『雨の中の涙のように』遠田潤子

新たな世界観。

 

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『雨の中の涙のように』遠田潤子

ただ立っているだけで圧倒的なオーラを放つスター、堀尾葉介。アイドルグループ「RIDE」の一員として十四歳でデビュー。二十二歳のときに演技の勉強のためにアイドルの座を捨てる。地道に努力を続け、アクションから時代劇までこなす実力派の俳優と評価されている。容姿と才能に恵まれ、誰もが好感を持ち、賞賛する男―。過去に縛られ、不器用に生きている人々が彼とすれ違うとき、人生に変化が訪れる。その葉介も過去に縛られていた…。(Amazonより)
 
ざっくりまとめちゃうと、作者の「終始陰鬱・どん底で、でも微かに見える希望」のような話が大好きだったんだけど、この作品は『銀花の蔵』を経て生まれたように思う新たな境地。
 
一見、不幸になんて見えず輝かしい道のりを歩んでいるよう思えるスター・堀尾葉介の人生に触れてきた人たちの物語。
 
彼らは葉介と関わることによって、直接的にも間接的にも運命の歯車が回り始める。
そしてその結果がどうであろうと自身の人生の転機となり、苦味を伴っていたとしても忘れらない記憶となり、葉介のことを考えざるを得なくなる。
 
そして、誰からも愛され、多くの人生に変化をもたらし続けた光の根源であるような葉介自身の、そのような人格が形成される背景にはしっかりと作者らしい苦しみや辛さが表現されていた。
また、そこに至るまでの各登場人物とのエピソードがしっかりと回収され、多少引っかかっていた部分の理由が判明し、更に深い意味をもたらす構造が見事だった。
 
意外なほどに読みやすい展開と、それを作り出す絶妙な陰影のバランスが素晴らしかった。これからの作風もどんなふうに広がっていくか楽しみ。
 
 

 

雨の中の涙のように

雨の中の涙のように

  • 作者:遠田潤子
  • 発売日: 2020/08/18
  • メディア: 単行本
 

 

 

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