるかという、普遍的なメッセージを伝えてくれる。第四章の最後のアンスポのくだりがオーラスにめちゃくちゃ効いてくるところもさすがだし、最終章のお母さんの人を喰ったようなキャラが作者らしくて楽しめた。
よりシンプルで純粋な舞台だからこそ、作者の力が思う存分発揮されていたしメッセージも一際濃かった。
『雲を紡ぐ』伊吹有喜
職人の厳しさと、手仕事や田舎のあたたかさ、どちらも味わえる作品。
小川糸の世界観に似ている読み心地。
家族の再生の話であり、世代を横断して信頼関係や絆をもう一度紡いでいくのだけれど、娘と母のわだかまりが長く残り、娘と父とのほうが先に打ち解け合うっていう展開があまり読んだことがなく、珍しく感じた。そこには親子関係だけではない、同性としての妬み嫉みもあったりして生々しくてよかった。
羊毛を染め、糸を紡ぎ、布を織るという昔から変わらない作業に対する誇りと職人としての矜持を感じるだけではなく、古来より続く営みへの神秘性や、人々が託してきた「だれかへの願い」も伝わってくる。
『丁寧な仕事』と『暮らしに役立つモノづくり』、モノは刻々と変化すれど、いつの時代も社会人としてとても大切なことだと思った。
また、祖父が美緒に作業を教えていく過程で、今までの人生・日常生活で学び損ね溢れた、自己や他者との向き合い方を訥々と示しているところも印象的。
親も子も孫も、各々が気づき悩んでいく中で相手に対する考え方が変化し、途切れかけた関係が再び撚り合いゆっくり紡がれていく展開が味わい深い。
奇跡的な終結が待ち受けているわけではなく、決して快晴ばかりではなく曇るときもある各々の生活での現実感のある終わり方にも好感が持てる。
服飾という時として不必要で華美に映る世界での、褪せることのない大切な価値を感じることができた。
『線は、僕を描く』砥上裕將
水墨画との出会いの物語。
冒頭の西濱との出会い。喫煙所でのゆったりとしたやり取りの中で、本質を訥々と語っている。
「才能はタバコの煙のようなものであって、気がつくとごく自然にあって呼吸しているもの。ふだん当たり前のようにやっていることの中にある。」
芸術やセンスみたいなものを大仰なものとしてではなく、生活・人生に則したものとして考えている。
次に篠田湖山と水墨との運命的な邂逅。霜介の空白が多くなってしまった人生と「何もない場所にポツンとなにかがある感覚」を感じる水墨が交わるというかひとつに紡がれた感じがする。
湖山のゆったりと全てを包む空気感が、この物語の緊張と緩和を全て決定していると思う。
漫画の『3月のライオン』と通じるストーリー性。それよりも周りとの出会いや外側との結びつきにより重きを置いている感じ。壊れる寸前でギリギリ保っている自我。
66~67Pの湖山の言葉が心に残る。ここの2人のやり取りが静かに水墨の本質を語っている。
「まじめというのは悪くないけれど、少なくとも自然じゃない。水墨画は自然に心を重ねていく絵画。自然との繋がりを見つめ、学び、その中に分かちがたく結びついている自分を感じていくことであり、その繋がりが与えてくれるものを感じることであり、その繋がりをいっしょになって絵を書くこと。」
こういう初心者が未知のものに出会って成長していく物語では、美点として表されるまじめさや愚直さとは文字通り一線を画した考え方。
その帰り道で西濱が語る言葉も印象的。
「何も知らないからこそ、何もかもがありのまま映る。」
何気ない会話の中で、かしこまらず大切なことを伝えており、彼の人間性が滲み出ている。
そして第一章ラスト。「水墨の入った重い手提げ袋を反対の手に入った携帯番号を握りしめて、彼はゆっくり空っぽの部屋に入っていった。」水墨との、西濱との、湖山との、千瑛との出会いを通じて、今までの空っぽさとは違い、両手に二つの希望や生きていくために大切な何か種を持っていることを表している。
第一章の水墨という未知との出会いや楽しさだけではなく、第二章以降ではその真髄を求める者たちの苦悩や、シンプルだからこそ難しいことが語られている。それは斉藤や千瑛にはなくて、西濱にあるもの。「これは明らかに美などではない。美しさなど思いもしなかった。そうではなく、ただ心が震え、一枚の絵、一輪の花、たった一つの花びらの中に命そのものを見ていた。」水墨とは自分の心の内側の森羅万象を描くものであり、美ではなく命を描くもの。
そして2年間心を閉ざし続けていた霜介が、描くものを通して周りに理解され、信じられていき、止まっていた生命力が水墨をきっかけに動き出していく。
第四章では、霜介自身の命を描くことへの挑戦と苦悩が表現されている。しかし、それは水墨に出会う前とは異なる悩み。「与えられた場所ではなく、歩き出した場所で立ち止まっているから。」
文化祭での湖山の揮毫会。個人的に全く馴染みのないイベントなのに、とてつもなく大きな何かが始まりそうな予感と期待で、準備段階の焦っている様子からテンションが上ってくる。会での湖山と作品を通して、霜介は改めて水墨の真髄を感じる。「生きているその瞬間を描くことこそが水墨の本質。人は描くことで生命に触れることができる。」
その後の入院中の湖山との一番深い部分での交わり。水墨を通じて霜介にしてあげたかったことから、湖山のとても真摯な姿勢での無償の愛と共感を感じる。「君が生きる意味を見いだして、この世界にある本当にすばらしいものに気づいてくれれば、それだけでいい。」
そして霜介は自分自身・自然・水墨と向き合い抜いてひとつの境地に達する。「自らの命や森羅万象の命そのものに触れようとする想いが絵に変わったもの、それが水墨だ。」
物語の最後には、空っぽの真っ白な部屋にいた青年はついに「僕は満たされている」と実感することができる。
絶望の淵に立っていた主人公が水墨という狭い間口を通して、自分、他者、自然との結びつきを見直し、自然の美しさや生命力に気づき、周囲との交わりに喜びを見出し、自分はもう空っぽじゃないと感じられるまでの再生・救いの物語。テレパシー並に各々が深いところで理解し合って共鳴し支え合っている。
シンプルな題材・ストーリーながらも、一文で読み手に与える印象が大きく、心に響かせたい部分がわかりやすくて読みやすい。
本というものが自分がまだ知らない世界に出会わせてくれることに醍醐味のひとつがあるとするならば、5作しかノミネート作品読んでいないけど、一番本屋大賞をとってほしかった作品。
『BUTTER』柚木麻子
衝撃度で言えば今年一番はこれかも。一回読んだだけでは咀嚼しきれず感想もまとまっていない。
フィクションだけど実際の事件である「首都圏不審死事件」がベースにある。
容疑者であるカジマナにどんどん惹かれていく雑誌記者の主人公。それはカジマナが語る「バターご飯」の魅力にどんどんハマっていくのと同じように、背徳感を感じながらも心を奪われていく。
「食欲」と「性欲」が同一化していき、中盤らへんでカジマナと主人公も『ちびくろサンボ』の虎のように溶けて同化していくような感覚に囚われる。
主人公が抗えないものにある種堕ちていく展開も魅力的だし、そこから信仰の対象のようであったカジマナと一種の決別をし、自分の道を見つけていくストーリーも素晴らしかった。
この作品の魅力の百分の一も伝えられていないけど、グワングワン揺さぶられて清濁併せ呑んだような面白さに魅了されるので、めちゃくちゃオススメ。
読み終わった後は、必ずバターご飯試してみたくなる。
『かがみの弧城』辻村深月
ファンタジーだと思って読んでいると、中身にはがっつりいじめや不登校・家庭内問題と現実のシリアスさがある。
主人公・こころは大人しそうな何に対してもビクついているような女の子なのに、叶えたい願いに切迫した怖さがあって、いきなり黒目だけになったような変貌にゾクッとした。また二学期ぐらいから、追い詰められているからか、こころが現在の状況について母親に責任転嫁したりどんどん歪んでいく感じが垣間見え始める。
中盤、ストーリーは面白いし城の仕掛けも気になるんだけど、いじめの様子や苦悩がずっしり心に残って、早く読み進みたいけどページめくりたくもない不思議な読み心地だった。SF要素はあるけど、結局救いや解決は現実にしかない。
そしていよいよ三学期から謎や疑惑の核心に触れてくるようになるんだけど、それでもなかなか真相に辿り着けず、不可解さは深まるばかり。特にP.303の母とのやり取りは、そっちの方向かなって感じで進んでたのに、新たな方向転換を示され思わずニヤついちゃう。空間じゃなくて時間がズレているのか?
2月以降もどんどん謎が深まっていきどんどん面白さが倍増していく。そこまでも十分面白いんだけどこの捲り方は異常。最終的には予想していたよりもはるかに緻密で濃厚な設定があって、知った後に振り返ると、スバルの「子供がウォークマンを持っていて一目置かれる」という描写とか、そういうことか!と思わせる箇所がいっぱいあって爽快だった。
現実世界での問題も、喜多嶋先生、東条さんや母など、こころが独りでたたかってきたことをわかってくれる人たちに支えられて、その人達に囲まれた安心感と、わかってくれない人や場所からは、呆れにも似た絶望もあるけど諦めて逃げても良いんだという割り切り方に救われるところが印象的で、不思議さや奇跡に頼らないしっかりした軸がある感じがして好きだった。
ラストの別れのシーンも、マサムネとスバルの「嘘を本当にする」っていうやり取りは本当にグッと心が掴まれたし、みんなこの城で友だちができて良かったなあとめちゃくちゃ感情移入した。
そしてずっとオオカミさまは喜多嶋先生なんじゃないかと思っていたら、更にもう二つ驚きがあって、全員少しずつ救われて良かったなあと思ったし、喜多嶋先生が実は彼女で、物語の大きな縦軸となっているところが見事だった。作品全体を通してこころが転校生という存在に期待したりするシーンや、みんなが喜多嶋先生と会う似たようなシーンが繰り返し描かれているけど、その場面場面で感じ方や意味が全然違ってくるという表現方法と言うかリフレインの仕方が素晴らしかった。
もう一度じっくり細部まで味わいながら読み返したくなるし、この作者をもっと好きになることができた。
『ザ・ロイヤルファミリー』早見和真
序盤の方では、やはりこの作者は家族の物語が醍醐味なんだと改めて感じさせてくれる。そして少し経済小説にも思わせる。
初めて競馬場を舞台にした物語を読んだけど、最初の日本ダービーから、ハイスピードな攻防の描写と実況の臨場感でめちゃくちゃテンション上がる。字で追ってトップレベルに面白いスポーツだと思う。
第一章からボリュームも起伏も満点で、この後第二章も通して、どう続いてどんな展開になるかが全く予想できず楽しみが増える。また途中から主人公・クリスが初めて山王に意見をする部分も出てきて立場や信頼関係に変化が生まれてきて面白い。
そして、第一章のラスト、有馬記念の結果が万事良しと言う感じではないからこそ、第二章に期待を更に持たせてくれる。
あと実際に読み進めないと章名の意味がわからないところも何かを作品・作家と共有している感じがして好き。
仕える人物が違うから当然だけど、第一章と第二章でクリスの役割に変化が出ているところもそれぞれの人生の経過を表している。振り回される秘書から心配性な後見人というか。でもそんなに簡単ではなく、耕一とクリスの関係性の揺れ動きもあるけど、かつて山王から「裏切るな」と誓わされたクリスが、今度はその息子に「裏切らない」と宣言する場面はグッと来る。こうやって変化を帯びながら関係や繋がりも継承されていくんだなと。
そしてラストレース。無呼吸みたいな感じでページを捲る手を急かさせる展開は最高だけど、絶対このままでは終わらないんじゃないかと思わせる男・佐木。どこか『スラムダンク』の県予選陵南戦の小暮のような。最後の展開は興奮とニヤつきが止まらなかった。
別の作品『6 シックス』でもそうなんだけど、オチの画像で結末や描かれない未来を示す作者の手法が好きで、今回もオーラスのロイヤルファミリーの成績にはテンションぶち上がり。
継承がテーマであるこの物語。栗須家、山王家、野崎家、中条家、椎名家、そして各馬の血統。家族内の尊敬や確執や葛藤、様々な思いを滲ませながら、そしてある種血よりも濃い繋がりや奇跡を生み出しながら、競馬という舞台を通して何世代にも渡る壮大な大河ドラマを見せてくれた。
年に一回有馬記念しか賭けていなかったけど、純粋に競馬という世界をしっかり味わってみたくなった。
『まにまに』西加奈子
本作を読み始めて、まず感じたことは、予想外にも捻くれているということ。
どこか、たりないふたり(南海キャンディーズ・山里亮太とオードリー・若林正恭)と一緒で闇や毒を多分に抱えていると思う。
そういう要素はありつつ、第一章「日々のこと」では、オチが効いたリズミカルで小気味良い軽快な文章がスイスイページを進めさせてくれる。
「失敗しても、いつかそれを肴に酒を飲もう」という言葉など、クスッと笑える世界観の中にも人生の教訓になるようなエピソードや言葉があって、心に残るものが多い。
そして第二章「音楽のこと」では、作者の人生規模で音楽と密接に関わっているんだなということがうかがえる。音楽で得たものを血肉にして自分自身の幹を太くしていっている感じ。
最後の第三章「本のこと」では、それまでの日常生活のユーモアさや音楽という自身が純粋に好きな文化への愛着とは異なり、ある種鬼気迫って訴えかけてくるものがあり、やはり物書きであり人生そのものなんだなと感嘆した。それまで笑顔で喋っていたのが途端に真顔になった感じ。
エッセイ自体の構成としても章を重ねるにつれてページ数が減っていき、削ぎ落として純度が高くなっていってるような印象を受けた。
個の尊重や多様性を訴えかけてくる作品はもちろん、エッセイやライフスタイルも
やっぱり大好きな作家です。
『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭
旅文学というものを初めて読んだけど、高揚感や突っ込みどころが無理なく入ってきて純粋にキューバという国に興味を持った。
誰かも言っていたけどこの作品は旅文学を装って作者自身の人間性がぶちまけてあってエッセイとしても面白かった。後追いで読んでいるので、現在の作者の思考に至るまでの変遷を確認できた。知らないことを素直に知らないと言えて、自身を過大表現しない真面目さが文章から伝わってくる。
唯一のカラー写真が海のみっていうところが鮮烈さを際立てていたし、『ナナメの夕暮れ』でも記されていたけど、亡くなった親父さんとの会話が哀しさとあたたかさが入り交じった素敵な文章だった。
この作品を通して更に作者が好きになったし、最近始めたnoteを読んでいても思ったけど、この人の文章をもっと読みたいという飢えを感じさせてくれる貴重な存在だと感じた。
『Big Pants ~スケートボード is 素敵~』柳町唯
思春期の憧れと男子のノリとイカ臭さと、泥臭くて汚くてカッコいいがこれでもかと混じり合っている作品だった。
服でも音楽でもスポーツでも、ストリートカルチャーに少しでも触れてきた男子なら誰しもが一度はやってみたくなるスケボー。俺は全然滑れなかったけど、その簡単な見た目でめちゃくちゃ難しい魅惑的な遊びに対する憧れが満杯に表現されている。
そしてその一種悪魔的な魅力に取り憑かれてどっぷりハマってしまい、いい意味で人生を狂わされていく姿もカッコよかった。
また中高男子ノリ的のなシモのゆるさもこの作品の大事な要素だと思う。
『今思えば、俺がスケーターになれた日というのは、初めてオーリーができた日というよりも、初めてオナニーをした日だったような気がする。オナニーを覚える前にオーリーを覚えた子どもは、まだスケーターではなかったのだ。』
スケボーのこと知らないけどこれは真理だと思う。
あと世代的に触れることなかった2000年台前半のクラブの雰囲気や夜遊びの仕方、海岸や街中でのスケボーなど、知らない空気感や匂いだけど想像することができる描写が素晴らしかった。
何かを得るためでも、かといって昔を懐かしがるわけでもなく、一生何かを好きでい続けるために輝いていたワンシーンを再確認して胸を一杯にする、そんな読み方ができる作品だった。
『ここは、おしまいの地』こだま
『夫のちんぽが入らない』で赤裸々さと壮絶さに圧倒されてから一年、遅ればせながらエッセイも読んでみた。
『夫の~』では描かれきれていなかった、普通のものさしでは測りきれない、「映画?」と思うような作者の半生が更に壮絶で悲惨さとかよりもはやワクワクしてくる。
スーパーハードモードに見える人生での失敗も、常に明るいわけではないけど、悲哀だけではなくどこかユーモアを感じさせる文章でのめり込んでいく。このギリギリくすっと笑えるバランス、絶妙。
失敗や不幸に目が行きがちだけど、
『「おしまいの地」で生まれ育ち、「何も知らない」ことを知っている。』
という、置かれた場所を活かしてあるものでやりぬいていく姿勢が、ど田舎に暮らしている自分にとっては響く部分があった。
また失敗を積み重ねているように見えても、すべての経験が現在地点に活かされているという考え方も素敵だった。
『人生の局面で悩んだときは「振り返ったときに何かが残るほう」を選ぶ。』
すごくいい言葉。
ドタバタしながら悲喜こもごもすべてを受け入れて奮闘する作者の話をこれからも読んでいきたい。
『夢は捨てたと言わないで』安藤祐介
『本のエンドロール』が素晴らしすぎてかなりハードルが高いまま読み始めた。最初は結構ドタバタする感じなのかと、ちょっと期待してたのとは違うかなと思ったら。
ストーリーも、作中の漫才も、普段の会話のやり取りも、スピード感よくグイグイのめり込んでいった。漫才は素直に読みながら笑ってしまった。大麻ネタ最高。
しかも笑えるだけではなくて、現時点への葛藤や不満、成功しようとする仲間への羨望や妬み、振り切って切り捨てるように見せることで最後のもうひと踏ん張りの実力が足りていない点など、色んな感情を抱えた上で笑いや人生に挑んでいる登場人物の姿に胸が熱くなる。
めちゃくちゃ鬼気迫る勢いでやっているけど本人たちが面白いと思えていない点など、他の仕事にも通じるひとつのことに対する向き合い方を感じ取れた。
どんどん昇っていく姿も、こんなうまくはいかないよなって思う点も、結局はすべて叶うわけではないよなってところも全てひっくるめて人生だなって感じられる。たとえ破れたとしても人生と夢は自分から捨てない限り続いていく。彼らは決して純粋な成功者ではないけど、決して失敗者ではないしこれからも挑戦者である。
表紙もタイトルも最高だし、勤め人×芸人ってのも新鮮だし、色んな人に読んでほしい作品。漫画の『べしゃり暮らし』好きな人とかにも。
個人的にボケのイメージはニューヨークの嶋佐。
って感じでした。いつもよりエッセイ多く読めたし初めて読む作家も多かった。あと年齢的にも、一度社会で挫折を味わった人たちの物語を選ぶ傾向があったし、逆に子どもが主役でメッセージ投げかけてくるような作品も結構読んだな。
来年もいい感じに好きなやつだけ読んでいきます。