『冬雷』遠田潤子

絶対裏切らない面白さ。

 

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『冬雷』遠田潤子

大阪で鷹匠として働く夏目代助。ある日彼の元に訃報が届く。12年前に行方不明になった幼い義弟・翔一郎が、遺体で発見されたと。孤児だった代助は、日本海沿いの魚ノ宮町の名家・千田家の跡継ぎとして引き取られた。初めての家族や、千田家と共に町を守る鷹櫛神社の巫女・真琴という恋人ができ、幸せに暮らしていた。しかし義弟の失踪が原因で、家族に拒絶され、真琴と引き裂かれ、町を出て行くことになったのだ。葬儀に出ようと故郷に戻った代助は、町の人々の冷たい仕打ちに耐えながら、事件の真相を探るが…。(Amazonより)

 

『雪の鉄樹』、『オブリヴィオン』と、陰鬱としていて読みにくそうな雰囲気なのにどんどん没頭して物語にのめり込んでしまう作者。

今作も常に曇っているようなイメージで、ほとんどが暗いことで喜びなんてたまにしか出てこないけど、最後の最後で初めてやっと救われた。

また他の作品よりもミステリー要素が強い気がして、最後まで結末が読めずに楽しめた。

どんよりとした現在から過去にさかのぼって、主人公がどのような苦難に直面してきたか追体験するこの展開、やっぱり癖になる。

辺鄙な田舎ながらの矮小な価値観や屈折した人間性、だけどそこで生きていくしかない人たちの諦めと覚悟、主人公だけでなく取り巻く様々な人の複雑な愛憎入り混じった感情が渦巻いているのを感じる。色んな立場があるけれども、主人公の「必要とされたい、裏切られたくない」という純粋な子供みたいな願いがラストシーンで叶って良かった。最後の一文はお洒落にも程がある。

ついに直木賞候補となった作者。期待も込めて次はノミネート作品読む。

 

冬雷 (創元推理文庫)

冬雷 (創元推理文庫)

  • 作者:遠田 潤子
  • 発売日: 2020/04/30
  • メディア: 文庫
 

 

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