『あなたに会えて困った』藤崎翔
警戒しててもまた爽快に騙された。
『あなたに会えて困った』藤崎翔
善人と書いてヨシト、なのに空き巣で前科二犯の「俺」。出所早々、懲りもせずに忍び込んだ豪邸の主は、なんと初恋相手の美女マリアだった。後日、偶然を装って再会し、急速に距離を縮めていく二人―と思いきや、彼女の望みは夫の殺害!?90年代の思い出ネタにニヤニヤ、でもラストは思わず声が出る笑いと涙の衝撃ミステリー!(Amazonより)
過去に何度もどんでん返しを食らわされた作者だっただけに、だいぶ警戒心持って読み始めたけど、予期しないタイミングで鋭い一発を顎に食らった感じ。
作者特有のまるでコントの脚本を読んでいるような、どこかでひっくり返るんだろうなという期待感と、同時の時事ネタに同世代だからこそ湧いてくる共感や懐かしさに溢れていて、読み進める楽しさは相変わらず。
しかし、時事ネタに関してはどこか余計というか、もっとストーリーそのもので楽しませてほしいなーという物足りなさも感じる。
そんな感じで終焉に向かい始めた266ページ目、二つのフリガナで全ての景色が変わった。休日にソファでダラダラ読んでいて、一回寝るかとか考えてたら瞬で目が覚めたテンション上がった。
そこからの真実の暴露や全ての伏線回収が見事すぎ。時事ネタも真相の大事な要素の一つになっていて納得。「ということは、じゃあこの部分は?」って前のエピソードを確認していく作業が楽しかった。なによりいちばん大切なことを読者に欺いたまま、これだけのストーリーを創り上げる構成力がものすごいなと脱帽した。
たくさんの仕掛けやギミックが仕込まれていた話の最後を、シンプルな心のつながりで着陸させるところもすっきりしていて良かった。
ワクワクしながら読書する楽しさを存分に味わわせてくれる作者なので、どれもオススメ。