『95』早見和真

マジでこの作者ハズレないな…。

 

f:id:sunmontoc:20180304200353j:plain

 

『95』早見和真

1995年、渋谷。平凡な高校生だった秋久は、縁のなかった4人の同級生から突然カフェに呼ばれ、強制的にグループへ仲間入りされられる。他校生との対立、ミステリアスな女の子との出会い…秋久の経験したことのない刺激的な毎日が待っていた。だがある日、リーダー的存在だった翔が何者かに襲撃されてしまう。秋久は真犯人を捜すため立ち上がった―。激動の時代を駆け抜けた少年たちの心の叫びがほとばしる、熱烈青春ストーリー。(Amazonより)

 

三十路が目前に迫ってきて、中年が青春時代を振り返ったり、青春時代の清算をする話に心打たれる。

時代背景的に、『ドルフィン・ソングを救え』や『ボクたちはみんな大人になれなかった』にどこか似ていた。

思春期に信じていたことを振り返ると、どうしようもなくダサいし恥ずかしいんだけど、そのダサかったことに対してもがむしゃらに向き合っていて、青臭いかっこよさがある。

あとやっぱりここ数年小説を読んでいて痛感することは、阪神淡路大震災地下鉄サリン事件と同列、もしくはそれら以上に、自我が芽生えてから経験した東日本大震災は紛れもなく日本の転換期として描かれていて、文芸に限らず文化を表すには、そこを避けて通れないんだなと。

作中の翔が語る、

『あの頃の俺は輝いていたとか、あの頃は毎日楽しかったとか、そんなことを言ってる大人が一番ダサい。ウソでもいいから今が一番幸せだって笑ってられる人間になってようぜ。』

っていうところが、自分自身がずっと言い続けてることにも通じていて身に沁みた。

最近、こういう「果たしてこのままの人生でいいのか?」って思わせてくれる作品に多く出会えているから、今後の選択肢についてしっかり考えなきゃなと焦らせてくれる。

懐古主義とは違って泥臭いダサかったことについて、仲間と一緒に時が経ってから振り返ったり、ケリをつけるっていうのはイイことだなとしみじみした。

 

 

95 (角川文庫)

95 (角川文庫)

 

 

 

ドルフィン・ソングを救え!

ドルフィン・ソングを救え!

 

 

 

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

 

 

 

『花咲小路三丁目のナイト』小路幸也

花咲小路シリーズ第四弾。

 

f:id:sunmontoc:20180304193610j:plain

 

『花咲小路三丁目のナイト』小路幸也

元「怪盗紳士」も、若手刑事も、ちょっと不思議な花屋さんもいる花咲小路商店街。たくさんのユニークな人々が暮らし、日々大小さまざまな事件が起こる。今回の舞台は花咲小路唯一の深夜営業のお店、「喫茶ナイト」。商店街のみなさんの、夜にしかできない相談ごとに応えていて―。(Amazonより)

 

もちろん作風や主人公の性格もあるけど、推理力・観察眼の高さが、天久鷹央なんかとは違いこれ見よがしではなく、自然にすっと頭に入ってくる感じが心地良い。

作者の特徴である悪い人が1人もいない世界でそれぞれが他人を思いやって、小さな世界のちょっとした出来事や事件を解決していく過程で、各登場人物の長所や美点を満遍なく表現されている優しい世界。

それぞれの問題が一度に羅列される時点では、「どうまとめるんだろう?」と思ったけど、最後の大岡裁きは見事すぎる。「あかさか」を望が継ぐのは予想できたけど、射撃やハシタンも絡めて解決に持っていくとは思わなかった。

その終盤での仁太から全員に向けた、

『人ってのはさ、いろいろだ。人生ってのもいろいろだ。自分で生きる場所を作れる人間がいれば、生きる場所を探せる人間もいる。辿り着いた場所で幸せを探す人間もいれば、与えられた場所でしっかり立つ人間もいる。他人と違うことを、逃げ出したことを、耐え切れなかったことを悔やんでいてもしょうがない。そこから、どうやって生きるかが大事なんだ。』

って言葉が、生きていく上でものすごく大事なことなんだなと、小学生みたいな感想だけど素直に感じた。

シリーズを通して、昔から知っているように思えるやさしい人たちに再会できているような感覚がすごく好きなので、今後もシリーズずっと出して欲しい。

そして、そろそろ『東京バンドワゴン』シリーズ最新作読みたい。

 

 

花咲小路三丁目のナイト

花咲小路三丁目のナイト

 

 

『i(アイ)』西加奈子

やっぱこの人天才だ。

 

f:id:sunmontoc:20180225230147j:plain

『i(アイ)』西加奈子

「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!(Amazonより)

 

今まで読んだ筆者の作品とは正反対のような、没個性を望み、自分の存在を消していく主人公が新鮮だった。他者からの見られ方・思われ方を慮りすぎるせいか、感受性・共感能力が高すぎるせいか、出自がそうさせるのか、世界中の悲劇を都合良くも悪くも自分のことのように置き換えてしまう。

しかし、没個性を望みながらも、自分自身の存在価値・理由について幼少期・思春期・青年期を通じて悩み続け、物語を通じてリフレインされる言葉に答えを見つけるラストは感動。

様々な小説を読んで学んだことでもあるけど、当事者じゃなくても、蚊帳の外だとしても、「他者を想像すること」は人間に、生きている人間に与えられた特権であり、世界や他者と繋がる強力な手段なんだと改めて痛感。

「想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う」

 

うまく言葉にできない部分が多いのでまた読み返したい。

 

 

i(アイ)

i(アイ)

 

 

『ひゃくはち』早見和真

天才でも双子でもヤンキーでも落ちこぼれでもない高校野球

 

f:id:sunmontoc:20180225224843j:plain

 

『ひゃくはち』早見和真

地方への転勤辞令が出た青野雅人は、恋人の佐知子から意外なことを打ち明けられた。付き合い出すずっと前、高校生のときに二人は出会っていたという。彼は、甲子園の常連・京浜高校の補欠野球部員だった。記憶を辿るうち―野球漬けの毎日、試合の数々、楽しかった日々、いくつかの合コン、ある事件、そして訣別。封印したはずの過去が甦る。青春スポーツ小説に新風を注いだ渾身のデビュー作。(Amazonより)

 

もちろんフィクションだけど、真剣に甲子園を目指している球児たちのストーリーに、普通にタバコと酒が出てきてちょっとしたカルチャーショック。

高校生ながら、監督を嫌いつつも一定の認めはある感じが好感持てる。

最初はどんな感じで進んでいくのか掴みきれなかったけど、途中からの先の文章を目の端にも入れたくないくらいのワクワク感。登場する色んな要素や伏線、事件の原因となりそうな素行を全部シカトして、結局は仲間と野球の物語っていうクソストレートな内容が潔くて良かった。最後のミーティング・監督との面談・8年ぶりの再会と、ラストの感動の押し寄せ方が尋常じゃない。終わり方も清々しい。

自分が知らないだけで、もしかしたら本当にこういうことあるのかも?と思わせてくれる、少し知らない世界の話。

と思ってググってみたら、作者は桐蔭の元高校球児ということは。。

 

 

ひゃくはち (集英社文庫)

ひゃくはち (集英社文庫)

 
ひゃくはち プレミアム・エディション [DVD]

ひゃくはち プレミアム・エディション [DVD]

 

 

 

『神さまたちのいた街で』早見和真

読んで良かった。。

 

f:id:sunmontoc:20180225222337j:plain

 

『神さまたちのいた街で』早見和真

父が交通事故に巻き込まれたことをきっかけに、父と母は違う神さまを信じはじめ、ぼくの家族には“当たり前”がなくなった。ぼくは担任の先生に助けを求めたが、どうやら先生にも自分の正義があるらしい。大人たちが信じられなくなったいま、ぼくの「正しい」の基準は、親友の龍之介だけ。妹のミッコを守ることでなんとか心のバランスを取りながら、ぼくは自分の武器を探すことにした。いつか、後悔だらけの大人にならないために―。『ぼくたちの家族』から6年。次の家族のストーリー。あの頃の“痛み”がよみがえる成長の物語。(Amazonより)

 

『イノセント・デイズ』で衝撃をもらった筆者を漁ってみることにした。

ジュブナイル小説としても、宗教をテーマにしたストーリーとしても最高でした。

 

主人公たちも幼く文章も柔らかいのに、冒頭でこれから襲い来るであろう不幸への寒気を感じさせてくれて、また両親を通して文章全体に違和感を感じ、「自分の言葉」とは何かっていうことを疑い始める。

 

新興宗教に対する自分の中の薄気味悪さというか、説明できない悪い固定観念が、文中でうまく表現されていて納得しまくった。父も母も壊れ、窮地に立ち、それぞれが宗教に縋り付いて、元に戻ろうと思えば思うほど泥沼に沈み込み、「家族」が崩れていく。

そんな中でのエルグラーノとマリアとの出会いに、めちゃくちゃ温かみを感じたし、「良かったなー!」と素直に安心できた。その幸運な出会いの中で、エルグラーノが「他者を認められない神さまなんかに価値はない」ってスパッと言い切ってくれることで、どれほど主人公が救われたんだろうと感動した。

 

後半はもはや小学生とは思えない行動・思考をするけど、世間・親に弱くても一振りのカウンンターパンチを見舞わせようとする展開にワクワクした。

宗教に善い悪いの区別があるのではなくて、新興も四大も関係なく、他の宗教(人間)に不寛容になり排斥してしまうことが問題であり、生まれもって与えられた宗教(価値観・考え方)を盲信するんじゃなく、自分の中に疑いの視線を持ち続け、悩んで自分で選択することが大事なんだと、自分自身も多少は持っていたモヤモヤした疑問に対して一つの答えを提示してくれた作品だった。

 

 

神さまたちのいた街で

神さまたちのいた街で

 

 

 

sunmontoc.hatenablog.com

 

 

 

『天久鷹央の推理カルテIV: 悲恋のシンドローム』知念実希人

深み増してく。

 

f:id:sunmontoc:20180225221237j:plain

 

天久鷹央の推理カルテIV: 悲恋のシンドローム知念実希人

天医会総合病院の看護師、相馬若葉から友人の殺害事件について相談をうけた天久鷹央と小鳥遊優。喜び勇んで謎の解明にあたる鷹央だったが、その過程で“事件から手を引く”と宣言する。なぜ、彼女ではこの謎を解けないのか。そして、死の現場から“瞬間移動”した遺体に隠された真実とは―。驚きのどんでん返しと胸を打つクライマックスが待つ、メディカル・ミステリー第4弾。(Amazonより)

 

同じようなエピローグとはわかっていても、毎回ラストがハードルを軽く超えてくる。

今回はメインエピソードの病気が本当に興味深かったし、見た目通りな異性を愛すのか、生物学的な異性を愛すのか、何をもって性別を見なすのかをいろいろ考えさせられた。

作中の「DNAはの人間の本質を示すものじゃない。人間の本質はきっと意思と行動でつくられるもの」ってところが、全ての真理のように感じた。

小鳥の統括診断部での存在意義が更に明確になった回だった。

 

 

 

 

 

sunmontoc.hatenablog.com

sunmontoc.hatenablog.com

sunmontoc.hatenablog.com

 

 

『マイ・ディア・ポリスマン』小路幸也

やはり至極の読みやすさ。

 

f:id:sunmontoc:20180216233108j:plain

 

『マイ・ディア・ポリスマン』小路幸也

奈々川市坂見町は東京にほど近い古い町並みが残る町。元捜査一課の刑事だった宇田巡は、理由あって“東楽観寺前交番”勤務を命じられて戻ってきたばかり。寺の副住職で、幼なじみの大村行成と話していると、セーラー服姿のかわいい女子高生・楢島あおいがおずおずと近づいてきた。マンガ家志望の彼女は警官を主人公にした作品を描くために、巡の写真を撮らせてほしいという。快くOKした巡だったが、彼女が去ったあと、交番前のベンチにさっきまでなかったはずの財布が。誰も近づいていないのに誰が、なぜ、どうやって?疑問に包まれたまま財布の持ち主を捜し始めた巡は、やがて意外な事実を知ることに…。(Amazonより)

 

最近、読み慣れていない作者や、自分としては重めの話を割と多く読んでたから、この軽やかさはめちゃくちゃ楽。

でも、話全てが軽いのではなくて、街の人々の繋がりや、それぞれの影となる部分を入れつつも、全体としては明るく気張らずに読めるという良い塩梅。

そして、作者の得意とする縦横に広がる家族の結びつきも楽しめる。

少し現実離れした特殊な能力も大仰にならずに表現してあって読んでて楽しいし、読み終わってしまってから、良い意味での物足りなさも残してくれる。

やっぱりこの文章の読みやすさは自分史上随一。

「仏様に手を合わせて祈る、というのは宗教というのを通り越して日本人の原風景みたいなものとして根付いている」

「超一流の掏摸は一秒の間には0.1秒が十回もあるって数えられる」

って部分がハッとさせてくれて印象的。

 

 

 

マイ・ディア・ポリスマン

マイ・ディア・ポリスマン