『陽気なギャングの日常と襲撃』伊坂幸太郎

 愉快さしかなかった。

 

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『陽気なギャングの日常と襲撃』伊坂幸太郎

嘘を見抜く名人は刃物男騒動に、演説の達人は「幻の女」探し、精確な体内時計を持つ女は謎の招待券の真意を追う。そして天才スリは殴打される中年男に遭遇―天才強盗四人組が巻き込まれた四つの奇妙な事件。しかも、華麗な銀行襲撃の裏に「社長令嬢誘拐」がなぜか連鎖する。知的で小粋で贅沢な軽快サスペンス!文庫化記念ボーナス短編付き。

 

つながり持たせるために発表時から書き直したらしいけど、それぞれの短編が長編に繋がるってのが面白かった。個人的には慎一の出番が少なかったのは物足りなかったけど。

広げた風呂敷の畳み具合がさすがだし、小西たちを愛すべき者として書いてるのがすごく好感持てた。

 

痛快さ・愉快さしかなくて、めちゃくちゃ楽に読める。小路幸也の『東京バンドワゴン』シリーズと一緒で、ずっと続編が出て欲しい。個人的には、作家が新しい話をどんどん発表するのも嬉しいけど、衝撃が薄れていっても、同じ作品の続編をずっと読めるる方が、登場人物とずっと関わってる気がして楽しい。

 

 

陽気なギャングの日常と襲撃 (祥伝社文庫)

陽気なギャングの日常と襲撃 (祥伝社文庫)

 

 

 

 

 

 

『オー!ファーザー!』伊坂幸太郎

伏線多すぎじゃないか?

 

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『オー!ファーザー!』伊坂幸太郎

一人息子に四人の父親!? 由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに女好き、博学卓識、スポーツ万能。個性溢れる父×4に囲まれて、高校生が遭遇するは、事件、事件、事件――。知事選挙、不登校の野球部員、盗まれた鞄と心中の遺体。多声的な会話、思想、行動が一つの像を結ぶとき、思いもよらぬ物語が、あなたの眼前に姿を現す。伊坂ワールド第一期を締め括る、面白さ400%の長篇小説。(amazonより)

 

設定がまず面白いし、4人の父親の人物像の違いがわかりやすくて、由紀夫との漫才みたいな会話が読んでて楽しくなる。

 

ラストにかけて仕掛けてあった伏線をめっちゃ回収して、すげえ!ってなるんだけど、大容量すぎて消化不良で終わるエピソードもある。(お母さんの出張とか、オレオレ詐欺の件とか)でもそれ差し引いても、満足できるエンターテインメント性。リアルなランナウェイシーンとそれをした理由も良い。

 

信頼しているけどどこか呆れているような態度を取っていた由紀夫が、クイズ番組を見て泣いたシーンにグッときた。

 

p193くらいからの「頭の良さ」についての会話はなるほどってなる。ペーパーテスト的な能力だけでもダメだし、その能力はあっても損ではないって所も。

 

あるかもだけどできれば続編読みたい。鷹のイメージは完全に呂布カルマ。

 

 

オー!ファーザー (新潮文庫)

オー!ファーザー (新潮文庫)

 

 

 

『疾風ガール』誉田哲也

誉田哲也勢いそのままに。

 

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『疾風ガール』誉田哲也

柏木夏美19歳。ロックバンド「ペルソナ・パラノイア」のギタリスト。男の目を釘付けにするルックスと天才的なギターの腕前の持ち主。いよいよメジャーデビューもという矢先、敬愛するボーカルの城戸薫が自殺してしまう。体には不審な傷。しかも、彼の名前は偽名だった。夏美は、薫の真実の貌を探す旅へと走り出す―。ロック&ガーリーな青春小説。(amazonより)

 

誉田哲也の暴力性と双璧を成すと勝手に思っている女子青春モノ。

 

最初は読みやすいけど、結構軽い感じだなーと思ったら、ボーカルの薫が自殺してからどんどん重さ増してった。

苦悩する持たざる者について、持つ者はどう理解するべきなのか、責任はどう取るのか。終盤の方の塔子のマンションでの、薫の葛藤や挫折が楽曲作成の過程?を通して判明していく感じが好き。

 

薫のビジュアル系よりの歌詞はあまり響かなかったけど、最後の夏美が作った曲の歌詞はすごく良かった。

 

ラストのリハ前に夏美が宮原に話す「音楽ってそういうもんでしょ。聴いたってお腹は一杯にならないし、寒さだってしのげない。でも、気持ちをさらけ出したり、汲み取ったりすることはできる。」って言葉が、震災後に好きなバンドたちが言ってた言葉と同じで、震災より昔の話だけど、ロックの姿勢は昔から変わらないのかなと。

 

こういうガールミーツワールド的な話を読むと、若い主人公より振り回される三十路以降の大人に共感するようになってきたのは、良くも悪くも年取ったなと感じる。

 

他のシリーズもあるっぽいから読んでみよう。

 

 

疾風ガール (光文社文庫)

疾風ガール (光文社文庫)

 

 

『プラージュ』誉田哲也

大好き誉田哲也の大好きシェアハウスものと知って。

 

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『プラージュ』誉田哲也

仕事も恋愛も上手くいかない冴えないサラリーマンの貴生。気晴らしに出掛けた店で、勧められるままに覚醒剤を使用し、逮捕される。仕事も友達も住む場所も一瞬にして失った貴生が見つけたのは、「家賃5万円、掃除交代制、仕切りはカーテンのみ、ただし美味しい食事付き」のシェアハウスだった。だが、住人達はなんだか訳ありばかりのようで…。(amazonより)

 

作者の魅力である暴力性や過激さ、住人同士の裏切りを期待して読むと、若干物足りなさが残るけど、そこではなくて、罪や過ちを犯した後にどうやって生きていくか、社会に受け入れてもらえるかという部分が面白かった。

 

主人公は物凄く重い罪があるわけではなく、前科の内容もそこそこ、能力や人柄も平凡、火事場の馬鹿力的な魅力も特にない、という小物感。でもそこが、服役後の更生・生き方という必ずしも劇的なことがあるわけでない、ジワジワ真綿で首を締められるような生活をより際立たせていると思う。通彦のフラッシュバック具合はさすがにやりすぎじゃ?と思ったけども。

 

罪を犯した人の立場、疑われた人の立場、人として備えた方が良いとされる資質・感情を身につけていく立場、登場人物たちの社会との様々な「狭間・境界=海辺」がうまく表現されている。

 

他の住人はあまりイメージないけど星野源石田ゆり子はピッタリだと思う。ドラマ観てみよう。

 

 

プラージュ (幻冬舎文庫)

プラージュ (幻冬舎文庫)

 

 

 

『テミスの剣』中山七里

最初とっつきにくそうだなと思ったけど読んで良かった。

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『テミスの剣』中山七里

昭和五十九年、台風の夜。埼玉県浦和市で不動産会社経営の夫婦が殺された。浦和署の若手刑事・渡瀬は、ベテラン刑事の鳴海とコンビを組み、楠木青年への苛烈な聴取の結果、犯行の自白を得るが、楠木は、裁判で供述を一転。しかし、死刑が確定し、楠木は獄中で自殺してしまう。事件から五年後の平成元年の冬。管内で発生した窃盗事件をきっかけに、渡瀬は、昭和五十九年の強盗殺人の真犯人が他にいる可能性に気づく。渡瀬は、警察内部の激しい妨害と戦いながら、過去の事件を洗い直していくが…。中山ファンにはおなじみの渡瀬警部が「刑事の鬼」になるまでの前日譚。『どんでん返しの帝王』の異名をとる中山七里が、満を持して「司法制度」と「冤罪」という、大きなテーマに挑む。(amazonより)

 

中山七里はここ1、2年でかなり読みまくってて、『岬洋介シリーズ』とかめっちゃ好きなんだけど、最近読んでたのが面白いけどあんまり濃い目じゃない話が多かったから久々にズドンとキた。

 

作者の特徴である「裁判」と「捜査」が良いバランスで混ざっていて、最初は昭和が舞台だから読みにくそうかもと思ったけど、昔ながらの取り調べの様子が胸糞悪すぎてむしろ爽快感(実際は今もそうなのかもしれないけど)。

 

他の作品でも良く出てくる「市民感覚ではなく市民感情」っていう欠陥?についてはもっと色々読んで知りたいなと。

 

古手川と渡瀬が出てくる

 

sunmontoc.hatenablog.com

 

を読んだばかりだったから、いろんな作品に出てくる渡瀬にもこんな過去や挫折があったのかと、実在する人物の歴史を知れたような気分になった。

 

相変わらずさっと読み流すようなフレーズが後で効いてくる感じが最高でした。

 

 

テミスの剣 (文春文庫)

テミスの剣 (文春文庫)

 

 

 

 

 

 

 

ヒポクラテスの憂鬱

お盆はプリズンブレイクと飲み会で読めなかった。

 

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ヒポクラテスの憂鬱』中山七里

“コレクター(修正者)”と名乗る人物から、埼玉県警のホームページに犯行声明ともとれる謎の書き込みがあった。直後、アイドルが転落死、事故として処理されかけたとき、再び死因に疑問を呈するコレクターの書き込みが。関係者しか知りえない情報が含まれていたことから、捜査一課の刑事・古手川は浦和医大法医学教室に協力を依頼。偏屈だが世界的権威でもある老教授・光崎藤次郎と新米助教の栂野真琴は、司法解剖の末、驚愕の真実を発見する。その後もコレクターの示唆どおり、病死や自殺の中から犯罪死が発見され、県警と法医学教室は大混乱。やがて司法解剖制度自体が揺さぶられ始めるが…。(amazonより)

 

中山七里の読んだことないシリーズで前作読んでないけどすんなり入れた。

この人の医療ミステリーを何作も読んでいるけど、やっぱり専門性というか調査の濃さがすごい。どうやって取材してるんだろ。監修とか文献だけでこのレベルまで到達できるものなのか。

 

ストーリー自体はわかりやすくて章が進むにつれて明るみになっていく感じで、真犯人も割とすぐわかる。ただし、他の作品に比べて「法医学」というテーマに重きが置かれていて、人物描写は他のより薄いかな?という気も。古手川とか光崎についてもっと知りたかった(前作読んでないからかもだけど。。)

 

犯罪に関することでも、予算次第で真相を追求する機会を作ることができないってのが印象的だった。難しい問題だとはもちろん思うけど。

 

それにしてもラストはあまりにあっさりしすぎて後日談が欲しくなる。

 

 

ヒポクラテスの誓い (祥伝社文庫)

ヒポクラテスの誓い (祥伝社文庫)

 

 

 

 

 

太陽の棘

見た目以上に読み易かった。

 

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『太陽の棘』原田マハ

 

結婚を直前に控え、太平洋戦争終結直後の沖縄へ軍医として派遣された若き医師エドワード(エド)・ウィルソン。幼いころから美術を愛し、自らも絵筆をとる、心優しき男だ。心ならずも軍医として厳しい研修ののち沖縄に派遣されたエドは、父にねだって送ってもらったポンティアックを操って、同僚の友人たちと荒廃した沖縄の地をドライブすることだけが楽しみとなっていた。
だがある日、彼らは美術の桃源郷とでも言うべき、不思議な場所へと行き着く。そこで出会ったのは、目を輝かせた画家たち。セザンヌや、ゴーギャンのごとき、誇り高い芸術家たちであった。
その出会いは、エドと画家たちの運命を大きく変えていく――。(amazonより)

 

「絵画」と「沖縄」っていう原田マハ要素満載なんだけど、「絵画」の学術的というか専門性のある描写はいつもより少ないし、「沖縄」の美しさとかポジティブな要素ばかりというわけでもないし、今までとは違うバランスかと。

 

「戦争はまだ終わってないんじゃないかと僕は思うよ」(p42)

戦後も沖縄では戦争の苦しみは続いていて、「ヤマト」と「アメリカ」、どちらが憎むべき対象なのかなとか、わかってるようで表面しか理解していないことにハッと気づかされた。

 

「自らの意思で描き続ける芸術家であること」(p119)

いくら日々の生活のために万人受け(ある意味カタキ受け)が良いものを描いて、いくら貧しくても逆境に立たされ続けても、ど真ん中の芯だけは貫き通すという熱量というか意地が静かに伝わってきた。

 

元キュレーターということもあり、原田マハが書く物語は「芸術家(求道者)の支持者・サポーターの視点」なんだと再認識した。

この作品を書くにあたっていろんな葛藤があったこともインタビューで話してました。

books.bunshun.jp

 

実在した玉那覇清吉についても知りたくなったし、もっと長く読みたいと思った。

相変わらず装丁やカバーがイイ。

 

 

太陽の棘 (文春文庫)

太陽の棘 (文春文庫)